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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
移植患者-アスペルギルス症の予防
(
2023/1/31 更新
)
肺,心肺,AML,MDS,HCT,GVHD
臨床状況
急性骨髄性白血病(AML)および好中球減少症を伴う骨髄異形成症候群(MDS)(
N Engl J Med 356: 348, 2007
;
N Engl J Med 356: 335, 2007
).
移植片対宿主病(GVHD)を起こした同種異系造血細胞移植(HCT)のレシピエント
肺または心肺移植のレシピエント
病原体
Aspergillus fumigatus
が最も多いが,他の種も疾患を引き起こすことがある
第一選択
AMLおよび好中球減少症を伴うMDSの患者,またはGVHDを起こした同種異系HCTレシピエント
PSCZ
(注:徐放錠/静注と懸濁液で用量が異なり,徐放錠のほうが良好な血中濃度が得られる)
徐放錠 初日300mg 1日2回,その後300mg 1日2回,または
懸濁液200mg 1日4回,その後病状が安定したら400mg 1日2回,または
静注 初日300mg 90分以上かけて・1日2回,その後300mg 1日1回
肺または心肺移植
AMPH-B
エアゾール製剤†6mg 8時間ごと(または25mg/日),または
L-AMB
エアゾール製剤†25mg/日,または
VRCZ
200mg経口1日2回,または
PSCZ
(用量は上記参照)
ITCZ
200mg経口1日2回
AMPH-B
のエアゾール製剤†および/または糸状菌に活性のある経口アゾール薬が使われているが,至適処方は確立されていない(
Clin Transplant 33: e13544, 2019
)
(†:日本にない剤形)
第二選択
AML,好中球減少症を伴うMDSの患者,GVHDを起こした同種異系HCTレシピエント
VRCZ
200mg1日2回
ITCZ
200mg1日2回
AMPH-B
エアゾール製剤†12.5mg連続2日/週
CPFG
70mg静注1回,その後50mg静注1日1回(
MCFG
と
Anidulafungin
はおそらく同様に有効)は,FLCZよりも有効と考えられる
(†:日本にない剤形)
コメント
AML,好中球減少症を伴うMDSの患者,GVHDを起こした同種異系HCTレシピエント
VRCZは,HCTを受けた患者の生着前の時期では,FLCZに比べて侵襲性真菌感染を減少させる傾向を示した(
Blood 116: 5111, 2010
).
ITCZはHCT患者の侵襲性真菌感染予防においてFLCZよりも有効であるが(
Ann Intern Med 138: 705, 2003
),
PSCZ
には劣る(
N Engl J Med 356: 348, 2007
).
AMPH-Bエアゾール製剤†はHCTレシピエントにおける侵襲性アスペルギルス発症率を低下させた(
Clin Infect Dis 46: 1401, 2008
).
CPFGの予防投与はFLCZに比べ,好中球減少状態にあるHCTレシピエントの
Aspergillus
感染を有意に減少させた(
JAMA 322: 1673, 2019
).MCFG,Anidulafunginも同様の活性を持つと考えられる.
がん患者における真菌感染予防に関する詳細な議論は,National Comprehensive Cancer Network Guidelines on Prevention and Treatment of Cancer-Related Infections, 2018で見られる.
肺または心肺移植のレシピエント
VRCZ 200mg1日2回による一律の予防は,
Aspergillus
感染予防という点で,ITCZ 200mg+AMPH-Bエアゾール製剤†による標的予防より有効である(
Am J Transplant 6: 3008, 2006
).
侵襲性真菌感染の発症率は,ITCZ溶液200mg1日2回・3カ月投与のほうが,VRCZ 200mg1日2回・3カ月+AMPH-Bエアゾール製剤†10mg1日2回2週間投与よりもわずかに高かった(4/32対1/35)(
Am J Transplant 9: 2085,2009
).
ほとんどの施設(58.6%)では移植後6カ月以内に肺移植レシピエントに一律の予防を行っており,その97.1%は
Aspergillus
属を標的としていた:VRCZ単剤およびAMPH-Bエアゾール製剤†の併用が第一選択治療として多く用いられていた(
Am J Transplant 11: 361, 2011
).
VRCZ長期使用に伴う,扁平上皮癌などのさまざまなリスクについての理解が進んでいる(
Am J Transplant 18: 5, 2018
)
肺移植レシピエントにおける抗真菌予防の文献レビューは
Ann Pharmacother 44: 546, 2010
でみられる.
いずれの患者群においても,高リスク期間(好中球減少を繰り返す,免疫抑制強化)は二次予防を考慮すること.
IDSAガイドライン:
Clin Infect Dis 63: e1, 2016
.
(†:日本にない剤形)
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2023/01/26