日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

移植患者-CMV感染の予防,造血幹細胞移植  (2020/04/28 更新)


臨床状況

  • 主に同種異系移植を受けた造血幹細胞移植(HSCTまたはHCT)患者における,日和見感染症としてのCMV感染の予防.
  • HCTレシピエントでのCMV疾患のリスク因子:血清抗体陽性レシピエント(R+)/血清抗体陰性ドナー(D+),T細胞除去治療または臍帯血移植,移植片対宿主病(GVHD)
  • 予防方法としてはPre-emptive therapyと予防投与がある.上記の患者に対してはPre-emptive therapyを用いるのがより一般的.

病原体

  • サイトメガロウイルス (CMV)

第一選択

  • Pre-emptive therapy
  • 移植後3~6カ月は週1回PCR(または抗原血症)によりモニターし,晩期発症のCMV疾患リスクが高い患者(全身治療を必要とする長期のGVHD,高用量ステロイド投与を受けている患者,T細胞除去または臍帯血移植レシピエント,およびCD4数<100/mL)ではより長期のモニタリングを考慮する.
  • CMVウイルス血症または抗原血症が認められたら治療開始.
  • 治療:バルガンシクロビル900mg経口1日2回,またはガンシクロビル 5mg/kg静注12時間ごと・ウイルス血症消失まで,ただし少なくとも2週間治療.ウイルス血症が消失した時点で,二次予防(下記)に切り替えるか,pre-emptiveなアプローチをいったん終了する.
  • 予防投与

第二選択

  • Pre-emptive Therapy
  • Cidofovir 5mg/kg静注週1回(プロベネシドと併用)
  • 予防投与(生着後に開始)
  • Cidofovir 5mg/kg静注1週おき(プロベネシドと併用)

コメント

  • レテルモビルは,幹細胞移植後のCMV感染予防についてFDAの承認を受けた(N Engl J Med 377: 2433, 2017).単純ヘルペスウイルス(HSV)または帯状疱疹ウイルス(VZV)に対しては活性がないため,HSV/VZVの予防が必要な場合には他剤を追加する.
  • バルガンシクロビルによる予防は,HCT後のCMV感染予防についてpre-emptive therapyより優れてはいなかったが,造血成長因子使用の増加に関連した(Ann Intern Med 162: 1, 2015).
  • HCTレシピエント(腸管GVHDのある場合でも)において,バルガンシクロビル治療により十分なガンシクロビル血清中濃度が達成された(Blood 107: 3002, 2006).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2021/04/13