日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Mycobacterium leprae(ハンセン病)  (2025/05/20 更新)


臨床状況

  • Mycobacterium lepraeは抗酸菌でありハンセン病を引き起こす.ハンセン病には2つの主要な病型がある:
  • 少菌型:中間型,類結核型,境界類結核型
  • 多菌型:境界型,境界-らい腫型,らい腫型
  • らい性結節性紅斑(ENL)
  • 細菌量の多い患者では,治療中に抗原抗体複合体が集積するため,新しい痛み,圧痛を伴う紅斑性結節が生じる.
  • らい腫型および境界-らい腫型の症例でみられる.
  • 全身性の症状が多い.
  • 皮膚および神経の既存の病変の紅斑拡大,熱感,浮腫,潰瘍化は可逆的な反応である.
  • 典型的には,境界類結核型,境界型,境界-らい腫型の患者にみられる.
  • 全身性の症状は少ない.
  • National Hansen's Disease Program(1-800-642-2477)は電話相談に応じ,薬剤の無料提供を行っている.
  • 長期継続ケアのための資金提供を受けている米国内の指定されたクリニック:Hansen's Disease Ambulatory Care Clinics

病原体

  • Mycobacterium leprae
  • Mycobacterium lepromatosis

第一選択

WHO治療推奨,医療資源が乏しい環境での(小児用量についてはWHOガイドラインを参照)
  • 少菌型(中間型,類結核型,境界類結核型)(小児用量については,WHOガイドラインを参照)
  • 多菌型(境界型,境界-らい腫型,らい腫型)
  • 上記と同様・12カ月
  • ハンセン病患者との接触者への予防的治療-ハンセン病および結核を除外した後
米国National Hansen's Disease Programs治療推奨(小児用量と妊婦の治療についてはNHDPガイドライン参照)
  • 少菌型(中間型,類結核型,境界類結核型)
  • MFLX 400mg+RFP 600mg+MINO 100mg経口,すべて月1回12ヵ月投与
  • 多菌型(境界型,境界-らい腫型,らい腫型)
  • MFLX 400mg+RFP 600mg+MINO 100mg経口,すべて月1回24ヵ月投与
  • ハンセン病患者との接触者への予防的治療:
境界反応の治療(細胞性免疫反応,1型反応)
  • 軽症:非ステロイド性抗炎症薬による対症治療
  • 重症:
  • Prednisone 60~80mg経口1日1回・2週,40~60mg経口1日1回に減量後,漸減し2~6カ月かけて終了させる(RFPを1日1回ではなく月1回用いる)
らい性結節性紅斑(抗原-抗体免疫複合体を介する,2型反応)
  • ENLは抗原および免疫複合体の過剰によるもので,必ずしも治療後反応のみではない.治療前あるいは治療後何年もたってから発症することもある.
  • 軽症:非ステロイド性抗炎症薬による対症治療
  • 重症:
  • Prednisone 40~80mg経口1日1回から始めて,反応をコントロールするために必要最小限の用量へと減量.神経炎治療のために必要(RFPを1日1回ではなく月1回用いる)
  • サリドマイド300mg経口分割投与し,2週間以内に100~200mg/日に減量,さらにその後2週間以内に50~200mgに減量,反応をコントロールするため必要に応じて50~200mg/日投与する.
  • 妊婦では禁忌:妊娠可能な年齢の女性は,治療中は二重の避妊法を行い,月ごとに妊娠検査を受ける必要がある.RFPは避妊用ピルと相互作用し効果を減弱させるため二重の避妊法を用いること.
  • 上記薬剤の併用も行われることがある

第二選択

WHO治療推奨
  • RFP耐性
  • ([OFLX 400mg1日1回,またはLVFX 500mg1日1回,またはMFLX 400mg1日1回]+MINO 100mg1日1回+CLF 50mg1日1回)・6カ月,その後([OFLX 400mg1日1回,またはLVFX 500mg1日1回,またはMFLX 400mg1日1回,またはMINO 100mg1日1回]+CLF 50mg1日1回)・18カ月,または
  • ([OFLX 400mg1日1回,またはLVFX 500mg1日1回,またはMFLX 400mg1日1回]+CAM 500mg1日1回+CLF 50mg1日1回)・6カ月,その後([OFLX 400mg1日1回,またはLVFX 500mg1日1回,またはMFLX 400mg1日1回]+CLF 50mg1日1回)・18カ月
  • RFPおよびOFLX耐性
  • CAM 500mg+MINO 100mg+CLF 50mg1日1回)・6カ月,その後([CAM 500mg,またはMINO 100mg]+CLF 50mg1日1回)・18カ月

コメント

  • ベダキリン単剤治療の概念実証(POC)では,皮膚病変からのM. leprae(均質化した組織をマウス足底部に接種して検査)を4週で除去し,皮膚病変の外観を7週で改善したことが示された(N Engl J Med 391: 2212, 2024).
  • サリドマイドは米国では1-800-4-CELGENEで入手可能.サリドマイドは有効だが,WHOは毒性のおそれがあるため推奨していない(J Infect Dis 193: 1743, 2006).しかしハンセン病専門家の大部分は,厳密な管理下であれば依然としてらい性結節性紅斑の選択薬の1つと感じている.
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2025/05/19