日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

トキソプラズマ症,HIV/AIDS患者  (2022/11/8 更新)
脳膿瘍,トキソプラズマ症,HIV/AIDS,Toxoplasma gondii,脳炎


臨床状況

  • HIV陽性/AIDS患者の脳トキソプラズマ症.通常はCTまたはMRIでリング状の強調病変として認められる.
  • 非常にまれではあるが,トキソプラズマ症が播種性感染となることもある.
  • ほとんどの症例では(>95%),IgGの存在から以前に潜伏性の感染があったことが明らかになるが,急性の新規感染の報告もある.
  • 多くは抗体力価が低く,境界陽性.
  • 下記のための処方
  • 治療
  • IgGトキソプラズマ抗体が陽性,かつCD4<100/mm3のAIDS患者における一次予防
  • 治療後の長期抑制

病原体

  • Toxoplasma gondii

第一選択

治療
  • 所見/症状の消失後最低6週,その後抑制治療(下記を参照)
  • Pyrimethamine 200mg1回経口,その後(体重≧60kgなら75mg/日経口)または(体重<60kgなら50mg/日経口)+[スルファジアジン(≧60kgなら1.5g,<60kgなら1g)経口†6時間ごと]+[ホリナートカルシウム10~25mg/日経口]
一次予防
  • CD4数>200が3カ月続けば中止できる
  • ST 2錠経口24時間ごと
長期抑制(二次予防)
  • スルファジアジン2~4g経口†2~4回/日に分割]+[Pyrimethamine 25~50mg経口24時間ごと]+[ホリナートカルシウム10~25mg経口24時間ごと],または
  • ST 2錠経口1日2回(望ましい)または24時間ごと(臨床経験は少ないが,錠剤を減らすため,またはPyrimethamineが入手できない場合に)
  • CD4>200が6カ月続けば抑制を中止できる.

(†:日本にない剤形)

第二選択

治療
  • 徴候/症状の消失後4~6週間治療,その後抑制治療.
  • Pyrimethamine 75mg/日経口(体重≧60kg)または50mg/日経口(体重<60kg)+ホリナートカルシウム10~25mg/日経口+CLDM 600mg経口または静注6時間ごと,または
  • ST 25/5mg/kg経口または静注12時間ごと,または
  • Pyrimethamine 75mg/日経口(体重≧60kg),50mg/日経口(体重<60kg)+ホリナートカルシウム10~25mg/日経口+アトバコン1500mg経口1日2回食事とともに,または
  • Pyrimethamine 75mg/日経口(体重≧60kg)または50mg/日経口(体重<60kg)+ホリナートカルシウム10~25mg/日経口+AZM 900~1200mg経口1日1回
一次予防
  • ST 2錠経口週3回,または
  • ST 1錠経口1日1回,または
  • アトバコン 1500mg経口24時間ごと±[(Pyrimethamine 25mg+ホリナートカルシウム 10mg)経口24時間ごと],または
長期抑制
  • CLDM 600mg経口8時間ごと+Pyrimethamine 25~50mg経口24時間ごと+ホリナートカルシウム 10~25mg経口24時間ごと,または

(†:日本にない剤形)

コメント

  • 治療
  • 重症のサルファ剤アレルギーがある患者では第二選択薬(サルファ剤以外)を使用.
  • 多発性の環状脳病変(CTまたはMRI)がある場合には,患者の>85%は7~10日の経験的治療に反応する.14日以内に反応がないか,あるいは最初の1週間で臨床的悪化あれば,脳生検が推奨される.
  • Pyrimethamineは脳に炎症がなくても浸透する.
  • ホリナートカルシウムはPyrimethamineによる血液毒性を予防する.
  • 多くの専門家やガイドラインではPyrimethemine処方を推奨しているが,米国では薬価が非常に高い.メタアナリシスではSTが第二選択として合理的であることが示唆されている:HIV Med 18:115, 2017.
  • 一次予防
  • ニューモシスチス肺炎(PCPまたはPJP)の予防もまたトキソプラズマ症に効果がある.ガイドラインを参照:clinicalinfoHIVガイドライン
  • 長期抑制
  • PCPに罹患またはその懸念があれば,両方の原因微生物をカバーする薬剤が必要.
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2022/11/07