日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ねこひっかき病  (2024/05/21 更新)
ねこひっかき病(CSD),局所リンパ節炎,Bartonella 感染


臨床状況/診断

臨床状況
  • もっとも多い臨床症状は,免疫正常者がネコ(特に若いノラネコまたは飼いネコ)に接触後,Bartonella henselae によって引き起こされる局所リンパ節炎で,自然治癒する.播種性感染を伴う場合も伴わない場合もある.
  • その他の臨床症状:
  • 播種性ねこひっかき病
  • 肝・膵ねこひっかき病
  • 神経性ねこひっかき病
  • 脳症がもっとも多い
  • 横断性脊髄炎,神経根炎,小脳性運動失調はすべて報告がある
  • 眼科ねこひっかき感染
  • パリノー眼腺症候群
  • 視神経炎,視神経網膜炎
  • 罹患期間を短縮し,合併症リスクを抑えるため,全患者で治療が推奨される.
  • 炎症が起こるリンパ節の分布:
  • 腋窩/上腕骨内側上顆(46%)
  • 頸部(26%)
  • 鼠径部(17%)
  • 化膿性(10%)
  • 播種性疾患は14%の患者に起こる.
診断
  • ネコあるいはネコノミとの接触あり.
  • B. henselaeに対する抗体検査陽性
  • 他の診断検査(まれにしか用いられない):結節からの吸引物のPCRあるいは肉芽腫の生検およびWarthin-Starry鍍銀染色で陽性

病原体

  • Bartonella henselae
  • 増殖が遅く培養困難なグラム陰性桿菌

第一選択

  • 免疫正常患者のリンパ節炎
  • 治療せずとも治癒することが多い
  • 成人:AZM 500mg経口・1回,その後250mg/日経口・4日
  • 小児(体重<45kg):AZM 経口懸濁液†10mg/kg・1回,その後5mg/kg/日・4日
  • AZMに不耐の場合は,抗菌薬を避け対症療法を行う
  • 鎮痛:化膿したリンパ節からの膿性滲出物針吸引による
  • 肝・脾感染または播種性感染
  • 成人,望ましい処方
  • RFP 300mg静注†/経口1日2回+AZM 500mg経口1回,その後250mg/日)・10~14日
  • 他の選択肢:(RFP 300mg静注†/経口1日2回+GM 2mg/kg1回,その後1.5mg/kg8時間ごと)・10~14日
  • 重症または持続性感染に対してはコルチコステロイドの補助療法を考慮すること
  • 神経性および/または眼科(視神経網膜炎)感染:眼科医と協力して治療
  • 成人,望ましい処方:
  • 他の選択肢
  • RFPAZM(上記と同様)・4~6週
  • RFP(上記と同様)+ST 2錠経口1日2回・4~6週
  • 小児(8歳未満):[AZM 初日10mg/kg,その後5mg/kg・4日,またはST(トリメトプリムとして)8mg/kg/日2回に分割]+RFP 10mg/kg12時間ごと(最大600mg/日まで)・4~6週
  • コルチコステロイド補助療法が推奨される.
  • プレドニゾン:1mg/kg/日経口・2週,その後続く4週で斬減.

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • リンパ節炎:in vitroで活性のある他の薬剤
  • CAM 500mg経口1日2回・7~10日
  • RFP 300mg経口1日2回・7~10日.薬物相互作用の確認を忘れないこと
  • ST 2剤経口1日2回・7~10日
  • CPFX 500mg経口1日2回・7~10日

抗微生物薬適正使用

  • 小児における合併症のない腺炎は,通常は治療なしでも治癒するが,AZMでより迅速に治癒することを示した研究が1件ある(Pediatr Infect Dis J 17:447,1998).治療に関しては有用性と短所について共同意思決定を行うことが合理的である.

コメント

  • 抗菌薬の最初の数回投与後にJarisch-Herxheimer反応が起こることがある.
  • RFPを使用する場合には,忘れずに薬物相互作用を確認すること.
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2024/05/21