日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

軟性下疳  (2024/05/21 更新)


臨床状況

  • 有痛性の性器潰瘍を伴う性感染症.
  • 有病率は世界的に減少している.
  • 疼痛なし:梅毒,性病性リンパ肉芽腫症(LGV)(リンパ節腫脹の痛みあり),鼠径部肉芽腫(Klebsiella granulomatisまたはドノバン症)
  • 性器潰瘍のあるすべての患者は,梅毒(暗視野法と血清学検査),HSV(培養またはPCR),H. ducreyiの培養検査を受けること(FDAはPCRを承認していないが,行っている施設もある).鼠径部肉芽腫では生検が必要.
  • 複数の病原体が認められることがある.
  • 7日後の潰瘍の改善を確認する必要がある.

病原体/診断

病原体
診断
  • Haemophilus ducreyiの培養には特別な培地が必要だが,まだ広く利用されていない.
  • NAATは培養よりも感度が高いが,まだ広く利用されていない.
  • 以下のすべての項目を満たす場合,診断可能.
1) 1つ以上の痛みを伴う性器の潰瘍
2) 典型的な性器潰瘍の臨床症状±局所リンパ節腫脹を伴う.
3) 潰瘍発症から7~14日後,T. pallidum感染を示す証拠(暗視野検査,NAAT,または血清学検査)がない.
4) 潰瘍滲出液または体液のHSV-1,HSV-2 NAAT,またはHSV培養が陰性.

第一選択

  • CTRX 250mg筋注††1回
  • AZM 1g経口1回

(††:米国では処方される)

第二選択

  • CPFX 500mg経口1日2回・3日
  • EM 500mg経口1日3回・7日

コメント

  • 他の性感染症と同様,軟性下疳と診断された患者はすべてHIV検査を受けること.
  • HIV感染または割礼を受けていない男性患者は,治療への反応性が低い可能性がある.
  • シプロフロキサシンとエリスロマイシンの耐性の報告があるが,抗菌薬感受性に関する信頼できる報告は少ない.
  • 軟性下疳患者のすべてのセックスパートナーは,罹患のエビデンスがある,または当該患者と60日以内の性関係があった場合には,検査・治療を受ける必要がある.
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2024/05/21