false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Mycobacterium leprae
(ハンセン病)
(
2025/05/20 更新
)
臨床状況
Mycobacterium leprae
は抗酸菌でありハンセン病を引き起こす.ハンセン病には2つの主要な病型がある:
少菌型:中間型,類結核型,境界類結核型
多菌型:境界型,境界-らい腫型,らい腫型
らい性結節性紅斑(ENL)
細菌量の多い患者では,治療中に抗原抗体複合体が集積するため,新しい痛み,圧痛を伴う紅斑性結節が生じる.
らい腫型および境界-らい腫型の症例でみられる.
全身性の症状が多い.
皮膚および神経の既存の病変の紅斑拡大,熱感,浮腫,潰瘍化は可逆的な反応である.
典型的には,境界類結核型,境界型,境界-らい腫型の患者にみられる.
全身性の症状は少ない.
National Hansen's Disease Program(1-800-642-2477)は電話相談に応じ,薬剤の無料提供を行っている.
長期継続ケアのための資金提供を受けている米国内の指定されたクリニック:Hansen's Disease Ambulatory Care Clinics
2018年WHOガイドライン
病原体
Mycobacterium leprae
Mycobacterium lepromatosis
第一選択
WHO治療推奨,医療資源が乏しい環境での(小児用量については
WHOガイドライン
を参照)
少菌型(中間型,類結核型,境界類結核型)(小児用量については,
WHOガイドライン
を参照)
(
ジアフェニルスルホン
100mg1日1回+
RFP
600mg月1回+
クロファジミン
(CLF)300mg月1回および50mg1日1回)経口・6カ月
多菌型(境界型,境界-らい腫型,らい腫型)
上記と同様・12カ月
ハンセン病患者との接触者への予防的治療-ハンセン病および結核を除外した後
年齢15歳以上では
RFP
600mg1回(小児用量については,
WHOガイドライン
を参照)
米国National Hansen's Disease Programs治療推奨(小児用量と妊婦の治療については
NHDPガイドライン
参照)
少菌型(中間型,類結核型,境界類結核型)
MFLX
400mg+
RFP
600mg+
MINO
100mg経口,すべて月1回12ヵ月投与
多菌型(境界型,境界-らい腫型,らい腫型)
MFLX
400mg+
RFP
600mg+
MINO
100mg経口,すべて月1回24ヵ月投与
ハンセン病患者との接触者への予防的治療:
現在では推奨されていないが,研究が進行中:
Lancet Glob Health 12: e1017, 2024
;
PLoS Negl Trop Dis 18: e0012446, 2024
;
BMC Infect Dis 24: 226, 2024
.
境界反応の治療(細胞性免疫反応,1型反応)
軽症:非ステロイド性抗炎症薬による対症治療
重症:
Prednisone 60~80mg経口1日1回・2週,40~60mg経口1日1回に減量後,漸減し2~6カ月かけて終了させる(
RFP
を1日1回ではなく月1回用いる)
メトトレキサート7.5~20mg週1回はコルチコステロイド温存のために有効だろう(
Travel Med Infect Dis 37: 101670, 2020
)
らい性結節性紅斑(抗原-抗体免疫複合体を介する,2型反応)
ENLは抗原および免疫複合体の過剰によるもので,必ずしも治療後反応のみではない.治療前あるいは治療後何年もたってから発症することもある.
軽症:非ステロイド性抗炎症薬による対症治療
重症:
Prednisone 40~80mg経口1日1回から始めて,反応をコントロールするために必要最小限の用量へと減量.神経炎治療のために必要(
RFP
を1日1回ではなく月1回用いる)
メトトレキサート7.5~20mg週1回はコルチコステロイド温存のために有効だろう(
Travel Med Infect Dis 37: 101670, 2020
)
サリドマイド
300mg経口分割投与し,2週間以内に100~200mg/日に減量,さらにその後2週間以内に50~200mgに減量,反応をコントロールするため必要に応じて50~200mg/日投与する.
妊婦では禁忌:妊娠可能な年齢の女性は,治療中は二重の避妊法を行い,月ごとに妊娠検査を受ける必要がある.RFPは避妊用ピルと相互作用し効果を減弱させるため二重の避妊法を用いること.
上記薬剤の併用も行われることがある
他の治療選択肢についての総説としては,
Indian Dermatol Online J 11: 482, 2020
参照.
第二選択
WHO治療推奨
RFP耐性
([
OFLX
400mg1日1回,または
LVFX
500mg1日1回,または
MFLX
400mg1日1回]+
MINO
100mg1日1回+
CLF
50mg1日1回)・6カ月,その後([
OFLX
400mg1日1回,または
LVFX
500mg1日1回,または
MFLX
400mg1日1回,または
MINO
100mg1日1回]+
CLF
50mg1日1回)・18カ月,または
([
OFLX
400mg1日1回,または
LVFX
500mg1日1回,または
MFLX
400mg1日1回]+
CAM
500mg1日1回+
CLF
50mg1日1回)・6カ月,その後([
OFLX
400mg1日1回,または
LVFX
500mg1日1回,または
MFLX
400mg1日1回]+
CLF
50mg1日1回)・18カ月
RFPおよびOFLX耐性
(
CAM
500mg+
MINO
100mg+
CLF
50mg1日1回)・6カ月,その後([
CAM
500mg,または
MINO
100mg]+
CLF
50mg1日1回)・18カ月
コメント
ベダキリン単剤治療の概念実証(POC)では,皮膚病変からの
M. leprae
(均質化した組織をマウス足底部に接種して検査)を4週で除去し,皮膚病変の外観を7週で改善したことが示された(
N Engl J Med 391: 2212, 2024
).
サリドマイドは米国では1-800-4-CELGENEで入手可能.サリドマイドは有効だが,WHOは毒性のおそれがあるため推奨していない(
J Infect Dis 193: 1743, 2006
).しかしハンセン病専門家の大部分は,厳密な管理下であれば依然としてらい性結節性紅斑の選択薬の1つと感じている.
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2025/05/19