日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

腹膜炎-原発性:特発性細菌性  (2025/12/23 更新)
治療と予防


臨床状況

  • 原発性特発性細菌性腹膜炎(SBP):肝硬変,腹水,発熱,腹部圧痛を伴う.
  • 微生物学的病因
  • グラム陽性細菌の検出率増加とともに,グラム陰性桿菌での耐性増加の傾向が報告されている.
  • 1994年~2012年の間に1333例の患者の腹水から分離された微生物:
  • ■グラム陰性桿菌55%(E. coli 33%,他の腸内細菌科11%,P. aeruginosaはわずか1%)
  • ■グラム陽性球菌43%(Streptococcus属15%,S. pneumoniae 3%,Staphylococcus属13%,ただしS. aureusはわずか5%,Enterococcus属 9%)
  • ■その他:嫌気性菌,真菌,その他 2%
  • 診断:速やかに穿刺を行い,穿刺液を検査に送って以下を調べる必要がある
  • 白血球および白血球分画.定義から,好中球絶対数≧250/μLの場合にSBPと診断される.
  • 培養および感受性試験:腹水20mLを採取し,滅菌条件下で最低2本の血液培養ボトル(一本は好気性,他方は嫌気性)に10mLずつ接種する.SBPでは細菌の密度が低いため,好気性ボトル2本,嫌気性ボトル2本の接種が推奨されることもある(Aliment Pharmacol Ther 41: 1116, 2015).
  • その他の推奨される腹水検査:アルブミン,総蛋白,血糖,LDH,アミラーゼ,ビリルビン
  • リスク因子については下記コメント参照

第一選択

  • 市中発症で多剤耐性のグラム陰性桿菌あるいはEnterococcus属のリスクが低い場合の治療:
  • CTX 2g静注8時間ごと(生命の危険があれば4時間ごと)(入手可能な場合)
  • PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
  • CTRX 2g静注24時間ごと
  • βラクタム薬アレルギーの場合は,CPFX 400mg静注12時間ごと
  • アルブミン静注追加,治療開始時および3日目(用量については第二選択参照)
  • 平均的な治療期間は5日だが,感染の重症度によりさまざま
  • 9つの抗菌薬処方を用いた29件のランダム化臨床試験の結果を評価した.SBPを発症した患者の割合は,いずれの抗菌薬処方についても非介入群との間に差はみられなかった.副作用は,いずれの抗菌薬についても抗菌薬非使用との間で差はみられなかった.非常に不確実なエビデンスからの要約であるが,抗菌薬による予防の有用性は不確定である.
  • 注:Cochrane研究には,消化管粘膜の障害(たとえば,静脈瘤破裂,潰瘍性疾患)からの一時的な菌血症の可能性のある患者は含まれていなかった.
  • それにも関わらず,以下の予防処方が多く用いられた
  • NFLX 400mg経口1日1回
  • CPFX 500mg経口1日1回

第二選択

  • 院内感染を中心に:院内発症で多剤耐性グラム陰性菌および/またはVCM耐性Enterococcus属による感染リスクが大きい場合.推奨処方はプロスペクティブランダム化試験に基づく.対照群はCAZであり,耐性菌に対する活性がないことによる治療失敗が非常に多かった:Hepatology 63: 1299, 2016
  • MEPM 1g静注8時間ごと+
  • DAP 6mg/kg静注24時間ごと
  • VREに対してはDAP高用量を考慮してもよい(たとえば,8~12mg/kg24時間ごと)

治療期間

  • 原発性SBPの治療期間は不明.治療期間は,菌血症が確認されるか臨床反応が遅ければ,少なくとも5日間あるいはそれ以上.別の基準として血清プロカルシトニン濃度の変化を用いてもよい.肝腎疾患がありプロカルシトニンの腎排出が遅れると,プロカルシトニン低下が遅くなることがある.

コメント

  • SBPの診断:30~40%の患者は血液,腹水培養陰性.血液培養ボトル(2~4ボトル)に10mLの患者の腹水を加えると陽性培養率が上昇する.JAMA 299: 1166, 2008
  • 注意すべきリスク因子:
  • レトロスペクティブ研究,プロスペクティブ研究,メタアナリシスのいずれでも,プロトンポンプ阻害薬はSBPの独立したリスク因子と認められている.機序については推測しかない.
  • 非選択性β遮断薬はSBPリスク低下と関連する.機序は不明.
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2025/12/22