日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

毒素性ショック症候群(TSS),Staphylococcus属による  (2023/10/24 更新)


臨床状況

  • 毒素産生S. aureusがコロニー形成または局所的に侵襲した患者での毒素性ショック(TSS).
  • 膣(タンポンに関連),手術・外傷による創傷,子宮内膜,熱傷を含む.
  • 皮膚,肺その他の部位での局所性Staphylococcusによる壊死性膿瘍に関連して起こることがある.
  • Streptococcus属によるTSSとは異なり,コロニー形成した毒素産生性S. aureusによる場合は明らかな感染徴候がみられるとは限らない.
  • TSSの定義:
  • 発熱と血圧低下,紅皮症(1週間以降に落屑する),多系統外傷のエビデンスを伴う.
  • 悪心/嘔吐,下痢,腎不全,ARDS,血小板減少症,
  • さらにしばしば低カルシウム血症がみられる(機序は不明).

病原体

第一選択

  • 毒素が原因の毛細管漏出に対しては,積極的な静注補液が必要である.
  • コロニー形成の原因となる異物を探して取り除くこと:たとえば生理用タンポン,手術用パック
  • MSSA:(NafcillinまたはOxacillin 2g静注4時間ごと)+CLDM 900mg静注8時間ごと+静注免疫グロブリン(IVIG) 1g/kg 1日目,その後0.5g/kg 2日目,3日目(補液および昇圧薬に反応しない患者に対し)
  • MRSA:VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする)+CLDM 900mg静注8時間ごと
  • MSSAでもMRSAでも,補液および昇圧薬に反応しない患者に対しては,IVIG 1g/kg 1日目,その後0.5g/kg 2日目,3日目の追加を考慮する.

第二選択

  • MSSA:CEZ 1~2g静注8時間ごと+CLDM 900mg静注8時間ごと
  • 補液および昇圧薬に反応しない患者に対しては,IVIG 1g/kg 1日目,その後0.5g/kg 2日目,3日目の追加を考慮してもよい
  • MRSA:VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする)またはDAP 6mg/kg静注24時間ごと+CLDM 900mg静注8時間ごと
  • 補液および昇圧薬に反応しない患者に対しては,IVIG 1g/kg 1日目,その後0.5g/kg 2日目,3日目の追加を考慮してもよい
  • CLDMが使用できない場合は,毒素産生を抑えるために替わりにLZDを用いてもよい

コメント

  • IVIGのS. aureus TSS毒素に対する中和能は,S. pyogenes TSS毒素に対する中和能よりも弱い:Clin Infect Dis 38: 836, 2004.IVIGの有効性は証明されていない.
  • TSS毒素の産生を抑制するため補助的にCLDMが用いられる.
  • CLDM,LZD,TZDはin vitroで毒素産生を抑制しうる.
  • CLDMとの併用治療の臨床的有効性を支持するデータは,質の良くない比較臨床試験と症例報告に限られる.
  • S. aureusによる壊死性肺炎患者に関するレトロスペクティブなレビューでは,VCM+CLCMまたはLZDで治療されたMRSA患者は,入院期間が短く再発率が低かった.
  • 質の高い比較臨床試験はないが,ガイドラインではS. aureusによるTSS患者において,標準治療へのCLDMの追加を「考慮すること」が支持されている.
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2023/10/23