日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

尿路感染症,急性-小児,月齢2カ月未満  (2025/10/14 更新)
月齢2カ月未満小児の尿路感染症,単純性,複雑性,菌血症を伴う


臨床状況

  • 発熱のある乳児.尿路感染症の発症率は7~15%.発症率は,割礼を受けていない男児>女児>割礼を受けた男児の順に高い.
  • 診断には尿培養が必要:
  • カテーテルまたは恥骨上から採取した検体での尿中病原体が>5万CFU(コロニー形成単位)/mLであれば陽性と考えられる.コロニー数が1万~5万/mLならば尿検査での異常が参考になる.6~10%では尿検査は正常.Pediatrics 141: e20173068, 2018
  • 採尿バッグからの尿検体の培養は信頼性が低く,行ってはならない.
  • 4~7%で菌血症を伴う.
  • 乳児の尿路感染では,血液培養が必要.生後<28日で,病感があれば,脳脊髄液検査・培養が推奨される.

病原体

第一選択

  • 経験的治療は他の発熱乳児と同様.
  • 静注治療から開始する
  • CTRX 75~100mg/kg/日1日1回
  • 従来はABPCGMが単独で用いられてきたが,E. coliABPC耐性発現率が高いため,第3世代セファロスポリン系薬の追加が推奨される.第3世代セファロスポリン薬を使用するなら,GMは不要だろう.
  • 早産児あるいは高ビリルビン血症のある満期産児では,理論上ビリルビン上昇のリスクがあるため,CTRXよりもCTX 150~200mg/kg/日8時間ごとに分割またはCAZ 100mg/kg/日8時間ごとに分割の方が好ましい

第二選択

  • なし

抗微生物薬適正使用

  • 培養陽性でも症状や膿尿がない患者では,治療の必要はない.
  • 培養結果に基づいて治療を調整すること.
  • 静注治療は通常,脳脊髄液感染と菌血症が除外され,患者の状態が改善するまで続ける.中心静脈ラインの必要性を避けるため,脳脊髄液が正常で改善した状態が続けば,一過性の菌血症があっても高用量経口治療に切り替えることが多い.

コメント

  • 治療開始後,すべての乳児で腎の超音波検査を行うこと.
  • 新生児が,完全非経口栄養のようなカルシウム含有静注溶液(持続静注を含む)による治療を必要とする(または必要と予測される)場合には,CTRXは禁忌である
  • 排尿時膀胱尿道造影(VCUG)は,超音波検査で逆流,閉塞,明らかな解剖学的異常が示唆される小児に対して行うこと.
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2025/10/14