日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

結核-肺結核-感受性菌  (2023/03/22 更新)


臨床状況

  • 活動性肺結核で,INH,RFPおよび1st-lineの薬剤に感受性.
  • 新規にHIVおよび肺結核と診断された患者では,両者に対する治療をできるだけ早く開始する(N Engl J Med 362: 697, 2010).
  • 治療は以下より構成される.
  • 初期治療(2カ月)
  • 継続治療(4~7カ月),最初の胸部X線検査で空洞病変が認められた場合,継続治療2カ月目の最後の培養が陽性だった場合には,長期に治療.
  • 継続治療を7カ月に延長するかを検討する際に重要となる他の要素:最初の胸部X線写真での空洞病変,または,2カ月時点で培養陽性,喫煙,理想体重の90%以下まで体重減少,糖尿病,HIV感染や他の免疫抑制,胸部X線上の病変拡大
  • DOT(直接管理下で行う治療)処方が推奨される.
  • 週2回および週3回の処方は必ずDOTとする.
  • 隔離は必要不可欠!
  • 塗抹陰性の場合,隔離は治療後5日たてば中止できる可能性がある.
  • 塗抹陽性の場合,隔離は治療後2週間またはそれ以上たって塗抹陰性が3回続けば中止できる可能性がある.
  • 入院患者で活動性結核と診断されたまたはその疑いがある場合は,他への伝播性がないと判断されるまで,空気感染予防策がとられた個室に隔離する.

病原体

  • M. tuberculosis

第一選択

  • 初期治療(最初の2カ月)(小児および青年については,下記参照)
  • 用量は投与間隔によって異なる(24時間ごと,週2回,週3回).
処方
薬剤
投与間隔/治療期間(投与回数)
1(好ましい)
INHRFPPZAEB
週7日・8週(56回),または
週5日・8週(40回)
2(コメント参照)
INHRFPPZAEB
週3日・8週(24回)
3(コメント参照)
INHRFPPZAEB
週7日・2週(14回),その後週2回・6週(12回)

  • 継続治療(続く4~7カ月)
  • 用量は投与間隔によって異なる(24時間ごと,週2回,週3回).
  • 個々の薬剤の用量については,結核の1st-lineの薬剤の投与量を参照.
処方
薬剤
投与間隔/投与期間/投与回数
投与回数(投与期間)(初期治療+継続治療)
コメント
1a
INHRFP
週7回・18週(126回)
または
週5回・18週(90回)
182~130(26週)
好ましい処方
1b
INHRFP
週3回・18週(54回)
110~94(26週)
HIV感染者または空洞病変のある患者では注意して使用
1c(コメント参照)
INHRFP
週2回・18週(36回)
92~76(26週)
HIV感染者,あるいは喀痰スメア陽性または空洞病変のある患者には推奨されない
2(コメント参照)
INHRFP
週3回・18週(54回)
78(26週)
HIV感染者または空洞病変のある患者では注意して使用
3(コメント参照)
INHRFP
週2日・18週(36回)
62(26週)
HIV感染者,あるいは喀痰スメア陽性または空洞病変のある患者には推奨されない

  • 非重症結核の定義:末梢リンパ節結核:気道閉塞を伴わない胸腔内リンパ節結核;合併症のない胸膜滲出または菌量が少ない非空洞性病変で,1肺葉のみに限局し,粟粒パターンのない場合
  • INHRFPPZAEB(HIVの有病率が高い,またはINH耐性率が高い場合にはEBの追加が推奨される)週7日2ヵ月,続いてINHRFP週7日2ヵ月
  • 非重症結核の基準に当てはまらない小児および青年は,標準的な6ヵ月治療処方を受ける必要がある

第二選択

  • RFPに替えてRBT 5mg/kg/日(最大300mg)5~7週を用いてもよい,ただし,週1回,2回,3回投与スケジュールでは推奨されない.
  • INHRFPPZAEBの4剤処方2ヵ月,続いてINHRFP2ヵ月は,培養陰性肺結核(すなわちX腺画像で確認されるが少なくとも3回喀痰培養が陰性)の成人患者の治療に用いてもよい.
  • CD4≧100/mm3のHIV患者は対象に含まれた.
  • 妊婦は除外された.

予防

  • ワクチンの適応,使用可能な製剤,用量,曝露前予防に関するワクチンの特徴については,BCGワクチン参照.
  • BCGが考慮されるのは,非常に限られた状況のみである.

コメント

  • 初期治療/継続治療での週3回処方および継続治療での週2回処方では,再発(発症率比[IRR]=1.8~2.0),微生物学的無効(IRR=3.0~3.7)および/または薬剤耐性獲得(初期治療と継続治療の両方で週3回処方を行った場合のIRR=10)の割合が,1日1回処方と比較して高かった(Clin Infect Dis 64: 1211, 2017).
  • 治療失敗が疑われる場合:
  • アドヒアランスを確実にする(たとえば,DOTが行われていなければDOTで治療).アドヒアランス不良が考えられる原因として最も多い.
  • アドヒアランスが良好にもかかわらず治療に対する反応が乏しい場合,薬剤吸収を妨げる消化器疾患があれば,薬剤に対する十分な曝露を確認するために血清中薬物濃度測定(TDM:Therapeutic Drug Moniroring)を行う.また,薬剤の腎排泄が障害されている場合も,薬物相互作用をモニターするためにTDMを行う.TDMはルーチンには推奨されないが,HIV感染や糖尿病のために血清薬物濃度が予想よりも低くなる可能性がある患者で,治療反応が遅延している場合には有用性がある.
  • ベダキリン/LZD+INH,EB,PZAをRFP感受性肺結核において評価したランダム化対照比較試験では,治療期間は臨床的および微生物学的反応に基づいて決定され,平均で85日だった.その結果,この処方は,INH,RFP,PZA,EBの標準6ヵ月処方に対して非劣性であった(N Engl J Med 2023年2月20日).より短期間の治療を可能にしたこの有望な治療戦略の担うべき役割については,CDCまたはWHOの公衆衛生指針に盛り込まれるであろう.
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2023/03/20