日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Enterococcus faecalis  (2021/7/6 更新)
E. faecalis,ペニシリンまたはVCM耐性菌


臨床状況

  • Enterococcus faecalis のVCM耐性はE. faeciumほど多くないが,SM耐性(MIC>2000μg/mL)および/またはGM耐性(MIC>500μg/mL)は増加しており,したがってペニシリンとの相乗効果はない.
  • ペニシリン耐性は少ないが,耐性の場合,機序は(1)ペニシリナーゼの産生(まれ)または,(2)薬剤標的であるペニシリン結合蛋白の変異(こちらのほうが通常)である.

分類

  • グラム陽性球菌,双球状またはレンサ状

第一選択

特異的治療の推奨は,感染性心内膜炎-Enterococcusを参照.
ペニシリン感受性株
  • 全身感染症:PCG 300万単位静注4時間ごと,またはABPC 2g静注4時間ごと
  • 膀胱炎(のみ):Nitrofurantoin 100mg経口6時間ごと,またはFOM3g経口(注) 1回,またはAMPC 1g経口12時間ごと
      【注】FOM 経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.
ペニシリン耐性株
  • 全身感染症:VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと
  • 分離株がβラクタマーゼ陽性の場合,ABPC/SBT 3g静注6時間ごと
VCM耐性株(VRE)
  • コンサルテーションが推奨される
  • 重症全身感染症(たとえば心内膜炎):
  • DAP 8~12mg/kg静注24時間ごと+(ABPC 2g静注4時間ごと,またはCTRX 2g静注12時間ごと,またはCeftaroline 600mg静注8時間ごと)
  • 膀胱炎:Nitrofurantoin 100mg経口6時間ごと,またはFOM 3g経口(注)1回

第二選択

  • VRE菌血症:LZD 600mg静注または経口1日2回は,DAPの代替選択である(コメント参照).

コメント

  • VRE血流感染治療に対するLZD単剤とDAP単剤を比較した3つのメタアナリシスでは,LZDの使用による生存率改善が示唆された.しかし,VRE菌血症においてDAP単剤とLZD単剤を比較したVeterans Affairsコホート研究では,LZD群のほうが30日死亡率および微生物学的失敗率が高いことが示された:Clin Infect Dis 61: 871, 2015.さらに,LZDは静菌的であり,心内膜炎で理論上不利であるほか,長期使用では骨髄毒性,神経毒性の危険がある.
  • 注:E. faecalisはQuinupristin/Dalfopristinに耐性.
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2021/07/01