日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肝膿瘍-経験的治療  (2025/11/11 更新)


臨床状況

  • 発熱,右上腹部の圧痛.
  • 腹部超音波またはCTで,1つまたは多数の膿瘍がみられる.
  • 化膿性膿瘍の50%に,消化管感染源または基礎疾患としての胆管疾患が認められる.
  • 肝膿瘍は,高度ムコイド型表現型をもつ強毒性のKlebsiella pneumoniae(血清型K1およびK2,特にアジアにおいて)感染の兆候である可能性がある:Lancet Infect Dis 12: 881, 2012

診断/病原体

診断
  • Entamoeba histolytica流行地域出身者で広範な肝病巣を有する患者,その他の疫学的リスク因子(例:旅行,男性同性愛者,ホームレス,衛生状態の悪さ)を有する人,または膿瘍液の細菌培養が陰性の者は,血清を採取して検査施設に送り,抗アメーバ抗体の血清学的検査または抗原検査を行うべきである(Clin Infect Dis 2024年3月5日N Engl J Med 348: 1565, 2003).肝膿瘍液の抗原検査は可能である.血漿または膿瘍液のPCR検査も,優れた感度と特異度を有する.
  • 臨床的根拠または微生物学的検査(実施した場合)からアメーバ感染の可能性が低いと思われる場合は,膿瘍液を吸引し,好気性細菌および嫌気性細菌の培養を行うべきである
病原体
  • Echinococcus

第一選択

  • 経験的治療:
  • MNZ 30~40mg/kg/日静注3回に分割8時間ごと,または500mg経口6~8時間ごと)+(CTRX 1~2g静注24時間ごと,またはPIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと)
  • MNZ 30~40mg/kg/日静注3回に分割8時間ごと,または500mg経口6~8時間ごと)+(CPFX 400mg静注12時間ごとまたは750mg経口,またはLVFX 750mg経口/静注24時間ごと)
  • MNZには次の2つの有用性がある.嫌気性菌のカバー(CTRX,CPFX,LVFXではカバーできない),E. histolyticaの可能性があるが精密検査と微生物学的検査および血清学的検査の結果が出ていない場合
  • 細菌感染が確認された場合は,感染源制御を確立するために初期治療として経皮ドレナージが推奨される.

第二選択

  • 経験的治療:(MNZ 30~40mg/kg/日静注3回に分割8時間ごと,または500mg経口6~8時間ごと)+Ertapenem 1g 24時間ごと
  • Ertapenemは嫌気性菌に対して強い活性をもつ.E. histolyticaの可能性がある場合には,それをカバーするためにMNZを処方に加える
  • 経皮ドレナージ.上記と同様.

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 治療期間は,個々の病原体および,患者が免疫機能正常か不全かによって異なる.大規模対照試験はないが,感染源のコントロールがなされて生体マーカー(たとえば,プロカルシトニン,CRP,白血球および白血球分画)が安定するまでは,臨床的反応に基づいて化膿性膿瘍として治療するのが理にかなっている.この感染症の治療については,アメーバ症,Entamoeba histolyticaを参照.
抗微生物薬適正使用
  • 嫌気性菌または混合感染に対してPIPC/TAZ,Ertapenem(または他のカルバペネム,使用するならMEPMまたはIPM/CS)は単剤で十分に活性であり,MNZは中止すべきである.
  • 培養結果に基づいて個々の患者に応じた処方を用いるが,化膿性肝膿瘍は多菌性のことが多いため,グラム陰性腸内菌と嫌気性菌の両方をカバーする処方を考慮すること.
  • 患者が安定すれば,経口ステップダウンが理にかなっている.

コメント

  • 細菌性の場合:CTガイド下の経皮的(好ましい)または外科的ドレナージが実施可能であれば,必ず行う.
  • Yersinia enterocolitica肝膿瘍を伴うヘモクロマトーシス:上にあげた処方はYersinia感染にも有効.
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2025/11/10