日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

結核-HIV陽性/AIDS患者  (2024/05/07 更新)


臨床状況

  • HIV/AIDS患者のM. tuberculosisに対する治療.
  • HIV陽性の肺結核患者の60~70%は肺外病変を有する.
  • 結核患者での免疫再構築症候群(IRIS)に関するコメントを参照.

病原体

  • M. tuberculosis

第一選択

注:RFPまたはRBTと抗レトロウイルス治療で用いられる薬剤との薬物相互作用をつねにチェックすること
HIV感染のない薬剤感受性結核で用いられる治療処方は,以下のような変更を加えればHIV感染患者でも推奨される(最新のCDCガイドラインを参照)
  • INH:変更なし.おそらくはすべての抗レトロウイルス薬と併用可能
  • PZA:変更なし.おそらくはすべての抗レトロウイルス薬と併用可能
  • EB:変更なし.おそらくはすべての抗レトロウイルス薬と併用可能
  • プロテアーゼ阻害薬,ドラビリン,エトラビリン,リルピビリン,ビクテグラビル,Cabotegravir,またはエルビテグラビル/コビシスタットとの併用は推奨されない
  • テノホビルアラフェナミド(TAF):RFPはTAF濃度を低下させるため推奨されない.テノホビルジソプロキシル(TDF)は使用してもよい.
  • その他の抗レトロウイルス薬はすべて併用使用可能
  • 推奨されない:プロテアーゼ阻害薬+コビシスタット,テノホビルアラフェナミド,リルピビリン(筋注),ビクテグラビル,Cabotegravir,エルビテグラビル/コビシスタットを含む処方
  • 5mg/kg用量(通常用量300mg:ドルテグラビル[300mg1日2回まで増量],ドラビリン[100mg1日2回まで増量],ラルテグラビルまたはリルピビリン[50mgまで増量,経口のみ)
  • 150mg1日1回投与:プロテアーゼ阻害薬+リトナビル
  • 150~600mg用量:エファビレンツ
  • 薬物相互作用があるため,使いにくい
  • エファビレンツまたはTDF(TAFではない)とは併用してもよいかもしれない;他の抗ウイルス薬との併用は避ける.
  • 活動性結核のあるHIV陽性患者の間欠的治療には推奨されない.
  • 注:最初の2ヵ月の集中的治療の段階でPZAが含まれていれば,全治療期間は通常6ヵ月.治療開始から2カ月経っても培養陽性が続くような反応が遅い患者(特に空洞性病変がある例)では,治療期間を合計9カ月まで延長する.
  • 間欠的治療:耐性発現の可能性があるため,RBTまたはRFP週1回または2回投与は推奨されない.部分的間欠的治療を行ってもよい:1日1回(週5~7回)・2カ月,その後週3回・6カ月で治療完了.

第二選択

  • 耐性結核

コメント

  • 抗レトロウイルス治療(ART)をいつ開始するか
  • 肺結核患者でCD4数<50/mm3ならば,2週間以内にARTを開始する.免疫再構築症候群(IRIS)のリスクは2倍に増大するが,生存率は改善する(Ann Intern Med 163: 32, 2015).
  • CD4数>50/mm3の肺結核患者では,早期治療による生存率改善の効果は示されていない(Ann Intern Med 163: 32, 2015).中等症~重症の結核患者では,結核治療の2~4週間以内にARTを開始する.重症度の低い患者では8~12週以内に開始する.
  • 中枢神経系結核患者では,早期治療は生存率改善に関連せず,ARTは結核治療開始後2カ月まで待つほうがよい.デキサメタゾン補充治療を行う必要がある.
  • 免疫再構築症候群(IRIS)
  • IRISはARTや患者の免疫反応の再構築によって突然引き起こされる,Mycobacteriumその他の病原体に対する異常な炎症反応である.
  • HIV/結核同時感染患者がARTを開始した場合の発症率は20~50%.ART開始後2~4週で発症するが,治療中どの時点でも起こる可能性がある.
  • リスク因子は,結核治療後6週以内のART開始,播種性/肺外病変,CD4数<50/mm3,ウイルス量の急激な低下,CD4数の急激な上昇.
  • 明確な原因がない発熱,リンパ節腫脹や膿瘍の悪化,他の結核病変の悪化が認められる患者では結核性のIRISを疑う.
  • 重症度に基づいて治療を行うが,制吐薬,非ステロイド性抗炎症薬,コルチコステロイドによる治療を含む(たとえば,経口Prednisone 1.5mg/kg/日・2週,その後0.75mg/kg/日・2週[AIDS 24: 2381, 2010]).
  • CD4数<100/mm3の患者を対象としたランダム化プラセボ比較試験で,Prednisone 40mg1日1回・2週,その後20mg1日1回・2週の予防的投与は,IRISの発症率をプラセボ群46.7%に対してPrednisone群32.5%に低下させた(N Engl J Med 379: 1915, 2018).
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2024/05/03