日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎-無菌性  (2024/06/25 更新)
無菌性,非細菌性,髄膜炎,エンテロウイルス


臨床状況

  • 発熱,頭痛,髄膜症状,悪心,嘔吐,光線過敏症.典型的には神経学的巣症状や精神状態の変化はない.症状の持続期間は短く,通常は1週間以内.
  • 髄液中の糖は正常,蛋白は正常か若干高値,リンパ細胞増加-通常は数百.
  • エンテロウイルス髄膜炎の成人患者の1/3までが,脳脊髄液中の好中球増多を示す.総説:J Clin Viol 104: 56, 2018
  • 細菌性髄膜炎と関連する事項:プロカルシトニン>1.2ng/mL,脳脊髄液(CSF)蛋白>80mg/dL,CSF好中球絶対数>1000/mm3,C反応性蛋白>40mg/L
  • 上記のいずれも該当しない場合(SCORE=0),細菌性髄膜炎ではない可能性が高い.

病原体

  • ウイルスが考えられるが,多くの症例では原因診断ができない.
  • HIV初感染
  • リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルス
  • NSAIDs
  • 抗菌薬:特にST,ABPC,AMPC
  • 免疫抑制薬/免疫調節薬:セツキシマブ,インフリキシマブ,sulfasalazineなど
  • 抗てんかん薬:ラモトリギン,カルバマゼピンなど
  • 感染以外の原因:膠原病(SLEなど),新生物など

第一選択

  • 通常,悪心・嘔吐による脱水症や麻薬による鎮痛の必要性から,入院治療を行う.
  • ウイルス性に対しては抗菌薬による治療は有用でなく,また一般的には不必要.
  • 急性HIV感染による髄膜炎は自然治癒するが,抗レトロウイルス治療を開始するかどうか至急検討する必要がある.
  • 原因となりうる薬剤の中止.
  • レプトスピラ症に対してはDOXY 100mg静注†または経口12時間ごと,またはPCG 500万単位静注6時間ごと,またはABPC 0.5~1g静注6時間ごと

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • なし

コメント

  • 治癒していない細菌性髄膜炎が疑われる場合は,腰椎穿刺を繰り返す.
  • エンテロウイルス:
  • 可能ならばエンテロウイルスに対する髄液PCR.迅速髄液PCR検査は正確で,小児で治療費を抑制し入院期間を短縮させる(Pediatrics 120: 489, 2007).
  • Pleconaril(VP63843)はまだ治験中.エンテロウイルスによる無菌性髄膜炎の小児21例を対象とした二重盲検プラセボ比較試験では臨床的有用性が認められなかった(Pediatr Infect Dis J 22: 335, 2003).症状を緩和することはできなかったが,重度の頭痛のある患者ではある程度の改善があった(Antimicrob Agents Chemother 50: 2409, 2006
  • 単純ヘルペスウイルス2型:性器ヘルペスの合併や既往がない場合が多い(J Neuroviol 19: 166, 2013参照).
  • レプトスピラ症の場合には,考えられる感染源(旅行,汚染の可能性のある水への接触),肝炎,結膜炎,皮膚炎,腎炎の合併の有無を確認する.
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2024/06/25