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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
ニューモシスチス肺炎(PJP)-成人
(
2022/11/1 更新
)
成人の治療と予防
臨床状況
ニューモシスチス肺炎(PJP)は免疫不全患者,特にHIV/AIDS患者において致死的になるおそれがある.
リスクが高い患者
HIV/AIDS患者でCD4数<200/μL
固形臓器および造血幹細胞移植を受けた患者.症例対照研究では,移植後のPJPは,活動性CMV,同種移植片拒絶,予防の中止と関連していた(
Clin Infect Dis 68: 1320, 2019
).
抗がん化学療法を受けた患者,特に高用量ステロイド治療を受けた患者(Prednisone≧20mg/日 または等価用量を1カ月以上)
Prednisone≧20mg/日(あるいは等価用量)を必要とする一部のリウマチ疾患患者
文献:リスク因子のある非HIV患者(
Am J Med 127: 1242.e11, 2014
).
特にHIV/AIDS患者では,数日~数週間症状が続いて亜急性感染となることがある.
早期予防/長期抑制の適応
CD4数<200/μLのHIV/AIDS患者
Prednisone≧20mg/日等価用量を1カ月以上にわたって服用しているすべての患者
アレムツズマブ(CLL治療のためのモノクローナル抗体),テモゾロミド(星状神経腫治療のためのアルキル化薬)を使用している患者
免疫抑制中の造血幹細胞・固形臓器移植レシピエント
フルダラビン(血液学的悪性疾患治療に用いられるプリンアナログ)を投与されている患者
Prednisone+シクロホスファミドでの治療を受けているヴェゲナー肉芽腫患者
診断:喀痰PCR.それが利用できなければ,喀痰のDFA.
β-Dグルカン
Pneumocystis
その他の真菌の細胞壁多糖.
色原性定量的免疫測定法(chromogenic quantitative immunoassay)により血清中から検出可能.
プール解析での感度/特異度は95%/86%.陰性適中率95%以上:
Clin Microbiol Infect 19: 39, 2013
.
妥当な臨床症状があるか確認する必要がある.偽陽性が多い:
J Clin Microbiol 51: 3478, 2013
.
HIV患者における抗レトロウイルス治療との併用
NIH AIDSガイドラインでは,PCP治療開始後2週間以内に抗レトロウイルス治療を開始することが推奨されている(
clinicalinfoHIVガイドライン
参照).
早期治療によりAIDS進行のリスクが抑制され,死亡率は約1/2に低下する.副作用や免疫再構築症候群(IRIS)リスクは増大しない.
病原体
Pneumocystis jirovecii
第一選択
成人の治療
経口治療が可能な場合
ST
4錠経口8時間ごと・21日+抗PCP治療を開始する15~30分前にPrednisone投与(40mg経口12時間ごと・5日,その後40mg24時間ごと・5日,その後20mg24時間ごと・11日)
ジアフェニルスルホン
100mg経口24時間ごと+
Trimethoprim
5mg/kg経口8時間ごと・21日+Prednisone上記同様
経口治療が不可能な場合
ST
(トリメトプリムとして)15~20mg/kg/日静注・6~8時間ごとに分割・21日(吸収可能となったら,経口治療に切り替え可能)+抗PCP治療を開始する15~30分前にPrednisone投与(40mg経口12時間ごと・5日,その後40mg24時間ごと・5日,その後20mg24時間ごと・11日)
成人の予防
早期予防/PJP治療後の抑制
ST
2錠経口24時間ごとまたは週3回,または
ST
1錠経口24時間ごと
CD4数>200が3カ月間続くまで予防を続ける
第二選択
成人の治療
重症でなく経口治療可能
(
CLDM
300~450mg経口6時間ごと+
プリマキン
塩基15~30mg経口24時間ごと)・21日
アトバコン
経口懸濁液,750mg経口1日2回食事とともに・21日
上記すべてに追加して,抗PCP治療を開始する15~30分前にPrednisone投与(40mg経口12時間ごと・5日,その後40mg24時間ごと・5日,その後20mg24時間ごと・11日)
その後CD4数>200/μLとなるまで長期の抑制治療
重症で経口治療不可能
Prednison(第一選択参照),その後
(
CLDM
600mg静注8時間ごと+
プリマキン
塩基15~30mg経口24時間ごと)・21日
ペンタミジン
4mg/kg/日静注・21日
その後,CD4数>200/μLが3カ月以上続くまで長期の抑制治療
成人の予防
ペンタミジン
300mgを無菌水6mLに溶解し4週に1回吸入
(
ジアフェニルスルホン
200mg経口+
Pyrimethamine
75mg経口+ホリナートカルシウム 25mg経口)週1回(トキソプラズマ症予防にも有効)(
J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retrovirol 15: 104, 1997
).
アトバコン
1500mg経口24時間ごと・食事とともに
治療失敗:7日後も臨床的反応がみられない場合と定義される
治療失敗の場合の選択肢:(
CLDM
+
プリマキン
)または
ペンタミジン
静注(
J Acquir Immune Defic Syndr 48: 63, 2008
)±
CPFG
(70mg静注1回,その後50mg静注1日1回).
コメント
PJP治療中にSTに関連する精神症状の報告:
J Antimicrob Chemother 66: 1117, 2011
.
CPFGは動物モデルで有効(
Clin Infect Dis 36: 1445, 2003
)で,散発的な臨床反応の報告あり(
Transplantation 84: 685, 2007
).
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2022/10/27