日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎-グラム陰性桿菌(E. coliP. aeruginosa)  (2025/12/16 更新)
E.coliP. aeruginosaによる髄膜炎,特異的治療


臨床状況

  • Coliforms,非発酵性グラム陰性細菌,および治療困難な耐性グラム陰性桿菌による髄膜炎に対する特異的治療.
  • 頭部外傷,脳神経外科手術,脳脊髄液シャントまたは他の脳神経外科デバイスのために起こる髄膜炎の,最大13%までがグラム陰性桿菌によるものである.
  • 隣接感染の直接的拡大の結果引き起こされうる:たとえば,乳様突起炎,菌血症罹患中の直接的播種.
  • 死亡率は40~80%
  • グラム陰性菌による髄膜炎は,免疫抑制患者では播種性Strongyloides stercoralis感染の合併症である場合がある.
  • 下記の治療推奨は,脳脊髄液培養が陽性でin vitroでの感受性検査結果が得られていることを前提とする.
  • 抗菌薬の選択は,以下に基づく:
  • in vitro感受性検査の結果
  • 薬剤の脳脊髄液中濃度がin vitroでのMICの10倍以上となりうるか
  • 脳脊髄液中の補体およびオプソニン活性がないことによる殺菌活性の必要性
  • 薬物アレルギーまたは毒性の存在
  • 抗菌薬の脳血液関門通過に影響する因子のリストはコメント参照

病原体

  • E. coli,その他のcoliform
  • 耐性であることが多い治療が難しいグラム陰性桿菌,たとえば:

第一選択

  • 抗菌薬耐性の可能性が低い場合の成人経験的処方
  • CAZ 2g静注8時間ごと,またはCFPM 2g静注8時間ごと
  • ペニシリン,セファロスポリン,カルバペネムに対する耐性が疑われる場合(抗菌薬耐性グラム陰性感染の治療に関する2024年IDSAガイドライン参照)の他の処方
薬剤
成人処方(体重>34kg)
小児処方(体重<34kg)
コメント
CAZ/Abivactam
2.5g静注8時間ごと,2時間以上かけて
50mg/kg静注,2時間以上かけて
望ましい選択肢
CFDC
2g静注6時間ごと,3時間以上かけて注入
60mg/kg/回静注9時間ごと,3時間以上かけて注入
  
AZT
2g静注6時間ごと,3時間以上かけて注入.CAZ/Abivactamと併用する場合には,AZT静注6時間ごと(2時間以上かけて注入)を追加
30mg/kg静注6時間ごと,2時間以上かけて注入,同時にCAZ/Avibactam.AZTの1日総投与量を8時間ごとではなく6時間ごとに分割し2時間以上かけて注入
CAZ/Avibactam+AZTはStenotrophomonasおよびメタロβラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌による髄膜炎に対する望ましい選択肢.臨床的有効性はいくつかの症例報告に基づく.
CTLZ/TAZ
3g静注8時間ごと,1時間以上かけて注入
40mg/kg静注8時間ごと(CTLZ成分に基づく),1時間以上かけて注入
耐性P. aeruginosaによる髄膜炎に対する限界的選択肢
Sulbactam-DurlobactamMEPM
(Sulbactam-Durlobactam 1gずつ,静注,3時間以上かけて6時間ごと)+MEPM 2g静注8時間ごと,3時間以上かけて注入
(Sulbactam-Durlobactam 200mg/kg/日静注4~6時間ごと)+MEPM 40mg/kg静注(3時間以上かえて)8時間ごと
Carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii 髄膜炎に対する

  • 推奨されない:

第二選択

  • ST(トリメトプリム成分による)5mg/kg静注6時間ごと
  • ESBL産生グラム陰性菌による耐性の場合
  • MEPM 2g静注(4時間以上かけて注入)8時間ごと(脳脊髄液への移行の最適化)
  • 分離株がすべてのβラクタム薬に耐性でフルオロキノロンには感受性の場合:
  • CPFX 400mg静注8~12時間ごと(Pseudomonas に対しては8時間ごと)
  • 重症のIgE媒介βラクタムアレルギーの場合:
  • AZT 2g静注6時間ごと
  • 推奨されない:
  • アミノグリコシド(GM,TOB,AMK)

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 通常21日
抗微生物薬適正使用
  • 抗菌薬選択で考慮すべきこと
  • AZT:
  • ESBL,AmpC,KPC,OXA-48様カルバペネマーゼ産生菌により簡単に加水分解されるため,in vitroの感受性を確認する必要がある.
  • 脳脊髄液移行性は良好.
  • ST:
  • 脳脊髄液移行性が良好で,Salmonella, Enterobacter, Citrobacter, Klebsiella属など多くの菌に活性がある.
  • Stenotrophomonas maltophiliaが疑われる場合の第一選択薬
  • Acinetobacter calcoaceticus, Burkhoderia cepacia, Flavobacterium meningosepticumなど,まれではあるがやっかいな菌も感受性があることが多い.

コメント

  • 推奨されない薬剤/治療
  • IPM/CS/REL:移行性のデータがなく,けいれんリスクがある.
  • MEPM/Vaborbactam:移行性のデータがなく,症例報告での効果は一貫していない.
  • デキサメタゾンによる補充治療:使用を正当化する研究はない.
  • 抗菌薬の脳血液関門通過に影響する因子
  • 低分子の親油性薬物は血液脳関門を容易に通過する.
  • アミノグリコシドのような高イオン化薬物は浸透性が低い.
  • タンパク質に高結合する薬物は,結合していない薬物のみが浸透するため,浸透性が低い.
  • 炎症を起こした髄膜は浸透性を高める.
  • 特に臨床反応が不十分な患者では、脳脊髄液の無菌化を確認するために、24~48時間後に腰椎穿刺を繰り返すことを検討する.
  • 治療失敗の指標:適切な治療にもかかわらず脳脊髄液量の血糖値低下が持続し濁っており,培養検査が陽性のままである.
  • 異物が残っている場合には,持続するリスクが増大する.
  • 補助的な髄腔内/脳室内投与
  • 臨床試験はない.データは症例報告,専門家の意見をまとめたもの.サルベージ治療として使用される.
  • けいれんを引き起こすリスクがあるためβラクタム薬は避ける.
  • 病原菌がポリミキシンまたはGMのみに対して感受性のある場合にのみ用いられる.
  • PL-B 2.5mg/kg静注†,2時間以上かけて注入(初期用量),その12時間後,1.5mg/kg静注12時間ごと,1時間以上かけて注入(維持用量)+PL-B 50,000単位/日・10~21日
  • 文献
  • 脳神経手術を受けた新生児でのグラム陰性菌による髄膜炎に対し,コリスチン脳室内投与が奏効したとの報告がある:Pediatr Infect Dis J 37: e79, 2018

(†:日本にない剤形)

ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2026 Life Science Publishing↑ page top
2025/12/16