日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

結核-HIV陽性/AIDS患者  (2026/06/16 更新)


臨床状況

  • HIV/AIDS患者のM. tuberculosisに対する治療.
  • HIV陽性の肺結核患者の60~70%は肺外病変を有する.
  • 結核患者での免疫再構築症候群(IRIS)に関するコメントを参照.

病原体

  • M. tuberculosis

第一選択

注:RFPまたはRBTと抗レトロウイルス治療で用いられる薬剤との薬物相互作用を常にチェックすること
  • RFPは,薬物相互作用が多いため,絶対に必要という場合以外は使用しないこと
  • まれにインテグラーゼstrand transfer阻害薬(INSTI)に対する耐性が確認されることがあり,そうした場合以外は,プロテアーゼ阻害薬処方は避ける.
  • 結核またはHIV薬剤耐性の状況では,専門医へのコンサルテーションが強く推奨される
HIV感染のない薬剤感受性結核で用いられる治療処方は,以下のような変更を加えればHIV感染患者でも推奨される(最新のCDCガイドラインを参照)
  • INH:変更なし.おそらくはすべての抗レトロウイルス薬と併用可能
  • PZA:変更なし.おそらくはすべての抗レトロウイルス薬と併用可能
  • EB:変更なし.おそらくはすべての抗レトロウイルス薬と併用可能
  • プロテアーゼ阻害薬+リトナビルについては,RBT 150mg1日1回
  • 推奨されない抗レトロウイルス薬:Bictegravir,Cabotegravir/リルピビリン(筋注/経口),Elvitegravir/コビシスタット,エトラビリン+リトナビル併用のプロテアーゼ阻害薬,Lenacapavir(皮下/経口),プロテアーゼ阻害薬+コビシスタット.
  • その他の抗レトロウイルス薬はすべて使用してもよい
  • RBTはテノホビルアラフェナミド(TAF)の血中濃度を下げる恐れが理論的に考えられるため,テノホビルジソプロキシル(TDF)のほうが望ましい.
  • ビクテグラビル,ドラビリン,Cabotegravir/リルピビリン(筋注/経口),エルビテグラビル/コビシスタット,Efavirenz 400mg,Etravirine,Fostemsavir,Lenacapavir(皮下注/経口),マラビロク,ネビラピン,プロテアーゼ阻害薬,ラルテグラビル(1日1回),リルピビリン(経口)との併用は推奨されない.
  • テノホビルアラフェナミド(TAF):RFPはTAF濃度を低下させるため慎重に使用.テノホビルジソプロキシル(TDF)のほうが望ましい
  • その他の抗レトロウイルス薬はすべて使用してもよい
  • 薬物相互作用があるため,使いにくい
  • エファビレンツまたはヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(TAFは慎重に)とは併用してもよいかもしれない;他の抗ウイルス薬との併用は避ける.
  • 潜在性結核感染治療としてINH併用の週1回3ヵ月処方(3HP)を使用する場合には,Efavirenz,ラルテグラビル,またはドルテグラビル1日1回と併用することもある.
  • 活動性結核のあるHIV陽性患者の間欠的治療には推奨されない.
:最初の2ヵ月の集中的治療の段階でPZAが含まれていれば,全治療期間は通常6ヵ月.治療開始から2カ月経っても培養陽性が続くような反応が遅い患者(特に空洞性病変がある例)では,治療期間を合計9カ月まで延長する.
間欠的治療:耐性発現の可能性があるため,RBTまたはRFP週1回または2回投与は推奨されない.部分的間欠的治療を行ってもよい:1日1回(週5~7回)・2カ月,その後週3回・6カ月で治療完了.

第二選択

  • 耐性結核については下記参照:

コメント

  • 抗レトロウイルス治療(ART)をいつ開始するか
  • 肺結核患者でCD4数<50/mm3ならば,2週間以内にARTを開始する.免疫再構築症候群(IRIS)のリスクは2倍に増大するが,生存率は改善する(Ann Intern Med 163: 32, 2015).
  • CD4数>50/mm3の肺結核患者では,早期治療による生存率改善の効果は示されていない(Ann Intern Med 163: 32, 2015).中等症~重症の結核患者では,結核治療の2~8週間以内にARTを開始する.
  • 中枢神経系結核患者では,早期治療は生存率改善に関連せず,ARTは結核治療開始後2カ月まで待つほうがよい.デキサメタゾン補充治療を行う必要がある.
  • 免疫再構築症候群(IRIS)
  • IRISはARTや患者の免疫反応の再構築によって突然引き起こされる,Mycobacteriumその他の病原体に対する異常な炎症反応である.
  • HIV/結核同時感染患者がARTを開始した場合の発症率は20~50%.ART開始後2~4週で発症するが,治療中どの時点でも起こる可能性がある.
  • リスク因子は,結核治療後6週以内のART開始,播種性/肺外病変,CD4数<50/mm3,ウイルス量の急激な低下,CD4数の急激な上昇.
  • 明確な原因がない発熱,リンパ節腫脹や膿瘍の悪化,他の結核病変の悪化が認められる患者では結核性のIRISを疑う.
  • 重症度に基づいて治療を行うが,制吐薬,非ステロイド性抗炎症薬,コルチコステロイドによる治療を含む(たとえば,経口Prednisone 1.5mg/kg/日・2週,その後0.75mg/kg/日・2週[AIDS 24: 2381, 2010]).
  • IRISの発症リスクが高い患者(CD4<100/mm3)では,抗レトロウイルス治療を開始する際に,IRISの発症を減らすために先制的にPrednisone 40mg1日1回2週間投与し,その後20mgを1日1回2週間投与することを考慮する(N Engl J Med 379: 1915, 2018).
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2026/06/15