日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

移植患者-CMV感染の予防,固形臓器移植  (2023/10/24 更新)


臨床状況

  • 固形臓器移植レシピエントにおける日和見感染症としてのCMV感染の予防.
  • リスク:CMV IgG陽性ドナー(D+)からの臓器を移植されたCMV IgG陰性レシピエント(R-)およびリンパ球除去抗体療法(サイモグロブリン,ATG,OKT-3,アレムツズマブ)を受けた患者で最もリスクが大きい.
  • 予防方法としては予防投与とpre-emptive therapy(先制療法)があるが,予防投与のほうが一般的(Clin Infect Dis 58: 785, 2014).

病原体

第一選択

予防:
  • レテルモビル480mg静注/経口1日1回(腎移植患者で承認されている)
移植臓器
D+/R-
R+
腎臓(Am J Transplant 10: 1228, 2010
6カ月
3カ月
膵臓および腎臓/膵臓
3~6カ月
3カ月
肝臓*
3~6カ月
3カ月
心臓
3~6カ月
3カ月
肺および心肺(Ann Intern Med 152: 761, 2010
≧12カ月
6~12カ月
小腸
3~6カ月
3~6カ月

拒絶反応治療のためにリンパ球除去抗体の投与を受けた患者では予防投与(またはpre-emptive therapy)の再開を考慮すること.

*バルガンシクロビルは,予防に使用した場合ガンシクロビル経口に比べ組織侵襲的な疾患の発生率が高いことから,肝臓移植レシピエントでのCMV予防についてFDAの承認を得ていないが(Am J Transplant 4: 611, 2004),実際には広く用いられており,多くの専門家は第一選択として推奨している.


第二選択

  • 予防投与
  • レテルモビル 480mg静注/経口1日1回:シクロスポリン服用の場合は,240mg/日
  • CMV IVIG,またはIVIG(コメント参照)
  • Pre-emptive therapy
  • 移植後3~6カ月は,毎週CMVウイルス血症をPCR(または抗原血症)でモニター.
  • ウイルス血症が起こったら,バルガンシクロビル 900mg経口1日2回またはガンシクロビル 5mg/kg静注12時間ごとで治療開始.最低2週間かつウイルス血症の検査陰性まで治療を続ける.この時点で二次予防に転換するか,pre-emptive therapyを再開する.

(†:日本にない剤形)

コメント

  • 拒絶反応治療のためにリンパ球除去抗体を受けた患者では,予防(または先制治療)を考慮する.
  • 肝移植レシピエントでのバルガンシクロビルによるCMV予防は,ガンシクロビルによる予防と比較して組織侵襲性疾患発症が高率であるため,FDAは承認していない(Am J Transplant 4: 611, 2004).しかし,多くの専門家は第一選択として推奨し,広く用いられている.
  • CMV D-/R-での臓器移植レシピエントはCMV予防投与を必要としないが,CMV陰性かつ白血球除去血液製剤の投与を受ける場合には,予防を考慮する.移植後少なくとも最初の1カ月はHSV/VZVに対する予防投与を考慮する(Clin Transplant 33: e13512, 2019).
  • ガンシクロビル1000mg経口†1日3回は,高リスク患者でのCMV疾患減少に関してはバルガンシクロビル900mg1日1回と同等の効果があるが,予防投与中のウイルス血症発症率は高い(Am J Transplant 4: 611, 2004).
  • CMV免疫グロブリンは,高リスクの肺,心肺,心臓,膵臓移植レシピエントにおける補助予防として考慮しうる.処方:移植後72時間以内および2,4,6,8週後に150mg/kg,その後12週,16週後に100mg/kg.
  • レテルモビルは幹細胞移植後のCMV感染予防についてFDAより承認された.単純ヘルペスウイルス(HSV),帯状疱疹ウイルス(VZV)に対しては活性がないため,HSV/VZV予防が必要な場合は他剤を追加する(N Engl J Med 377: 2433, 2017).
  • 抗ウイルス薬による予防を行った場合,CMV疾患の発症が遅れてみえることがあるため,遅発性CMV疾患につねに注意し,発症したら適切に治療すること.

(†:日本にない剤形)

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2023/10/23