日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎-S. pneumoniae  (2025/11/25 更新)
S. pneumoniaeによる髄膜炎,特異的治療


臨床状況

  • S. pneumoniaeによる細菌性髄膜炎の成人患者に対する特異的治療.
  • 発熱,頭痛,精神状態の変化,髄膜症状,髄液細胞増多症を伴い,髄液および/または血液培養陽性.
  • 50%でグラム染色陽性.
  • 治療推奨は以下を前提とする
  • デキサメタゾン補助治療は下記の処方による
  • ペニシリン(または第3世代セファロスポリン)MIC≧1μg/mLなら,24~48時間後に髄液検査を繰り返し,有効性を確認すること.

診断/病原体

診断
  • リアルタイムPCRは,培養陰性例を含むS. pneumoniaeによる髄膜炎を診断するうえで非常に正確である(BMC Infect Dis 13: 26, 2013
病原体

第一選択

  • 注:すべての処方はデキサメタゾン0.15mg/kg静注6時間ごとを含む:第1回投与は抗菌薬初回投与の15~20分前に行い,その後4日継続する.
  • 感受性試験の結果が出るまでの初期の経験的治療.
  • VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする)+(CTRX 2g静注12時間ごと,またはCTX 2g静注4~6時間ごと)
  • PCGの感受性が既知
  • PCG MIC<0.1μg/mL:
  • PCG 400万単位静注4時間ごと,またはABPC 2g静注4時間ごと
  • PCG MIC≧0.1μg/mLでCTRX MIC≦0.5μg/mL:
  • CTRX 2g静注12時間ごと,またはCTX 2g静注4~6時間ごと
  • PCG MIC≧0.1μg/mLでCTRX MIC>0.5μg/mL:
  • VCM 上記と同様+(CTRX 2g静注12時間ごと,またはCTX 2g静注4~6時間ごと)
  • CTRX MIC≧2μg/mLなら上記の処方にRFP 600mg経口/静注†を追加.

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 注:すべての処方はデキサメタゾン0.15mg/kg静注6時間ごとを含む:第1回投与は抗菌薬初回投与の15~20分前に行い,その後4日継続する.
  • βラクタム藥アレルギーの場合の,感受性試験の結果が出るまでの初期の経験的治療.
  • VCM 上記と同様+MFLX 400mg静注24時間ごと
  • PCGの感受性が既知
  • PCG MIC<0.1μg/mL:
  • CTRX 2g静注12時間ごと
  • PCG MIC≧0.1μg/mLでCTRX MIC≦0.5μg/mL:
  • CFPM 2g静注8時間ごと,またはMEPM 2g静注8時間ごと
  • PCG MIC≧0.1μg/mLでCTRX MIC>0.5μg/mL:
  • VCM 上記と同様+MFLX 400mg静注†24時間ごと
  • LZD 600mg静注12時間ごと
  • 重度のβラクタム薬アレルギーの場合
  • VCM上記と同様+MFLX 400mg静注†24時間ごと

(†:日本にない剤形)

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 治療期間は10~14日
抗微生物薬適正使用
  • 実際に使用する抗菌薬の感受性試験を行うこと.たとえば,ペニシリン耐性の分離菌は他のβラクタム薬にも耐性のことがある.

コメント

  • 1300例の患者を対象とした大規模コホート研究では,デキサメタゾンの併用により死亡またはアウトカム不良のオッズ比が半分まで低下した(Lancet Infect Dis 16: 339, 2016).同様の肯定的結果が1700例以上の成人患者を対照としたオランダの研究で示された(Clin Infect Dis 74: 657, 2022).
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2025/11/25