日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎-嫌気性菌または誤嚥性肺炎  (2022/4/5 更新)
嫌気性菌肺感染±肺膿瘍


臨床状況

  • 嫌気性/混合性の市中肺感染(不正確な用語だが「誤嚥性肺炎」と呼ばれることが多い)の経験的治療.
  • 喀痰グラム染色で多数および混合性の「口腔内」細菌叢が認められる.
  • 急性・亜急性から慢性(典型的には口内細菌による)に至る感染,壊死性肺炎,肺膿瘍,膿胸は連続体をなす一連の疾患である.
  • 素因となる条件:神経学的欠損,意識レベルの低下,食道運動障害,気管内挿管,内視鏡,持続性または大量の嘔吐,中毒。
  • 急性誤嚥性疾患(すなわち誤嚥性肺臓炎)との区別
  • 誤嚥性肺臓炎は急性の化学性肺障害であり,無菌の胃酸の誤嚥および/または吸引によって起こる
  • 重症の肺障害や呼吸不全を引き起こすことがある.二次性の細菌感染のリスクあり(推計値25%)
  • レトロスペクティブ研究では,予防的抗菌薬治療を受けた患者とそうでない患者との間で治療結果に差はみられず,予防的治療群の方が治療のエスカレーションがより多かった(Clin Infect Dis 67: 513, 2018).

病原体

  • 口内嫌気性菌,その他の口内常在菌
  • グラム陽性球菌
  • グラム陰性菌

第一選択

  • 注射処方(コメント参照)
  • CTRX 1~2g静注24時間ごと+MNZ(500mg静注6時間ごとまたは1g静注12時間ごと)
  • 経口処方
  • CLDM 300~450mg経口1日3回

第二選択

  • 注射処方
  • PIPC/TAZ 3.375g静注6時間ごと,または初回4.5g,その後3.375gを4時間かけて静注8時間ごと(CrCl<20mL/分なら12時間ごと)
  • 経口処方

抗微生物薬適正使用

  • ルーチンでの嫌気性菌のカバーは,膿瘍や膿胸が疑われる場合以外は推奨されない(ATS/IDSAガイドライン:Am J Respir Crit Care Med 200: e45, 2019).しかし臨床的背景から嫌気性菌感染が疑われる場合,たとえば亜急性から慢性への臨床経過,歯周病の存在,悪臭を放つ痰,多数の菌による複数菌感染,混合菌,口腔内細菌叢感染が喀痰グラム染色で明確に示された場合は合理的である.
  • 患者が臨床的に反応すれば,経口治療に切り替えてよい.
  • 至適治療期間は確立されていないが,膿胸や肺膿瘍のない肺炎患者では7~10日,膿胸や肺膿瘍では,X線上の膿瘍消失やドレナージの度合いに応じて4~6週.
  • 急速に解熱した患者では繰り返し画像検査を行う.浸潤や所見/症状が解消されていれば,誤嚥性肺炎ではなく誤嚥性肺臓炎である可能性が高いため,抗菌薬は中止する.

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2022/03/31