日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

膿胸-乳児/小児(<5歳)  (2026/07/21 更新)


臨床状況

  • 乳児および小児(年齢<5歳)の肺炎随伴膿胸.
  • 肺炎および肺炎随伴性胸水+胸水培養陽性あるいは胸水中の白血球>50,000μL.
  • 定義:
  • 少量の胸水:側臥位X線写真で<10mm,または片側胸郭の1/4未満が不透明化している場合
  • 中等度の胸水:側臥位X線写真で10mm≧の胸水が認められるが,片側胸郭の不透明化は<50%
  • 大量の胸水:片側胸郭の>50%が不透明化している場合
  • 肺炎随伴性胸水:細菌性肺炎に伴う膿性胸水
  • 胸水の状態をより詳細に評価するために,高度な画像診断を行う.初期評価では,放射線被曝量が少ないため,CTよりも超音波検査が推奨される.

病原体

  • S. pneumoniae
  • S. aureus(MSSAおよびMRSA)
  • S. pyogenes
  • H. influenzae(ワクチン接種者ではまれ)

第一選択

  • 少量の胸水なら経過観察で十分なことがある.
  • 中等度の胸水で呼吸器症状を伴う場合,大量の胸水あるいは膿胸が確定している場合:カテーテルまたは胸腔チューブによるドレナージ(±フィブリン溶解薬-下記参照)
  • 胸腔鏡下手術(VATS)は,一般的に広範囲の嚢胞形成,またはチューブドレナージやフィブリン溶解薬治療に抵抗性の疾患に対して行われる.
  • CTX 100mg/kg静注24時間ごと,またはCTRX 100mg/kg静注8時間ごと.
  • MRSAなら,VCM 60~80mg/kg/日静注3~4回に分割(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値10~15μg/mLをめざす[AUCを目標にするほうが望ましい])±(CTXまたはCTRX)(H. influenzaeが疑われる場合).PCRを用いた研究で,培養陰性の膿胸患者ではMRSAはまれであることが示された:Pediatr Infect Dis J 30: 289, 2011

治療期間/抗微生物薬適正使用

治療期間
  • 至適投与期間は明らかでない.一部の専門家では滲出液を排出して解熱後7~10日,別の専門家ではドレナージ後4週.
抗微生物薬適正使用
  • 病原体が明らかになったら,適切な抗菌薬を選択する.
  • 鼻腔検体のMRSA PCR陰性は,MRSA除外の陰性予測値が非常に高いので,MRSA治療を中止してもよい.
  • 最初の反応が得られた後に高用量経口治療を完結させることは,外来での長期の静注治療と同等に有効(Hosp Pediatr 5: 605, 2015).

コメント

  • CTRXは高ビリルビン血症のない満期産児には適切.
  • 注:腎機能が正常な乳児および年長の小児では,従来のVCM 45~60mg/kg/日ではしばしば目標AUCに到達しない.ほとんどの非CNS感染ではAUC24 400μg/mLをめざす(Clin Infect Dis 71: 1361, 2020).
  • 新生児で,完全非経口栄養のようなカルシウム含有静注溶液(持続静注を含む)による治療が必要な(または必要と予測される)場合には,CTRXは禁忌である.
  • 診断的胸腔穿刺の適応:
  • 中等症(胸水縁>10mmまたは胸郭の1/4~1/2の混濁),特に呼吸不全がある,あるいは抗菌薬静注治療だけでは病態が悪化する場合
  • 多量の滲出液(混濁が胸郭の>1/2)
  • 胸腔チューブによるドレナージあるいはVATSの適応
  • 膿胸(胸水中の白血球>50,000μLで胸水培養陽性,超音波検査またはCTスキャンで中隔作成を認める)
  • 多量の滲出液
  • 被包化胸水の場合は,胸腔チューブによるドレナージ+フィブリン溶解薬(処方は下記参照),またはVATSが推奨される.
  • 組織プラスミノーゲン(tPA)活性化因子4mg/生食40mLを胸腔チューブを通じて1日1回投与し1時間留置,これを3回.第二選択として0.1mg/kg/生食30mLを1日3回投与し1時間留置,計9回:Clin Infect Dis 2026年3月17日
  • 1件のRCTで,tPA単独とtPA+ウロキナーゼでアウトカムは同一であることが示された:JAMA Pediatr 174: 332, 2020
  • ウロキナーゼ追加の場合:ウロキナーゼ10,000単位を生食10mLに融解(<1歳)あるいは40,000単位を生食40mLに融解(>1歳)し,4時間留置,12時間おきに6回
  • PCRによる研究で,とくにS. pneumoniaeS. aureusによる膿胸では,前治療を行っても培養陽性となることが多いとの知見が示されている(Pediatr Infect Dis J 30: 289, 2011).
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