日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

移植患者-CMV感染の予防,固形臓器移植  (2026/02/03 更新)


臨床状況

  • 固形臓器移植レシピエントにおける日和見感染症としてのCMV感染の予防.
  • リスク:CMV IgG陽性ドナー(D+)からの臓器を移植されたCMV IgG陰性レシピエント(R-)およびリンパ球除去抗体療法(サイモグロブリン,ATG,OKT-3,アレムツズマブ)を受けた患者で最もリスクが大きい.
  • 予防方法としては,毎日抗ウイルス薬治療を行う予防投与と,発症前に週1回ウイルス血症の有無を検査・監視し,ウイルス血症が発症したら治療を開始するpre-emptive therapy(先制療法)がある.

病原体

第一選択

  • 固形臓器移植後のCMV感染予防の戦略は,第4回固形臓器移植におけるCMV治療に関する国際コンセンサスガイドライン(Transplantation 109: 1066, 2025)に基づく.
移植臓器
抗体
リスクレベル
推奨
腎臓
D+/R-

バルガンシクロビル6ヵ月またはレテルモビル6ヵ月または先制療法
R+
中等度
バルガンシクロビル3ヵ月または先制療法
膵臓および腎臓/膵臓
D+/R-

バルガンシクロビル3~6ヵ月
R+
中等度
バルガンシクロビル3ヵ月または先制療法
膵島
D+/R-
中等度
バルガンシクロビル3ヵ月
R+
中等度
バルガンシクロビル3ヵ月または先制療法
肝臓
D+/R-

バルガンシクロビル3~6ヵ月または先制療法
R+
中等度
バルガンシクロビル3ヵ月
心臓
D+/R-

バルガンシクロビル3~6ヵ月
R+
中等度
バルガンシクロビル3ヵ月または先制療法

D+/R-

バルガンシクロビル12ヵ月
R+
中等度
バルガンシクロビル6~12ヵ月
小腸
D+/R-

バルガンシクロビル≧6ヵ月
R+

バルガンシクロビル3~6ヵ月

  • 予防処方:
  • レテルモビル480mg静注/経口1日1回(腎移植患者で承認されている)
  • 先制療法:
  • CMV PCRにより週1回モニタリング
  • ウイルス血症が検出されたら,バルガンシクロビル900mg経口1日2回,またはガンシクロビル5mg/kg静注12時間ごとでウイルス血症が消失するまで治療するが,最低2週間は治療を続ける.その後,二次予防に切り替えるか先制療法を再開する.

第二選択

  • 予防投与
  • レテルモビル 480mg静注/経口1日1回:シクロスポリン服用の場合は,240mg/日
  • CMV IVIG,またはIVIG(コメント参照)
  • 先制療法
  • 移植後3~6カ月は,毎週CMVウイルス血症をPCRでモニター.
  • ウイルス血症が起こったら,バルガンシクロビル 900mg経口1日2回またはガンシクロビル 5mg/kg静注12時間ごとで治療開始.最低2週間かつウイルス血症の検査陰性まで治療を続ける.この時点で二次予防に転換するか,pre-emptive therapyを再開する.

(†:日本にない剤形)

コメント

  • 拒絶反応治療のためにリンパ球除去抗体を受けた患者では,予防(または先制治療)を考慮する.
  • 肝移植レシピエントでのバルガンシクロビルによるCMV予防は,ガンシクロビルによる予防と比較して組織侵襲性疾患発症が高率であるため,FDAは承認していない(Am J Transplant 4: 611, 2004).しかし,多くの専門家は第一選択として推奨し,広く用いられている.
  • CMV D-/R-での臓器移植レシピエントはCMV予防投与を必要としないが,CMV陰性かつ白血球除去血液製剤の投与を受ける場合には,予防を考慮する.移植後少なくとも最初の1カ月はHSV/VZVに対する予防投与を考慮する(Clin Transplant 33: e13512, 2019).
  • ガンシクロビル1000mg経口†1日3回は,高リスク患者でのCMV疾患減少に関してはバルガンシクロビル900mg1日1回と同等の効果があるが,予防投与中のウイルス血症発症率は高い(Am J Transplant 4: 611, 2004).
  • CMV免疫グロブリンは,高リスクの肺,心肺,心臓,膵臓移植レシピエントにおける補助予防として考慮しうる.処方:移植後72時間以内および2,4,6,8週後に150mg/kg,その後12週,16週後に100mg/kg.
  • レテルモビルは幹細胞移植後のCMV感染予防についてFDAより承認された.単純ヘルペスウイルス(HSV),帯状疱疹ウイルス(VZV)に対しては活性がないため,HSV/VZV予防が必要な場合は他剤を追加する(N Engl J Med 377: 2433, 2017).
  • 抗ウイルス薬による予防を行った場合,CMV疾患の発症が遅れてみえることがあるため,遅発性CMV疾患につねに注意し,発症したら適切に治療すること.

(†:日本にない剤形)

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