日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

C型肝炎-治療  (2024/06/11 更新)
HCV治療


治療処方と反応

治療の適応
  • 急性および慢性C型肝炎(HCV)のすべての患者に治療が適応となる.線維化の進行した患者(F3/F4)およびHCVによる合併症が背景にある患者では,早急に治療を開始する.
  • 治療薬の種類と期間は遺伝子型および線維化の段階,先行するDAA(Direct Acting Agents)治療に基づいて決定される.DAA(Direct Acting Agents)による全処方は望ましい選択肢である.NS5A DAAが効きにくい場合のみ,リバビリンを用いる.
  • ペグインターフェロンは現在では推奨される処方ではない
治療反応の定義
  • 治療終了の反応(ETR:End of Treatment Response):治療終了時にウイルスが検出されない.
  • 再燃:治療終了時(ETR)ではウイルスは検出されなかったが,治療中止後12週以内にリバウンドしウイルスが検出される.
  • 持続的ウイルス陰性化(SVR:Sustained Virologic Response):治癒!治療終了時も,治療中止後12週を超えてもウイルスが検出されない.
HCV治療処方
  • 生検はHCV感染の病期診断のゴールドスタンダードであり,場合によってはHCV治療開始の最適時期を定める助けになる.生検が行えない場合には,線維化や肝硬変の進行の可能性を相対的に評価する非侵襲的検査が行われることが多い.フィブロスキャン(肝硬度測定法)は米国および世界の多くの国々で,肝硬変評価の方法として承認されている.肝硬度測定値>10kPaは重症の線維化(F3またはF4)と関連する.
  • 耐性検査:一部のDAA(たとえば,プロテアーゼ阻害薬)の感受性低下に関連する多重変異を検出するための,genotype別耐性検査が使用可能である.しかし,耐性検査が推奨されるのは,先行するNS5Aまたはプロテアーゼ阻害薬を含む処方が無効だった患者のみである.
  • 非代償性肝硬変患者はHCV治療中に急激に臨床的に悪化するリスクがあるため,必ず肝疾患専門医が治療を行う.
  • すべてのDAAに関する警告(Black Box Warning):HCVとB型肝炎(HBV)の重複感染がありHBV抑制治療を受けていない患者では,DAAによる治療中または治療後にHBVが再燃し,しばしば劇症となるとの報告がある.FDA薬剤安全性情報,2016年10月を参照.HBs抗原陽性だがHBV抑制治療を受けていないHCV/HBV重複感染患者では,HCVに対するDAA治療中およびその直後にHBV DNAレベルをモニターすることが推奨され,HBVの治療基準を満たしていれば,抗ウイルス薬によるHBV治療を行う必要がある.B型肝炎-治療を参照.
初期治療の薬剤
  • 接尾辞について:
  • "_previr"=プロテアーゼ(NS3-4a)阻害薬
  • "_asvir"=NS5a阻害薬
  • "_buvir"=ヌクレオシド/非ヌクレオシド(NS5b)阻害薬
薬剤(略語)
商品名
剤形/用量
Daclatasvir(DCV)
Daklinza
60mg経口1日1回.注:強力なCYP3A阻害薬との併用では30mg/日に減量;軽度~中等度のCYP3A誘導薬との併用では90mg/日に増量;強力なCYP3A誘導薬との併用は禁忌.
Elbasvir+Grazoprevir
Zepatier
固定用量合剤†(エルバスビル50mg+グラゾプレビル100mg)1錠経口1日1回
グレカプレビル+ピブレンタスビル
マヴィレット
固定用量合剤(グレカプレビル100mg+ピブレンタスビル40mg)3錠1日1回食事とともに
Paritaprevir/リトナビル/Ombitasvir(PrO)
Technivie
固定用量合剤(Paritaprevir 150mg+リトナビル100mg+Ombitasvir 25mg)1錠1日1回
Paritaprevir/リトナビル /Ombitasvir/Dasabuvir(PrOD)
Viekila Pak
固定用量合剤[(Paritaprevir 150mg/リトナビル100mg+Ombitasvir 25mg)1錠1日1回+Dasabuvir 250mg1錠1日2回,食事とともに
Viekila XR
固定用量徐放剤(Dasabuvir 200mg+Paritaprevir 50mg/リトナビル33.3mg+Ombitasvir 8.33mg)3錠1日1回食事とともに
シメプレビル(SMV)
ソブリアード
150mg錠経口1日1回食事とともに
ソホスブビル(SOF)
ソバルディ
400mg錠経口1日1回
ソホスブビル+レジパスビル
ハーボニー
固定用量合剤(ソホスブビル400mg+レジパスビル90mg)1錠経口1日1回
ソホスブビル +ベルパタスビル
エプクルーサ
固定用量合剤(ソホスブビル400mg+ベルパタスビル100mg)1錠経口1日1回
ソホスブビル/ベルパタスビル/Voxilaprevir
Vosevi
固定用量合剤(ソホスブビル400mg+ベルパタスビル100mg+Voxilaprevir 100mg)1錠経口1日1回食事とともに
リバビリン
コベガス
体重別用量:1000mg(体重<75kg)または1200mg(体重>75kg).低用量:600mg/kg.食事とともに
ペグインターフェロン(α2a)
ペガシス
180μg皮下注週1回.注:めったに使用されず,現在では推奨される処方ではない

†:日本にない剤形


推奨される治療処方

HCVのみの感染
  • 1=第一選択;2=第二選択
genotype
1/2
処方
肝硬変
なし
肝硬変*
あり
治療期間 (週)
コメント
1~6
1
エプクルーサ1錠経口1日1回


12
すべてのgenotype
1~6
1
マヴィレット3錠経口1日1回


8
すべてのgenotype


12
1,4,5,6
1
ハーボニー1錠経口1日1回


8
患者が黒人でなく,HIV未感染,肝硬変なし,HCV RNA<600万/mLの場合


12
患者が黒人,HIV重複感染あり,代償性肝硬変,HCV RNA>600万/mLのいずれかの場合
1,4
1
エルバスビル+グラゾプレビル1錠経口1日1回


12
治療前に多重NS5A耐性関連変異がない場合
1
2
SOFSMV±RBV)経口1日2回に分割
○ (この場合のみ)
  
12
RBV用量は体重別
3
2
Vosevi 1錠経口1日1回
  

12
RAS Y93Hがある場合に使用

*:肝硬変=代償性肝硬変


HCV/HIV重複感染
  • genotype 1,2,3
  • HCVのみの感染の場合と同様
  • 8~12週治療.HCV未治療で重複感染患者でマヴィレットを使用する場合は8週のみ:それ以外は,どの処方も最低12週治療
  • genotype 4, 5, 6
  • 十分な経験がない:治療が必要な場合は,HCV単独感染と同一処方を用いる
  • 一般的コメント/警告
  • レジパスビル/ソホスブビルは,テノホビルジソプロキシルにコビシスタットを併用する場合には用いないこと.
  • レジパスビル,グレカプレビル,Velpatasvirのいずれかを併用する場合は,PPIの用量調整が必要となる.
  • Simeprevir:併用できるのは一部の抗レトロウイルス薬のみ:ラルテグラビル,リルピビリン,マラビロク,テノホビル,エムトリシタビン,ラミブジン,アバカビル.
  • リバビリンはDidanosine,Stabudine,ジドブジンと併用しないこと.
非代償性肝硬変*
genotype
処方
治療期間 (週)
コメント
1~6
エプクルーサ1錠経口1日1回+RBV
12
RBVは低用量(600mg1日1回).RBVに不耐の場合はRBVなしで24週治療.SOFまたはNS5Aによる治療を受けていた場合,低用量RBVで24週治療.
1,4,5,6
ハーボニー1錠経口1日1回+低用量RBV(600mg1日1回)
12
RBVに不耐の場合はRBVなしで24週治療.SOFまたはNS5Aによる治療を受けていた場合,低用量RBVで24週治療.
2,3
DCVSOF)経口1日1回+低用量RBV(600mg1日1回)
12
RBVに不耐ならRBVなしで24週治療

*:非代償性肝硬変の場合には,肝臓専門医がHCV治療を指揮しなければならない.
肝移植後
  • 1=第一選択;2=第二選択
genotype
1/2
処方
肝硬変
治療期間 (週)
コメント
1~6
1
マヴィレット3錠経口1日1回
なし
12
代償性肝硬変の場合は第二選択
1,4,5,6
1
ハーボニー1錠経口1日1回+RBV
あり,
またはなし
12
RBV用量は体重別.用量は忍容性に応じて
2,3
1
DCVSOF)経口1日1回+低用量RBV
あり
12
代償性または非代償性
1,4,5,6
2
DCVSOF)経口1日1回+低用量RBV
なし
12
  
2,3
2
エプクルーサ1錠経口1日1回+RBV
あり
12
代償性または非代償性.RBV用量は体重別.
2,3
2
マヴィレット3錠経口1日1回
あり
12
代償性
2,3
2
SOFRBV経口1日1回
  
24
RBV初期用量600mg/日,1月ごとに200mg/日ずつ増量し忍容性に応じて体重別最大用量まで増量

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2024/06/11