日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

梅毒-HIV感染  (2023/08/22 更新)
HIV/AIDS患者の梅毒治療に関する特記事項


臨床状況

  • HIV陽性患者で晩期梅毒なら全例で腰椎穿刺を行うこと.血清RPR≧1:32という基準は現在では推奨されない.
  • ただし,視力と聴力の変化を注意深く観察することで,迅速な腰椎穿刺による神経梅毒の検出が可能となる.

病原体

  • T. pallidum

第一選択

  • HIV陰性患者と同様に治療し,注意深く経過観察.関連項目および概説参照.
  • ペニシリンが治療の中心.
  • 第1期または第2期梅毒:DBECPCG 240万単位筋注1回
  • HIV感染患者における早期神経梅毒は,CD4数にかかわらず10~14日治療する:MMWR 56: 625, 2007
  • 晩期潜伏性梅毒(>1年または潜伏期間不確定)は長期の治療を必要とする.

第二選択

  • 第1期および第2期梅毒:
  • DOXY 100mg経口1日2回・14日(最初の第二選択)
  • CTRX 1~2g筋注/静注1日1回・10~14日(第二の第二選択)
  • 2020年ヨーロッパの梅毒に関するガイドライン(CDCガイドラインではない)では,DBECPCGが使えない場合には,プロカインペニシリンを推奨している.
  • DBECPCGが入手できない国もあり,どこでも薬剤不足が深刻化している.
  • 日本でのHIV感染患者における経験に基づき,(高用量AMPC 3g/日+プロベネシド 750mg/日)経口1日3回に分割・2週(早期梅毒)または4週(晩期梅毒または罹患期間が不明の場合)が考慮される(有効95.5%,286例中273例:Clin Infect Dis 61: 177, 2015).

コメント

  • HIV感染患者は治療後にゆっくりと力価が低下することがあり,時として高力価あるいは血清擬陰性が長引くという報告がある.
  • 12~24カ月以内に非トレポネーマ力価が1/4に下がらない場合は,脳脊髄液の検査と再治療を考慮する.脳脊髄液が正常の場合,ベンジルペニシリンベンザチン240万単位筋注†週1回・3週で再治療してもよい.
  • 梅毒に罹患しているHIV感染患者に対しては,注意深い経過観察が重要である.

(†:日本にない剤形)

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2023/08/21