日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

アメーバ性髄膜脳炎  (2024/01/16 更新)


臨床状況

  • 原虫感染による髄膜脳炎で,原因となる病原体によって,急性髄膜炎から亜急性慢性病変まで異なる病状を示す.
  • Naegleria fowleriおよびAcanthamoeba属は,主に湖,プール,水道水,冷暖房機の中にみられる.
  • Balamuthiaは,最初に皮膚病変として発症することが多い.
  • どちらも診断のためには脳組織が必要:脳脊髄液PCRは感度が低い.
  • CDCには自由生活アメーバのプログラムがある.電話(終日)770-488-710,ただしMiltefosineの供給は現在ではない.

診断/病原体

診断
  • Naegleriaの病理学的検査.運動性栄養型を脳脊髄液のウエットマウントで確認,ギムザ染色スメアは典型的な栄養型の形態を示す.脳脊髄液および脳組織中のN. fowleriの検出にPCRが使用されることがある.
  • B. mandrillarisの検出には,組織標本の免疫蛍光染色または免疫ペルオキシダーゼ染色が最も信頼性が高いが,利用可能ならPCRを行う.
  • Acanthamoebaの栄養型および嚢胞は,生検標本(脳,皮膚,角膜)または角膜切屑の染色スメアの鏡検で確認できるが,脳脊髄液中には少ない.
  • B. mandrillarisおよびAcanthamoeba
  • どちらも診断には脳組織が必要.脳脊髄液PCRは感度が低い.
病原体
  • アカントアメーバ(Acanthamoeba)属:ほとんど全例が免疫不全患者
  • Balamuthia mandrillaris:免疫正常者でも免疫不全者でも起こる.
  • Sappinia diploidea(ヒトでの症例は少ない)

第一選択

Acanthamoeba
  • 効果の証明された治療なし:以下を試みる.
  • AMPH-Bは使用しないこと.in vitroで活性なし.
Balamuthia mandrillarisClin Infect Dis 51: e7, 2010参照)
  • 第二選択参照
Naegleria fowleri
  • AMPH-B 1.5mg/kg/日±髄腔内投与+RFP 10mg/kg/日+FLCZ 10mg/kg/日静注または経口+Miltefosine 50mg経口1日3回(体重<45kgなら1日2回)+AZM 500mg静注/経口.回復者が少ないため治療期間は経験的である.
  • 補助的デキサメタゾンを考慮する:0.6mg/kg/日を4回に分けて静注
  • 現在までに米国では11例,回復者の報告がある(Clin Infect Dis 62: 774, 2016).回復は早期診断と早期のAMPH-Bにかかっている.
  • L-AMBは動物モデルでは効果が低かった.
  • 提案されつつある処方については,第二選択およびコメント参照

第二選択

  • Balamuthiaに対してSTAZMまたは5-FCを,Acanthamebaに対して5-FCを加える専門家もいる.
  • NitroxolineをAsieris Pharmaceuticalから入手するための手順については <natasha.spottiswoode@ucsf.edu>に連絡すること.

コメント

  • Miltefosineを含む併用治療でBalamuthiaおよびAcanthamoebaから長期に回復した症例報告が集積されつつある.
  • 現在CDCおよび専門家の間では第一選択治療と考えられている.
  • CDCは現在ではMiltefosineの提供を行っていない.
  • Naegleriaに対するより有効な治療法の探索
  • L-AMBは,Naegleria fowleriに対しin vitroでより高いMICを示す.他の種についても同様だろう.
  • in vitroおよびマウスにおける生存実験では,PSCZがもっとも速やかかつ強力な活性を示した.
  • PSCZ+AZMの併用により生存率が改善された.
  • 編者らは,今後はPSCZ(FLCZに代えて)の併用にすべきだと考えている.
  • ペンタミジンはいくつかの報告で臨床的な有効性が示唆されており,in vitroで一部のアメーバ種に対し優れた活性を示すが,血液脳関門が正常の場合ほとんど脳脊髄液に移行せず,また一般に非常に毒性が高い.
  • AMPH-B,Miltefosine,パロモマイシン,ペンタミジンイセチオン酸塩,スピラマイシンは,B. mandrillarisに対しては in vitroで限られた活性しかない:J Eukaryot Microbiol 60: 539, 2013
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2024/01/15