false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
肺炎-市中感染,ICU
(
2019/9/10 更新
)
臨床状況
ICU入院が必要となる重症の市中肺炎(CAP)の経験的治療(重症肺炎の定義についてはコメント参照).
推奨される一連の診断方法
痰を喀出できる患者はすべて,理想的には抗菌薬投与前に,喀痰の培養および感受性試験を行う
尿中抗原:
S. pneumoniae
および
Legionella pneumophila
呼吸器ウイルス,
Mycoplasma
,
Chlamydia
には鼻咽頭スワブのmultiplex PCR
S. aureus
には鼻腔スワブの核酸増幅検査(NAAT)
可能ならば,
S. pneumoniae
のための鼻咽頭スワブ
血清プロカルシトニン濃度
血液培養
病原体
もっとも多い
S. pneumoniae
Legionella
属
H. influenzae
Klebsiella pneumoniae
,他の腸内細菌(~5%)
ウイルス(たとえば重症インフルエンザ)
S. aureus
(~2.5%).
CAP患者2259例を対象とした研究では,
S. aureus
(MSSA+MRSA)が病因だった例はわずか1.6%であり,MRSAによるものは0.7%であった(
Clin Infect Dis, 63: 300, 2016
).
P. aeruginosa
(まれ)
第一選択
CTRX
1~2g静注24時間ごと+
AZM
500mg 24時間ごと,または
LVFX
750mg静注24時間ごと,または
MFLX
400mg静注†24時間ごと
市中MRSA感染が疑われる場合(例,インフルエンザ後,静注薬物使用者,グラム染色で集塊をなすグラム陽性球菌):微生物学的に確定されるまでは,上記の処方に,
VCM
15~20mg/kg静注8~12時間ごと,または
LZD
600mg静注12時間ごとを追加.
P. aeruginosa
を考慮すべき場合(例,慢性または構造的な肺疾患,コロニー形成が事前に判明している):
(
CFPM
2g 12時間ごと,または
PIPC/TAZ
3.375g 4時間ごと,または
CAZ
2g 8時間ごと,または
MEPM
1g 8時間ごと)+(
LVFX
750mg 24時間ごと,または
CPFX
400mg静注8時間ごと),または
(
CFPM
2g 12時間ごと,または
PIPC/TAZ
3.375g 4時間ごと,または
CAZ
2g 8時間ごと,または
MEPM
1g 8時間ごと)+
TOB
5mg/kg 24時間ごと+
AZM
500mg 24時間ごと
(†:日本にない剤形)
第二選択
第一選択参照
抗微生物薬適正使用
他の診断検査に加えて,
S. aureus
の核酸増幅検査(NAAT)のための鼻腔スワブを考慮する.
鼻腔PCRでMRSA陰性であれば陰性的中率は99.2%という研究結果がある(
Antimicrob Agents Chemother 58: 859, 2014
,2つの確認試験:
Am J Crit Care 24: 8, 2015
;
Antimicrob Agents Chemother 61: e02432-16, 2017
).したがって,鼻腔PCR陰性(または喀痰培養陰性)ならば,VCMやLZDを中止することからde-escalationを始めてもよい.
併用治療からのde-escalationは微生物学検査結果に基づく.
Pseudomonas
に対する2剤併用は,少なくとも1剤の活性を確保するために経験的に推奨されている.感受性のある分離株に対して併用治療は単剤治療を上回る有用性はないが,アミノグリコシド系薬の単剤治療は推奨されない.
患者が臨床的に安定,改善し,経口薬が可能となったら経口治療に切りかえる.
市中肺炎の
治療期間
は臨床反応に応じて決定する:48~72時間無熱+市中肺炎に関連した不安定状態からの改善
最低5日の治療が推奨される.
市中肺炎では7~10日が典型的であり,合併症を伴えば延長する.
ある種の病原体(例,
Legionella
属)や肺以外の合併症(例,心内膜炎,髄膜炎,
Staphylococcus
菌血症)がある場合には,より長期の治療が推奨される.
コメント
インフルエンザAまたはBの同時感染の場合は,
オセルタミビル
75mg経口1日2回・5日を追加.
中等または重症の市中肺炎の入院患者において,βラクタム/マクロライド併用はβラクタム系単独投与(したがってフルオロキノロン単独投与の患者は含まれていない)に比較してアウトカムを改善したが,軽症患者では改善はみられなかった(
Thorax 68: 493, 2013
).
患者が臨床的に安定,改善し,経口薬が可能となったら経口治療に切りかえる.
重症市中肺炎の診断基準(大基準のいずれか,または小基準を3項目以上満たせば,ICU入院あるいは高レベルのモニターができる病室が必要になる)
小基準:
呼吸数≧30/分
PaO
2
/FiO
2
≦250
複数の葉にわたる浸潤影
意識障害/見当識障害
BUN≧20mg/dL
白血球数≦4000/mm
3
血小板減少症(血小板数 10万/mm
3
)
中心体温<36℃
積極的な急速輸液を必要とする血圧低下
大基準:
侵襲的な人工呼吸器
血管作動薬が必要となる敗血症性ショック
IDSA治療ガイドライン:
Clin Infect Dis 44(Suppl 2): S27, 2007
重症度スコアの有用性:
Clin Infect Dis 48: 377, 2009
;コメントは
Clin Infect Dis 48: 386, 2009
.
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing
↑ page top
2019/09/10