false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
梅毒-HIV感染
(
2023/08/22 更新
)
HIV/AIDS患者の梅毒治療に関する特記事項
臨床状況
HIVと梅毒に同時感染した患者の評価と治療は,HIV感染のない患者と同様である:
Clin Infect Dis 61(Suppl 8): S818, 2015
.
2021年のCDC性感染症のガイドライン(
MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021
)または2020年ヨーロッパガイドライン(
J Eur Acad Dermatol Venereol, 35: 574, 2021
)を参照.
CDCガイドラインのエビデンスについての概説:
Clin Infect Dis 74: S127, 2022
.
HIV陽性患者で晩期梅毒なら全例で腰椎穿刺を行うこと.血清RPR≧1:32という基準は現在では推奨されない.
ただし,視力と聴力の変化を注意深く観察することで,迅速な腰椎穿刺による
神経梅毒
の検出が可能となる.
病原体
T. pallidum
第一選択
HIV陰性患者と同様に治療し,注意深く経過観察.関連項目および
概説
参照.
ペニシリンが治療の中心.
第1期または第2期梅毒:
DBECPCG
240万単位筋注1回
HIV感染患者における早期神経梅毒は,CD4数にかかわらず10~14日治療する:
MMWR 56: 625, 2007
晩期潜伏性梅毒(>1年または潜伏期間不確定)は長期の治療を必要とする.
第二選択
第1期および第2期梅毒:
DOXY
100mg経口1日2回・14日(最初の第二選択)
CTRX
1~2g筋注/静注1日1回・10~14日(第二の第二選択)
2020年ヨーロッパの梅毒に関するガイドライン(CDCガイドラインではない)では,
DBECPCG
が使えない場合には,プロカインペニシリンを推奨している.
DBECPCG
が入手できない国もあり,どこでも薬剤不足が深刻化している.
日本でのHIV感染患者における経験に基づき,(高用量
AMPC
3g/日+プロベネシド 750mg/日)経口1日3回に分割・2週(早期梅毒)または4週(晩期梅毒または罹患期間が不明の場合)が考慮される(有効95.5%,286例中273例:
Clin Infect Dis 61: 177, 2015
).
その他の第二選択として,
AMPC
1.5g/日は,
ABPC
+プロベネシド併用と有効性は同様(94.9%)だが,忍容性は高い:
Sex Transm Infect 98: 173, 2022
.
コメント
参考文献:
Clin Infect Dis 44(Suppl 3): S130, 2007
;
Lancet 389: 1550, 2017
;
N Engl J Med 382: 845, 2020
.
HIV感染患者は治療後にゆっくりと力価が低下することがあり,時として高力価あるいは血清擬陰性が長引くという報告がある.
12~24カ月以内に非トレポネーマ力価が1/4に下がらない場合は,脳脊髄液の検査と再治療を考慮する.脳脊髄液が正常の場合,ベンジルペニシリンベンザチン240万単位筋注†週1回・3週で再治療してもよい.
梅毒に罹患しているHIV感染患者に対しては,注意深い経過観察が重要である.
(†:日本にない剤形)
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing
↑ page top
2023/08/21