日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

性器潰瘍  (2024/06/11 更新)
性器潰瘍,肛門潰瘍,肛門周囲潰瘍


臨床状況

  • 通常は性行為で感染.性器,肛門,肛門周囲の潰瘍を含む.CDCのガイドライン(2021)を参照(MMWR Recomm Rep 70: 1, 2021).
  • HSVまたは梅毒が最も多い.
  • 口腔内潰瘍を呈することもある(梅毒,ヘルペス,LGV).
  • 有痛性
  • 軟性下疳Haemophilus ducreyi):典型的には深く不規則な縁を伴う
  • エムポックス:皮膚に丘疹,ただし口内や性器/肛門に有痛性の病変が生じることもある.
  • 無痛性
  • 梅毒Treponema pallidum):通常は単一の境界が明瞭で硬化した潰瘍:直腸炎として発症する直腸梅毒は痛みを伴うことがある.
  • 鼠径部肉芽腫Klebsiella granulomatisまたはドノバン症):もろい,単結節または多結節の病変
  • 局所リンパ節炎が多い
  • 排尿障害を伴うことがある

病原体/診断

病原体
  • 細菌
  • 非感染性(ほとんどは自己免疫疾患):アフタ性口内炎,ベーチェット病,悪性腫瘍,クローン病,乾癬,外傷,酵母,癌,固定薬疹
  • 最大25%は検査室での確定診断が得られない.
診断
  • 性器潰瘍の患者は全例で梅毒およびHSVの評価を行う.
  • 複数の病原体が関与することもある.
  • 臨床症状は確定診断には有用でないこともある.
  • 鼠径部肉芽腫には生検が必要.
  • 病変部の滲出液や組織から梅毒の血清学検査と暗視野検査を行うか,可能であればNAATを行う.
  • 性器ヘルペス1型または2型に対し,NAATまたは培養検査を行う.
  • サル痘に対してはNAATを行う.
  • タイプ特異的HSV抗体に対し血清学的検査を行う.
  • 軟性下疳が流行している場合は,Hemophilus ducreyiに対しNAATまたは培養を行う.

第一選択

  • 上記病原体の各ページを参照

第二選択

  • 上記病原体の各ページを参照

コメント

  • 他のすべての性感染症と同様,性器潰瘍患者は全例HIV検査を受けること.
  • 診断検査が行えないことがあるので,臨床診断で経験的治療を行うことも多い.
  • 梅毒(特に男性同性愛者)またはヘルペスの一貫した臨床症状がある場合には,検査での診断に先立って経験的治療を考慮する.
  • 病原体によっては,セックスパートナーに対する評価や治療が必要となる.
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2024/06/11