日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

単純ヘルペス-脳炎  (2024/06/04 更新)
単純ヘルペス脳炎


臨床状況

  • HSV1型は散発性脳炎の原因として最も多い.
  • 生存率と神経学的後遺症からの回復の程度は,治療開始時の精神症状の程度に左右される.

病原体

診断
  • 脳生検(ゴールドスタンダード)
  • 脳脊髄液HSV PCR(脳生検に取って代わる;感度および特異度は約98~99%.最初の検査が陰性ならば3~7日後に繰り返す.ただしそのために治療を遅らせてはならない
病原体
  • ときにはHSV 2型による発症もある

第一選択

  • 成人:アシクロビル 10~12.5mg/kg静注(1時間以上かけて)8時間ごと・14~21日
  • 肥満患者での用量計算は不明.
  • 高用量での腎毒性を軽減するために,1回1時間以上かけて注入するのが適切と考えられる.
  • 小児:<12歳の小児ではアシクロビル 10~15mg/kg 8時間ごと,新生児のヘルペス中枢神経疾患では20mg/kg 8時間ごと

第二選択

  • なし

抗微生物薬適正使用

  • 成人に対しては高用量(15mg/kg8時間ごとまで)が用いられているが,付加的な効果はほとんどないことが報告されている(Curr Infect Dis Rep 19: 13, 2017

コメント

  • アシクロビル投与で致死率>70%が19%に減少した.
  • HSV脳炎の治療成功後の自己免疫脳炎[N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体抗体を介する].当初は治療開始後1〜7週におけるHSV脳炎再発と考えられたが,後に自己免疫現象であることが判明した.診断は髄液中の神経細胞の抗体検出により行う(抗原検査は陰性).全身性コルチコステロイド(望ましい),IVIG,または血漿交換による治療を行う(Neurol Clin 39: 197-207, 2021Lancet Neurology 17: 760, 2018).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2024/06/04