エプクルーサ（ソホスブビル・ベルパタスビル） (2023/09/19 更新)
主な商品名：エプクルーサ

「サンフォード感染症治療ガイド」の中で推奨されている薬剤の適応および用量は，日本で認可されているものとは異なっている場合がありますので，薬剤選択を考慮する場合には，必ず日本での添付文書および最新安全性情報に基づいて行って下さい.
→日本の添付文書情報検索サイト

Contents

1.　用法および用量
　 1.　使用
　 2.　成人用量
　 3.　小児用量
　 4.　腎障害時の用量調整
　 5.　肝障害時の用量調整
2.　副作用
3.　抗微生物スペクトラム
4.　薬理学
5.　主要な薬物相互作用

1.　用法および用量

　1.　使用

エプクルーサ（ソホスブビル・ベルパタスビル）は，NS5B RNAポリメラーゼ阻害薬（ソホスブビル）とNS5A阻害薬（ベルパタスビル）の固定用量合剤であり，genotype1，2，3，4，5，6感染の成人および≧3歳の小児の慢性C型肝炎で，肝硬変がない場合および代償性肝硬変のある場合の治療に適応がある．非代償性肝硬変がある場合にはリバビリンとの併用が適応となる（概要はMedicine 101: e31183, 2022）．
治療期間は12週
現在および以前のB型肝炎（HBV）感染のエビデンスを検査：HCV治療開始の前にHBs抗原，抗HBc抗体を測定．HBVの重複感染があれば，HCV治療中および治療後にHBV再活性化をモニターする．　
使用可能な剤形（ソホスブビル・ベバタスビルとしてあげる）

錠剤：400mg/100mg，200mg/50mg†
経口用ペレットのパック†：200mg/50mg，150mg/37.5mg

経口用ペレットの製剤と使用

咀嚼しない（苦い後味を避けるため）
直接口に含ませるか食物とともに服用させる．≦6歳の患者では，室温以下の温度の非酸性の柔らかい食品（たとえばプリン，チョコレートシロップ，アイスクリーム）にスプーン1～2杯を振りかける．ペレットは食物と混合後15分以内に飲み込むこと．

注意：薬物相互作用が多い（下記参照）

†：日本にない剤形

　2.　成人用量

用量	1錠（ソホスブビル 400mg＋ベルパタスビル 100mg）経口1日1回，食事の影響なし

　3.　小児用量

リバビリンの用量については小児用量参照
3歳以上の患者での推奨用量（ソホスブビルmg/ベルパタスビルmg）

体重（kg）	経口ペレット	錠剤
＜17	150mg/37.5mg1日1回	適応なし
17～＜30	200mg/50mg1日1回	200mg/50mg1日1回
≧30	400mg/100mg1日1回	400mg/100mg1日1回

　4.　腎障害時の用量調整

透析を必要とする患者を含むどの段階の腎障害の患者でも用量調整は不要

　5.　肝障害時の用量調整

用量調整不要

2.　副作用

もっとも多い副作用

倦怠感，頭痛
リバビリンと併用した場合：倦怠感，貧血，悪心，頭痛，不眠，下痢

警告［Black Box Warning］：HBV抑制治療を受けていないHBV/HCV重複感染患者で，DAA（Direct Acting Agents）治療中および治療後にHBV再活性化（ときとして劇症となる）が起こったという症例が報告されている．

3.　抗微生物スペクトラム

C型肝炎ウイルス（HCV）

4.　薬理学

	ソホスブビル	ベルパタスビル
薬効分類	NS5B RNAポリメラーゼ阻害薬	NS5A阻害薬
PK/PD指標	データなし	データなし
剤形	エプクルーサ 1錠中400mg	エプクルーサ 1錠中100mg
通常成人用量	エプクルーサ錠1日1錠
FDAの妊娠危険区分	ヒトでのデータなし：動物では安全リバビリンとの併用では禁忌
経口剤の投与のタイミング1	食事の影響なし
経口吸収率2（％）	データなし	データなし
最高血清濃度3（μg/mL）	0.57(SS) ［GS-331007：0.9（SS)］注：GS-331007は血中の主要代謝物	0.26（SS）
蛋白結合（％）	61～65	＞99.5
平均血清半減期4（T1/2, 時間）	0.5 ［GS-331007：25］	15
胆汁排泄5（％）	データなし	データなし
脳脊髄液/血液6（％）	データなし	データなし
治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7	データなし	データなし
分布容積8（Vd）	データなし	データなし
AUC9（μg・時間/mL）	1.3(AUC0-24) ［GS-331007：14.4(AUC0-24)］	2.98(AUC0-24)
CYP450およびトランスポーターとの相互作用	基質：PGP，BCRP CYP450との相互作用なし	基質：PGP, BCRP, OATP1B1, OATP1B3, 2B6, 2C8, 3A4 阻害：PGP, BCRP, OATP1B1, OATP1B3, OATP2B1
Tmax10（時間）	0.5～1	3

†：日本にない剤形

注記のない場合は成人用製剤
健康な状態での吸収率
総薬剤量；遊離薬剤濃度を決定するには蛋白結合率で補正
　　　SD：単回投与後
　　　SS：複数回投与後の定常状態
CrCl＞80 mL/分と想定
（胆汁中の最高濃度）÷（血清中の最高濃度）×100
炎症時における脳脊髄液濃度
薬剤投与量とウイルスの感受性に基づく判定
分布容積（Vd）：
　　　V/F：（Vd）÷（経口生物学的利用能）
　　　Vss：定常状態におけるVd
　　　Vss/F：（定常状態におけるVd）÷（経口生物学的利用能）
AUC：血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve
Tmax：薬剤投与後，血漿中濃度が最大になるまでの時間

5.　主要な薬物相互作用

薬剤	濃度への影響（その他）	推奨される対応
アミオダロン	徐脈	併用を避ける
制酸薬	ベルパタスビル↓	投与間隔を4時間あける
アトルバスタチン	アトルバスタチン↑	筋毒性をモニター
カルバマゼピン	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
ジゴキシン	ジゴキシン↑	モニター，用量調整
エファビレンツ	ベルパタスビル↓	併用を避ける
H2ブロッカー	ベルパタスビル↓	ファモチジン最大用量40mg1日2回（または等価量）
Oxcarbazepine	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
フェノバルビタール	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
フェニトイン	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
プロトンポンプ阻害薬	ベルパタスビル↓	併用を避ける
リファブチン	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
リファンピシン	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
Rifapentine	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
ロスバスタチン	ロスバスタチン↑	ロスバスタチン最大用量10mg1日1回
セイヨウオトギリソウ	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
テノホビルジソプロキシル	テノホビル↑	モニター
Tipranavir/リトナビル	ソホスブビル↓，ベルパタスビル↓	併用を避ける
トポテカン	トポテカン↑	併用を避ける