日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

梅毒-第1期  (2023/08/29 更新)
第1期梅毒の治療


臨床状況

  • 梅毒性下疳(痛みのない潰瘍)の存在,しばしば局所的なリンパ節腫脹を伴う(潜伏期間10~90日).
  • 潰瘍は女性やMSMでは見つけにくい.

病原体/診断

病原体
  • T. pallidum
診断
  • 初回の血清学的検査は陰性の場合がある.診断結果を除外するには,1,2,6週後の血清学的検査が必要である.
  • 暗視野,NAAT,または組織病理学検査は,病原体を直接的に確認するため確定診断となるが,臨床現場では利用できないことが多い.
  • トレポネーマ検査(梅毒性下疳後 5~15日)は,非トレポネーマ検査(10~15日)よりも早い時期に陽性となり,通常は陽性のままである.
  • 非トレポネーマ検査(VDRL,RPR,TRUST)はおおよその疾患活性を追跡するため,経過観察に用いられている(治療後に力価が4倍低下).
  • 臨床的に疑わしい場合は,経験的治療が推奨される.

第一選択

第二選択

  • DOXY 100mg経口1日2回・14日,またはTC 500mg経口1日4回・14日
  • CTRX 1g筋注††または静注24時間ごと・10~14日.しかし,至適用量および投与期間は明確には定義されていない.
  • 2020年ヨーロッパ梅毒ガイドラインでは,ベンザチンが入手できない場合,プロカインペニシリン60万単位を1日1回筋注・10~14日間が推奨されている.
  • フォローアップが必要.
  • DBECPCGが入手できない国もあり,どこでも薬剤不足が深刻化している.
  • 日本でのHIV感染患者における経験に基づき,(高用量AMPC 3g/日+プロベネシド 750mg/日)経口1日3回に分割・2週(早期梅毒)または4週(晩期梅毒または罹患期間が不明の場合)が考慮される(有効95.5%,286例中273例:Clin Infect Dis 61: 177, 2015).
  • その他の第二選択として,AMPC 1.5g/日は,ABPC+プロベネシド併用と有効性は同様(94.9%)だが,忍容性はより高い:Sex Transm Infect 98: 173, 2022

(††:米国では処方される)

抗微生物薬適正使用

  • 一部の状況ではAZM 経口2g1回(早期梅毒でのベンジルペニシリンベンザチン240万単位1回に相当:J Infect Dis 201: 1729, 2010)が有効であったとの報告がある.

コメント

  • すべての梅毒患者でHIV検査を,すべてのHIV感染者で梅毒の検査を行うこと.
  • 抗体価が下がらなければ髄液検査.
  • 髄液が陽性なら神経梅毒として治療.
  • 陰性なら,DBECPCG240万単位筋注週1回で3週間再治療.注:Benzathine procaine penicillinは用いてはならない.
  • 初期梅毒患者の15~20%で抗体価が陰性化しない(試験管液体培地希釈法で変化がないか1管のみの反応)ことがある(Lancet 389: 1550, 2017).力価が低下しない患者における脳脊髄液検査を支持するデータは弱く,最新の専門家パネルでも現在脳脊髄液検査を推奨していない(2021年CDC性感染症ガイドライン:MMWR Recomm Rep 70(RR-4): 1, 2021). その代わり,年に1回の非トレポネーマ検査(理想的には同種の検査)と神経学的検査を行う.
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2023/08/28