日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎-Acinetobacter  (2024/04/16 更新)
特異的治療,Acinetobacter 肺炎


臨床状況

  • Acinetobacter属による人工呼吸器関連肺炎(VAP).
  • 以前に広域スペクトラムの抗菌薬による治療を受けていた患者では,カルバペネム耐性または多剤耐性を疑うこと.

病原体

  • Acinetobacter calcoaceticus-Acinetobacter baumannii complexは,いくつかの種を含むが,それぞれの種を同定することは難しい.
  • 5種のAcinetobacter属(A. baumanniiA. pittiiA. nosocomialisA. seiferttiiA. dijkshoorniae)がヒトの病気に関連している(Future Sci OA 5: FSO3952019, 2019
  • Acinetobacter baumanniiは,ヒトでの感染の約80%の原因となる

第一選択

臨床検査でA. baumannii-calcoaceticus complexが検出されたが,感受性結果が得られるまでの経験的治療
  • 施設の多剤耐性率<10~15%で,重症でない場合
  • CFPM 2g8時間ごと
  • MEPM 2g3時間以上かけて静注8時間ごと
  • ABPC/SBT (ABPC 6g/SBT 3g)4時間以上かけて静注8時間ごと(コメント参照)
  • 施設のカルバペネム耐性率>10~15%および/または重症の場合
  • ABPC/SBT 6g/3g4時間以上かけて静注8時間ごと+MEPM 2g3時間以上かけて静注8時間ごと+PL-B 2.5mg/kg2時間以上かけて静注†,その後1.5mg/kg1時間以上かけて静注12時間ごと
検査の結果,複数の薬剤への感受性が明らかになった場合
  • in vitroで活性のある薬剤による単剤治療,CFPMMEPMABPC/SBT,または
  • IPM/CS 500mg静注6時間ごと
検査の結果,in vitroですべてのカルバペネム系薬に対する耐性が報告された場合コメント参照
  • 感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 感性株
  • CPFX 400mg静注8時間ごと,または
  • LVFX 750mg静注24時間ごと,または
  • カルバペネム耐性株
  • Cefiderocol 2g3時間以上かけて静注8時間ごと+MINO 200mg静注/経口12時間ごと,またはTGC 200mg静注1回・その後100mg静注12時間ごと,または
  • ABPC/SBT(ABPC 6g/SBT 3g)4時間以上かけて静注8時間ごと+MEPM 2g3時間以上かけて静注8時間ごと+PL-B 2.5mg/kg2時間以上かけて静注†・その後1.5mg/kg1時間以上かけて静注†12時間ごと

(†:日本にない剤形)

抗微生物薬適正使用

  • カルバペネム系薬:分離株はIPM/CSに耐性でMEPMに感受性のことがあり,その逆もありうる.
  • 治療期間は不明,臨床反応に従う.

コメント

  • 他の薬剤の使用
  • 人工呼吸器関連肺炎(VAP)に対する吸入抗菌薬による補助治療:
  • カルバペネマーゼ産生菌による院内肺炎,敗血症,複雑性尿路疾患,菌血症の患者を対象に,至適治療(Best Available Therapy:BAT)とCefiderocolを比較したランダム化オープンラベル試験(Lancet Infect Dis 21: 226, 2021)では,28日の全原因死亡率は件数ではCefiderocol群の方が高かった[BAT 9/49(18%)vs Cefiderocol 25/101(25%),肺炎のサブグループでは4/22(18%)vs 14/45(31%).どちらも統計的有意差はない].
  • 二重盲検ランダム化試験(Lancet Infect Dis 21: 213, 2021)では,グラム陰性菌による院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎・医療関連肺炎に対し,CefiderocolはMEPMに対する非劣性を示した.患者16例がMEPM MIC>64μg/mLのAcinetobacter属によるものであり,14日全原因死亡率はCefiderocol群で0%(0/5),MEPM群で46%(5/11)であった.
  • DRPMはいかなるタイプの肺炎に対しても承認されておらず,500mg8時間ごとを超える用量も承認されていない.
  • TGCは,菌血症患者では血清中濃度が治療域に達しないこと,他の薬剤と比べ全原因死亡率のリスクが上昇することから第一選択薬ではない(Clin Infect Dis 54: 1699, 2012).
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2024/04/15