日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

サイトメガロウイルス-消化器疾患  (2024/05/28 更新)
CMV消化器疾患(大腸炎,食道炎など)


臨床状況

  • サイトメガロウイルス(CMV)による消化器疾患には食道炎,小腸炎,大腸炎があり,重症,未治療のHIV感染およびCD4数<50cells/mLの患者の~5%で起こる(J Infect Dis 166: 1223, 1992).
  • 固形臓器移植(SOT)および造血幹細胞移植(HSCT)レシピエントでも多い.
  • 炎症性腸疾患による腸炎(IBD)の重篤な発作ではCMVによる合併症が起こりうる.
  • 炎症性腸疾患による腸炎の発作が重篤でない場合のCMV診断の意義は不明である.
  • 臨床症状としては,嚥下痛(食道炎),下痢と腹痛(小腸炎,大腸炎)がみられ,発熱および全身症状を伴うことも多い.肺炎や網膜炎など,他の臓器系に活動性のCMV疾患を併発することがある.CMV-概説を参照.

病原体/診断

診断
  • 内視鏡検査でしばしば潰瘍やびらんが認められる.診断は,潰瘍底/縁の生検によりCMVの封入を確認することで確定する(Clin Gastroenterol Hepatol 2: 564, 2004).
  • 血清中CMV PCR検査および/または抗原血症検査でしばしば陽性となる.
病原体
  • サイトメガロウイルス(CMV)

第一選択

  • 治療期間についてはコメント参照.

第二選択

抗微生物薬適正使用

  • 治療期間は個々の患者に応じて決定する.次の条件が満たされるまで治療を続けること:
  • CMV PCRまたは抗原血が検出されなくなる
  • 臨床症状が消失し,かつ
  • 最低3週間の治療(多くの場合3~6週)

コメント

  • どのような場合に二次予防(維持療法)を行うか?
  • SOTレシピエントでは1~3カ月の二次予防(バルガンシクロビル900mg1日1回)を考慮する.ただし,再発の可能性がある患者では,二次予防を行った後でも再発する可能性がある.
  • 最近高用量の免疫抑制治療(抗体によるリンパ球除去)を受けた患者に対しても同様に考慮する.
  • 重症CMV疾患の患者
  • SOTまたはHCTレシピエント,HIV/AIDS患者で,1回以上CMV疾患発症の既往がある場合
  • HIV/AIDS
  • 関連するCMV網膜炎を除外するために散瞳検査が推奨される.
  • 抗レトロウイルス治療(ART)は,HIV患者での長期抑制に重要である.
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2024/05/27