日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Vibrio vulnificus, V. alginolyticus, V. damsela  (2023/06/13 更新)
海水,汽水に関連して汚染された皮膚創部


臨床状況

  • 推奨は,重症軟部組織感染症および敗血症の治療に関するものである.
  • 細菌は海水や河口などの塩水・海洋環境中に生息し,細菌を含む海水,汽水に創部が暴露することにより創部感染する.川や海での遊び,生牡蠣摂食,ウニ漁,魚のヒレによる刺し傷,魚介の取り扱いでも暴露が起こりうる.
  • 生命に関わる感染のリスクが最も高い症例
  • アルコール性肝炎や慢性ウイルス性肝炎による肝硬変,アルコール依存症,ヘモクロマトーシス,糖尿病,サラセミア メジャー,慢性腎疾患,TNF阻害薬の使用,リンパ腫(Clin Infect Dis 46: 970, 2008).

病原体

  • Vibrio vulnificus
  • Vibrio alginolyticus
  • Vibrio damselaPhotobacterium damselaeとも呼ばれる)
   

第一選択

  • 成人(DOXY 100mg静注†/経口1日2回,またはMINO 100mg静注/経口1日2回)+(CTRX 2g静注1日1回,またはCAZ 1g静注8時間ごと)
  • 小児:DOXY 4.4mg/kg/日1日2回に分割(最大200mg/日)+CAZ 150~200mg/kg/日8時間ごとに分割

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • DOXYまたはMINOの代わりに,LVFX 750mg静注/経口1日1回,またはCPFX 750mg経口1日2回または400mg静注1日2回で代用可能である(コメント参照).
  • 軽度の感染症であれば,単剤で治療可能である.

抗微生物薬適正使用

  • 治療期間は臨床反応に基づく.

コメント

  • レトロスペクティブな観察研究によると,フルオロキノロン系薬単独,フルオロキノロン系薬併用またはTCとβラクタム薬併用に比べ,βラクタム薬単独では死亡率が高かった(BMC Infect Dis 15: 226, 2015
  • 重症化の可能性を考慮して,創部感染や敗血症の患者で関連するリスク因子(生の海産物の摂取,海水への暴露)がある場合には,経験的治療にV. vulnificus に活性のある薬剤を含めるべきである.
  • およそ75%の患者に水泡性皮膚病変がみられる.
  • 血液疾患,悪性腫瘍,肝疾患などの免疫不全者における敗血症および敗血症性ショックの報告(Epidemiol Infect 142: 878, 2014).
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2023/06/12