• カスポファンギンはβ-(1,3)-D-glucan合成を阻害するエキノキャンディンである．
  
• Candida （C. glabrata およびC. krusei など，他の抗真菌薬に耐性のものも含む）に対して殺菌的で，Aspergillus にも活性がある．
  
• Cryptococcus，Trichosporon，糸状菌（Aspergillus を除く）には活性がない．
  
• Candida parapsilosis および C. guilliermondii は全てのエキノキャンディン系に対して他の属に比べ感受性が低いが，臨床反応は一般的に十分である．
  
• カスポファンギンの承認された適応：発熱性好中球減少患者の経験的治療；カンジダ血症，Candida による腹腔内膿瘍，腹膜炎，胸腔内感染；カンジダ食道炎；他の治療に難治性あるいは忍容性のない患者での侵襲性アスペルギルス症の治療．
  
• 脳脊髄液または尿への移行はない．
  
• ECMOについては，その他の用量調整を参照．
  

• 体重およびクレアチニンクリアランス（CrCl）推定値の計算法
  
• CAPD: 持続的携行型腹膜透析， CRRT: 持続的腎代替療法，SLED: 長時間低効率血液透析
  

• 肝障害時の用量調整
  

• 肝で代謝される．
  
• 製薬会社の推奨によれば，中等症の肝障害では35mg静注24時間ごとまで減量する．
  
• 最近のPK研究によれば，中等症～重症肝障害のある肝硬変患者でもクリアランスの減少はわずかであり，用量調整は推奨されない（J Antimicrob Chemother 73: 2493, 2018）．
  

• 肥満
  

• 母集団薬物動態モデルによれば，カスポファンギン治療を受けている重症患者のうち，体重≧120kgでは全員，中程度の体重（78kg）では80％以上，低体重（＜50kg）では約25％の患者で，標準的な固定用量では薬物曝露が不十分となりうることが示唆された．体重に基づく用量（初回2mg/kg，その後1.25mg/kg 24時間ごと）がより適切かもしれない（Antimicrob Agents Chemother 64: e00905, 2020）．
  

• ECMO
  

• 初期の（ただし相反する）データでは，より高用量がおそらく必要となることを示唆している．しかし，重症患者および肺移植患者の研究からのより最近のデータでは，カスポファンギンの薬物動態に対してECMOの重大な影響はないことが示されており，したがって用量調整は必要ない（Antimicrob Agents Chemother 64: e00687, 2020；Antimicrob Agents Chemother 64: e00345, 2020）．
  

副作用

• 非常に毒性が少ない．
  
• 最も多い副作用：静注部位の痒み，静注に伴う頭痛，発熱，悪寒，嘔吐，下痢．
  
• 可逆性の血小板減少の報告あり（Pharmacotherapy 24: 1408, 2004）．
  

妊娠時のリスク

• FDAリスク区分（旧）：C
  
• 授乳中の使用：おそらくは安全だが，モニターが必要．ただしデータはない；可能なら避ける
  

• Candida albicans
  
• Candida dubliniensis
  
• Candida glabrata
  
• Candida tropicalis
  
• Candida krusei
  
• Aspergillus 属
  

1. 注記のない場合は成人用製剤
   
2. SD：単回投与後，SS：複数回投与後の定常状態
   
3. V/F：（Vd）÷（経口生物学的利用能），Vss：定常状態におけるVd，Vss/F：（定常状態におけるVd）÷（経口生物学的利用能）
   
4. CrCl＞80 mL/分と想定
   
5. （胆汁中の最高濃度）÷（血清中の最高濃度）×100
   
6. 炎症時における脳脊髄液濃度
   
7. 薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定．脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
   
8. AUC：血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve．0～inf＝AUC0-inf，0～ｘ時間＝AUC0-x