日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

毒素性ショック症候群(TSS),Streptococcusによる  (2024/09/17 更新)


臨床状況

  • Streptococcus属による侵襲性疾患で,毒素性ショック症候群(TSS)に進展した患者
  • 一部のStreptococcus属は毒素産生であり,毒素性ショック症候群毒素(TSST)遺伝子をもつ.
  • Streptococcusの分離(通常はA群),血圧低下,および多臓器不全(以下の2つ以上に該当する場合)
  • 悪心/嘔吐,下痢,腎障害,凝固異常,肝臓傷害,ARDS,全身性発疹,軟部組織感染症の病巣:JAMA 269: 390, 1993
  • Streptococcus属による侵襲性疾患に関連:丹毒,壊死性筋膜炎,水痘感染におけるStreptococcus二次感染
  • Streptococcus属によるTSSは,以下の感染の合併症としても起こりうる.
  • S. agalactiae(B群)
  • S. dysgalactiae(C,G群)

病原体

第一選択

  • 壊死性筋膜炎の合併が疑われる所見があれば,ただちに外科的デブリドマンを行う.
  • 経験的治療(臨床的診断および/またはStreptococcusが同定されたが,in vitroの抗菌薬感受性検査結果が出ていない場合)
  • PCG 2400万単位/日分割静注とCLDM 900mg静注8時間ごとの併用で,毒素産生の中断を図る.
  • ペニシリンアレルギーがあれば,CLDMVCM
  • さらに,IVIGも開始する:初日1g/kg,その後0.5g/kg・2および3日目(コメント参照)
  • 特異的治療(Streptococcusが同定され,in vitroの感受性検査結果が報告された場合):
  • CLDM感受性の場合は,ペニシリンとともにCLDM 5~7日の投与を続ける.
  • CLDM耐性の場合は,Streptococcusの毒素産生阻害および治療のためにLZD 600mg静注1日2回またはTZD 200mg静注1日1回を用いてもよい.
  • (過去または現在のペニシリン治療中に)ペニシリンアレルギーによる発疹があり,StreptococcusCLDM感受性の場合は,CLDM単剤治療を継続してもよい.

第二選択

  • 経験的治療(Streptococcusが同定されたが,in vitroの抗菌薬感受性検査結果が出ていない場合)
  • CTRX 2g静注24時間ごと+CLDM 900mg静注8時間ごと
  • さらに,IVIGも開始する:初日1g/kg,その後0.5g/kg・2および3日目(コメント参照)

抗微生物薬適正使用

  • 治療期間は個々の患者ごとに異なる:菌血症を合併した場合は最低14日

コメント

  • TSST誘発性紅皮症は,7~14日で皮膚剥奪に進展することがある.
  • CLDM使用が死亡率を抑制することが示唆された.
  • 大規模観察研究では,補助的CLDMはA群β溶血性Streptococcusによる感染において,生存率改善に結びついていたが,非A群β溶血性Streptococcus感染では有用性は示されなかった(Lancet Infect Dis 21: 697, 2021).
  • IVIGにより死亡率はさらに抑制される可能性がある.IVIG使用は,CLDM治療を受けた患者でのIVIG補助的使用のメタアナリシスにより支持されている;ランダム化試験1件と非ランダム化試験4件(Clin Infect Dis 67: 1434, 2018).
  • 壊死性筋膜炎の患者では外科的処置が必要.死亡率は,早期治療を実施しても筋膜炎で30~50%,筋炎では80%:Clin Infect Dis 14: 2, 1992
  • PCGは劇症型のS. pyogenes感染治療には無効の可能性がある.その理由についての議論は,J Infect Dis 167: 1401, 1993を参照.
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2024/09/17