日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

移植患者-アスペルギルス症の予防  (2023/1/31 更新)
肺,心肺,AML,MDS,HCT,GVHD


臨床状況

  • 移植片対宿主病(GVHD)を起こした同種異系造血細胞移植(HCT)のレシピエント
  • 肺または心肺移植のレシピエント

病原体

  • Aspergillus fumigatus が最も多いが,他の種も疾患を引き起こすことがある

第一選択

AMLおよび好中球減少症を伴うMDSの患者,またはGVHDを起こした同種異系HCTレシピエント
  • PSCZ(注:徐放錠/静注と懸濁液で用量が異なり,徐放錠のほうが良好な血中濃度が得られる)
  • 徐放錠 初日300mg 1日2回,その後300mg 1日2回,または
  • 懸濁液200mg 1日4回,その後病状が安定したら400mg 1日2回,または
  • 静注 初日300mg 90分以上かけて・1日2回,その後300mg 1日1回
肺または心肺移植
  • AMPH-Bエアゾール製剤†6mg 8時間ごと(または25mg/日),または
  • L-AMBエアゾール製剤†25mg/日,または
  • VRCZ 200mg経口1日2回,または
  • PSCZ(用量は上記参照)
  • ITCZ 200mg経口1日2回
  • AMPH-Bのエアゾール製剤†および/または糸状菌に活性のある経口アゾール薬が使われているが,至適処方は確立されていない(Clin Transplant 33: e13544, 2019

(†:日本にない剤形)

第二選択

AML,好中球減少症を伴うMDSの患者,GVHDを起こした同種異系HCTレシピエント
  • AMPH-Bエアゾール製剤†12.5mg連続2日/週
  • CPFG 70mg静注1回,その後50mg静注1日1回(MCFGAnidulafunginはおそらく同様に有効)は,FLCZよりも有効と考えられる

(†:日本にない剤形)

コメント

AML,好中球減少症を伴うMDSの患者,GVHDを起こした同種異系HCTレシピエント
  • VRCZは,HCTを受けた患者の生着前の時期では,FLCZに比べて侵襲性真菌感染を減少させる傾向を示した(Blood 116: 5111, 2010).
  • AMPH-Bエアゾール製剤†はHCTレシピエントにおける侵襲性アスペルギルス発症率を低下させた(Clin Infect Dis 46: 1401, 2008).
  • CPFGの予防投与はFLCZに比べ,好中球減少状態にあるHCTレシピエントのAspergillus感染を有意に減少させた(JAMA 322: 1673, 2019).MCFG,Anidulafunginも同様の活性を持つと考えられる.
  • がん患者における真菌感染予防に関する詳細な議論は,National Comprehensive Cancer Network Guidelines on Prevention and Treatment of Cancer-Related Infections, 2018で見られる.
肺または心肺移植のレシピエント
  • VRCZ 200mg1日2回による一律の予防は,Aspergillus感染予防という点で,ITCZ 200mg+AMPH-Bエアゾール製剤†による標的予防より有効である(Am J Transplant 6: 3008, 2006).
  • 侵襲性真菌感染の発症率は,ITCZ溶液200mg1日2回・3カ月投与のほうが,VRCZ 200mg1日2回・3カ月+AMPH-Bエアゾール製剤†10mg1日2回2週間投与よりもわずかに高かった(4/32対1/35)(Am J Transplant 9: 2085,2009).
  • ほとんどの施設(58.6%)では移植後6カ月以内に肺移植レシピエントに一律の予防を行っており,その97.1%は Aspergillus属を標的としていた:VRCZ単剤およびAMPH-Bエアゾール製剤†の併用が第一選択治療として多く用いられていた(Am J Transplant 11: 361, 2011).
  • VRCZ長期使用に伴う,扁平上皮癌などのさまざまなリスクについての理解が進んでいる(Am J Transplant 18: 5, 2018
  • いずれの患者群においても,高リスク期間(好中球減少を繰り返す,免疫抑制強化)は二次予防を考慮すること.

(†:日本にない剤形)

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2023/01/26