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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
曝露後の管理-HIV,非職業上の曝露
(
2023/2/28 更新
)
曝露後予防(PEP)
臨床状況
性的接触や静注薬用注射針の使い回しによるHIV感染リスクは,医療従事者の針刺し事故によるリスクと同等もしくはそれ以上と考えられるため,HIV陽性の曝露源からの血液や感染の危険性がある体液に非職業的に曝露したHIV陰性者では,曝露から72時間以内(理想的には数時間以内)の曝露後予防投与(PEP)が推奨される.
HIV陽性曝露源からの以下のような曝露では感染のリスクがある:
膣,直腸,眼,口,粘膜,傷のある皮膚,皮下への曝露
血液,精液,膣分泌物,直腸分泌物,母乳,または明らかに血液で汚染されたもの.
曝露源がHIV陽性でも,以下の曝露ではHIV感染リスクはほとんどない
尿,鼻汁,唾液,汗,涙(明らかに血液で汚染されている場合以外)
曝露後≧73時間では,PEPは無効であり推奨されない.
抗レトロウイルス薬3剤併用4週間の処方がPEPとして推奨される.
推奨される処方
年齢≧13歳,CrCl≧30mL/分
デシコビ
[エムトリシタビン200mg+テノホビルアラフェナミド]+(
ドルテグラビル
50mg経口1日1回または
ラルテグラビル
1200mg経口1日1回)(CrCl<30mL/分では推奨されない)
年齢≧13歳,CrCl<30mL/分
テノホビルジソプロキシル
300mg72~96時間ごと+
エムトリシタビン
200mg72~96時間ごと+(
ドルテグラビル
50mg経口1日1回または
ラルテグラビル
400mg経口1日2回)
小児・年齢2~12歳
テノホビルジソプロキシル
+
エムトリシタビン
+
ラルテグラビル
(いずれも年齢と体重に応じて用量を調整する)
小児・生後4週間~<2歳
ジドブジン
+
ラミブジン
+(
ラルテグラビル
または
ロピナビル・リトナビル
)(いずれも経口溶液とし,年齢と体重に応じて用量を調整する)
小児・生後27日まで:HIV専門の小児科医に相談すること
第二選択
年齢≧13歳,CrCl≧30mL/分
デシコビ
[エムトリシタビン200mg+テノホビルアラフェナミド]+
ダルナビル
800mg経口1日1回+
リトナビル
100mg経口1日1回(コメント参照,CrCl<30mL/分では推奨されない)
年齢≧13歳,CrCl<30mL/分(妊婦を含む)
ジドブジン
(腎機能に応じて用量を調整する)+
ラミブジン
+
ダルナビル
800mg経口1日1回+
リトナビル
100mg経口1日1回
小児・年齢2~12歳
ジドブジン
+
ラミブジン
+(
ラルテグラビル
または
ロピナビル・リトナビル
)1日1回,いずれも年齢と体重に応じて用量を調整する,または
テノホビルジソプロキシル
+
エムトリシタビン
+[
ロピナビル・リトナビル
または(
ダルナビル
+
リトナビル
)],いずれも年齢と体重に応じて用量を調整する
小児・生後4週間~<2歳
ジドブジン
+
エムトリシタビン
+(
ラルテグラビル
または
ロピナビル・リトナビル
),いずれも経口溶液とし,年齢と体重に応じて用量を調整する
コメント
テノホビルアラフェナミド(TAF)は,テノホビルジソプロキシル(TDF)に比べ腎障害や骨軟化症のリスクが低いため,デシコビ(エムトリシタビン200mg+TAF)のほうがツルバダ(エムトリシタビン200mg+TDF 300mg)よりも好ましく,現在では妊婦での治療選択として承認されている.TDFはTAFに対する代替として認められるが,リトナビル/コビシスタット併用のPIとの併用は避けるべきであり,CrCl 30~50mL/分では注意して使用しなければならない.
薬剤耐性ウイルスの感染が疑われたら,専門家と相談のうえ,感受性の可能性がある薬剤を含む適切な処方に変更する.
治療開始時の検査と経過観察
HIV感染リスクのある曝露を受けた後にnPEP(non-occupational PEP)を開始する患者全例で,理想的にはnPEP開始前に,HIV-1およびHIV-2の抗原・抗体の存在を迅速検査によって確認する.HIVに感染している患者ではnPEPを開始しない.nPEP開始は遅らせてはならず,検査結果を待たずに開始する.
曝露源と被曝露者の臨床検査に関する推奨については,CDC「
非職業的曝露(性行為,静注薬使用その他)後の抗レトロウイルス曝露後予防に関する改訂ガイドライン2016
」を参照.
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2023/02/28