false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
外来患者での注射抗菌薬治療
(
2025/05/27 更新
)
はじめに
外来患者での注射抗菌薬治療(OPAT)とは,入院を挟むことなく異なる日に2回以上の非経口抗菌薬治療を行うことである.
一般に,3つのOPAT投与のモデルがある:在宅で行う,投薬センターで行う,経験のある介護施設で行う.
注入用器具の選択は,薬剤の安定性,投与する処方,コスト,患者の希望に基づく
安定性に影響する因子としては,最終的な薬物濃度,希釈,温度,pH,注射器のタイプなどがある.
安定性に関連する温度は5℃(冷蔵),25℃(室温)37℃(体温).
エラストマーポンプは身体の近くに設置されるため32~37℃に達する可能性がある.
IDSAガイドライン:
Clin Infect Dis 68: e1, 2019
.
OPATでのカルバペネム使用に関する総説,安定性データを含む:
J Infecct 89: 106299, 2024
(アクセス自由)
薬物投与方法
薬剤投与方法(
Open Forum Infect Dis 9: ofac525, 2022
)
IV push法
迅速で便利
手先の器用さが必要
プログラムされた携帯型ポンプ
携帯型持続的輸液ポンプ(CADD)とも呼ばれる
間欠的,持続的,斬減投与も可能
エラストマー器具(注入バルーン)
1回の使い捨て投与法
電力にも重力によらない注入
さまざまなサイズ(50mL~500mL)があり,流量は5mL/時から250mL/時まで幅がある
器具によって薬剤の安定性が異なる
重力による注入
ポンプではなくローラークランプで注入をコントロールする
安価
患者にとって習得が困難なことがある
固定型注入ポンプ
重く,運びにくい
一部の治療施設では適切
安定性データ
プラスチック容器とエラストマー器具
詳細についての情報源:
Ther Adv Infect Dis 10: 20499361231191877, 2023
(アクセス自由)
検討されている薬剤:
ABPC
,
ABPC/SBT
,
CEZ
,
CFPM
,
CAZ
,
CAZ/Avibactam
,
CTLZ/TAZ
,
MEPM
,
Nafcillin
,
Oxacillin
,
PIPC/TAZ
,
VCM
プラスチック容器:エチレン酢酸ビニルまたはポリ塩化ビニル
エラストマー器具には以下のようなものがある:AccuFlo,Accufuser,AutoDose,Easypump II,FOLfusor,Homepump Eclipse C-シリーズ, Intermate,MedFlo,MEDI-FLO,ReadMED,SMARTeZ.
データは複数の希釈液(生食,5%ブドウ糖液,注射用滅菌水)および5℃,25℃,≧30℃(可能なら)での薬剤濃度について得られている.
CFDC
製品ラベル表示:再構成された薬剤は100mL5%ブドウ糖液または生食で,室温で6時間安定.
エラストマー器具:12g/Lは32~37℃で24時間安定(
Pharmaceutics 15: 2705, 2023
).
エラストマー器具での
Ceftaroline
生食または5%ブドウ糖液で6mg/mLは,4℃で144時間,25℃で24時間,30℃で12時間安定.35℃では薬剤は生食で12時間,5%ブドウ糖液で6時間安定.
文献:
Eur J Hosp Pharm 25: e115, 2018
.
臨床経験
CFDC
31歳男性,NDM産生
K. pneumoniae
による乳様突起炎で,CFDC 6mg/日62日治療をエラストマー器具を用いた24時間持続静注で行った.TDMにより積極的にPD/PK指標を第17,45日に確認.顕著な臨床的改善を示し(手術が必要となる事態は避けられた),副作用の報告はなかった.注:器具での濃度は25g/Lであった(
JAC Antimicrob Resist 7: dlaf066, 2025
).
CTLZ/TAZ
レトロスペクティヴ症例シリーズ,
P. aeruginosa
感染患者7例がCTLZ/TAZ持続静注治療(4.5gまたは9g/240mL生食を24時間かけて注入:注入速度10mL/時)を受けた.薬剤は室温で24時間安定であるので,患者は病院外来に来院して1日ごとに薬剤カセットを交換することができた.7例中6例で症状が解消し,3例で微生物学的解消を評価し全員が解消となっていた(
Open Forum Infect Dis 7: ofaa014,2020
).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2025 Life Science Publishing
↑ page top
2025/05/27