日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎-年齢:早産児~<1カ月  (2024/04/09 更新)
新生児および生後<1カ月の小児の髄膜炎に対する経験的治療


臨床状況

  • 早産児および生後<1カ月の乳児の髄膜炎に対する経験的治療.
  • 症状は軽度で,食欲不振や嘔吐,傾眠,イライラ,興奮などの非特異的症状を伴う.
  • 約60%に発熱または低体温.
  • 頂部硬直はないことが多い.
  • 菌血症のある乳児の~15%で髄膜炎が発症することがある.

病原体

  • その他のグラム陰性菌

第一選択

  • ABPC 75~100mg/kg静注6時間ごと+CTX(入手可能な場合)[100~150mg/kg/日8~12時間ごとに分割(生後0~7日)または150~200mg/kg/日6~8時間ごとに分割(生後8日~28日)]+GM 2.5mg/kg静注8時間ごとまたは5~7mg/kg静注24時間ごと
  • CTRX 100mg/kg/日は,高ビリルビン血症のない満期産児で使用できることがある
  • CAZ 100mg/kg/日8時間ごとに分割,またはCFPM 100mg/kg/日8時間ごとに分割は,CTRXが禁忌の場合にCTXに代わる選択肢となりうる
  • 脳室内投与は推奨されない
  • 原因菌が判明したらそれに応じて処方を修正する.

第二選択

  • ABPC 75~100mg/kg静注6時間ごと+CAZ 50mg/kg静注8時間ごと
  • ABPC 75~100mg/kg静注6時間ごと+CFPM 50mg/kg静注8時間ごと
  • ABPC 75~100mg/kg静注6時間ごと+CTRX 50mg/kg静注12時間ごと(コメント参照)
  • ABPC 75~100mg/kg静注6時間ごと+GM 2.5mg/kg静注8時間ごとまたは5~7mg/kg静注24時間ごと.
  • MRSAのリスクが高い場合(たとえば,シャントや脳室の髄液リザーバーの存在)は,VCM+CTXを使用.培養および感受性の結果が判明したら処方を変更(Lancet Infect Dis 10: 32, 2010).

コメント

  • 第一および第二選択薬はB群Streptococcus,ほとんどのColiforms,Listeriaに有効.特にB群StreptococcusおよびListeriaの検出率が高い集団で,出生直後の発症(出生後<7日)にはABPCおよびGMが好ましいとする専門家もいる.しかし,ABPC耐性E. coliが増加していること,Klebsiella属はABPCに自然耐性であることから,この処方は適正でない可能性もある.ほとんどの集団でListeriaはまれとなっているが,母親が感染している場合には疑わなくてはならない.
  • Citrobacterは新生児で髄膜炎を引き起こすことはまれだが,しばしば脳膿瘍の原因となる.画像診断が必要である.予後は良好でない.
  • E. coli または他のグラム陰性菌はABPC耐性率が高いため,それらの疑いが強い場合にはCTXあるいはその代替となる第3/第4世代セファロスポリン系薬を加えること.
  • 新生児でのCTRX使用には注意が必要.ビリルビンを置換することがあるが,これに関連したリスクは不明.ビリルビンのモニターが重要だが,ビリルビンが正常値の乳児でも行われることがある.胆汁うっ滞が報告されている.CTRXとカルシウム含有静注溶液の併用により重大な合併症が起こることがある(Pediatr Drugs 19: 21, 2017).
  • 早産児が長く入院している場合,S. aureusEnterococcus,抗菌薬耐性のColiformsが病因となりうる.
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2024/04/08