日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

レプトスピラ症,レプトスピラ属  (2023/05/23 更新)
レプトスピラ症,Leptospira interrogans


臨床状況

  • Leptospira interrogansスピロヘータにより引き起こされる,多臓器に発症する人獣共通感染症である.Leptospiraは多くの種類の家畜や野生動物(ウシ,ブタ,ヤギ,ウマ,ヒツジなどの家畜,イヌ,小さな齧歯類)の尿中に見いだされる.
  • スピロヘータは,宿主の皮膚,粘膜,結膜を通じて侵入する.
  • 病状は軽症から重症(ワイル病)までさまざまであり,主として発熱,筋肉痛,頭痛,結膜うっ血を呈する.
  • ビリルビン値が劇的に上昇することが多いが,AST/ALT上昇は正常値の5倍を超すことはない.
  • 診断は従来は血清学によるもので,7~14日の回復者血清の抗体力価が,初期,急性期の検体と比較して4倍上昇が基準だった.PCRが広く利用できるようになった.州の公衆衛生検査施設および民間の検査施設に問い合わせること.

病原体

  • Leptospira interrogans

第一選択

注:抗菌薬の投与し始め数回のうちにJarish Herxheimer反応が起こることがある
外来患者,軽症
  • DOXY 100mg経口1日2回・5~7日
  • AMPC 500mg経口1日3回・7日
  • AZM 1g経口・1回,その後500mg経口1日1回・2日
  • 妊婦または8歳未満の小児:AMPC 25~50mg/kg/日経口3回に分割・7日
入院患者,重症
  • PCG 150万単位静注6時間ごと・7日
  • CTRX 2g静注1日1回・7日
  • 小児:PCG 25万~40万単位/kg/日静注を4~6回に分割・7日

第二選択

外来患者,軽症
  • 成人:AZM 500mg経口1日1回・3日
  • 8歳未満の小児または妊婦:AZM 10mg/kg(最大500mg)1日目,その後5mg/kg/日(最大250mg)・3日
入院患者,重症
  • 成人:DOXY 100mg静注†・7日
  • 小児:CTRX 80~100mg/kg静注1日1回・7日
  • DOXY 2~4mg/kg/日12時間ごとに分割静注†

(†:日本にない剤形)

コメント

  • 小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では,薬剤とその着色分解物質がエナメル質に沈着することにより,歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.
  • DOXYは,他のテトラサイクリン系薬にくらべカルシウムへの結合力が弱く,最近の比較データからは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている.
  • グルココルチコイドの役割は不明であり,ルーチンには推奨できない
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2023/05/22