日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Bordetella pertussis  (2024/11/26 更新)


臨床状況

  • 3段階の病期がある:
  • 初めに1~2週間のカタル期(めったに診断できない,この段階での治療は有効),
  • その後2~4週間の発作性咳嗽(咳が続いて2週間以降は,どんな治療も効果を示さない),
  • 最後に,1~2週間の回復期.後期での治療は,鼻腔からの菌根絶と疾患の伝播防止のためになされる.
  • Bordetella parapertussisも同様の臨床症状を引き起こすことがある.

診断/分類

診断
  • PCRまたは特別な培地での培養
分類
  • グラム陰性球桿菌
   

第一選択

  • 咳発症3週間以内なら抗菌薬治療が推奨される
  • 咳発症が3週間より以前なら抗菌薬治療は推奨されない.以下の場合は例外:
  • 咳発症が6週間以内の分娩間近の妊婦で,新生児への伝播を防ぐため
  • 喘息,COPD,65歳以上,その他の免疫不全条件がある場合,咳発症後6週間まで
  • 成人:
  • AZM 500mg経口1回,その後250mg経口1日1回・4日
  • CAM 500mg経口1日2回・7日(または1g/日経口2回に分割・7日)
  • 小児:
  • AZM 10mg/kg/日経口1日目,その後5mg/kg1日1回2~5日目
  • CAM 15mg/kg/日経口2回に分割・7日
  • 注:生後1カ月以内の乳児では,AZMに関連した肥厚性幽門狭窄症のリスクがわずかにある

第二選択

  • 成人:ST 2錠経口1日2回・14日
  • 小児:ST(トリメトプリムとして)8mg/kg/日経口2回に分割・14日

コメント

  • AZMは,治療期間が短く,投与回数が少なくてすみ,副作用が少ないことから好まれる.CAMの方がAZMより消化管副作用が多い
  • 予防の処方と用量は治療の場合と同じ.
  • 予防とワクチンについて:Clin Infect Dis 58: 830, 2014.免疫が生涯続くわけではないため,急性疾患からの回復後は再び予防接種の推奨に従うこと.
  • 妊娠中にワクチン接種した母親と接種しなかった母親の(生後8週まで)乳児で百日咳の発症を調査した症例対照研究がある:Clin Infect Dis 60: 333, 2015.
  • 妊娠中に百日咳ワクチン接種した母親からの乳児での発症は17%(58例注10例)だったのに対し,ワクチン未接種の母親からの乳児では71%(55例中39例)だった.
  • 計算された調整後ワクチン効果は93%.
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2024/11/25