日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

COVID-19-ワクチン  (2023/11/07 更新)


ワクチンの適応

はじめに
  • SARS-CoV-2に対する毎年のワクチン接種の必要性についての賛否のデータは,現在も研究中であり,FDA/ACIPガイドラインは2023年9月末の予定である.
  • XBB 1.5を含むファイザー/モデルナ(mRNA)およびノババックス(アジュバント蛋白)の一価ワクチンは,2023年の秋初頭には使用が推奨されるだろう.
  • おそらくは,高齢者および高リスク者には,さらなる追加接種が推奨されるだろうが,他の個人的な選択肢も認めることになるだろう.
  • CDCの最新の推奨(2023年5月12日)では,一価(祖先株)mRNAワクチンは米国ではもはや推奨されない(しかももはや入手できない)
  • 米国民のほとんどは,既にSARS-CoV-2に対する抗体をもっている(感染またはワクチン接種によって)
  • ワクチン未接種者は,二価ワクチン一回接種だけを行えばよく,祖先株一価mRNAワクチン複数回接種を受ける必要はない.
  • 65歳以上に対する二価ワクチン1回追加接種および免疫不全者に対する1回以上の追加接種は現在では推奨されている.
  • 改定されたFDA緊急時使用(EUA)では,二価COVID-19ワクチン接種を受けた免疫不全者のほとんどは,二価ワクチン接種後≧2ヵ月で二価ワクチン1回追加接種を受けてもよく,追加接種は任意であり,接種間隔を主治医が決定してもよい.
  • 6歳以上では,以前に一価初回接種シリーズを完了したかどうかにかかわらず,全員二価mRNAワクチン接種を受けなければならない.
  • 6歳以上では,以前に一価初回接種シリーズを完了したかどうかにかかわらず,全員二価mRNAワクチン接種を受けなければならない.
  • 6歳以上で既に二価mRNAワクチンを接種している場合は,65歳以上または免疫不全でないかぎり,それ以上の接種は必要ない,
  • 一般的なワクチン接種処方を単純化しようとする努力が積み重ねられてきているものの,中等度~重度の免疫不全者への接種は依然として複雑である(下記表を参照).
  • ノババックスは一価ワクチンだけが残っている
  • ノババックスは初回接種2回シリーズ,および非常に限定された状況での追加接種だけ認可されている.
  • ノババックス追加接種(以前に追加接種を受けていない場合のみ)は,COVID-19ワクチン初回接種シリーズ後≧6ヵ月で接種しなければならない.
  • ヤンセン/J&Jは現在では生産されておらず,使用は承認されず,ACIPガイドラインに含まれることはない.
  • 18歳以上で初回コースを受けた人は,初回コース完了後少なくとも2ヵ月(以前に追加接種を受けたことのない場合),または最後の一価ワクチン追加接種から少なくとも2ヵ月後で二価mRNAワクチン(モデルナまたはファイザー/BionTech)1回接種が推奨される.
 
ワクチンの適応(米国)
  • 生後>6ヵ月の全米国民は,有症状/無症候SARS-CoV-2感染の既往,長期COVID,ワクチン接種後のSARS-CoV-2感染の有無にかかわらず,ワクチン接種を受けなければならない.
  • 急性症状から回復し,隔離が終了するまでワクチン接種は延期する.
  • SARS-CoV-2感染後は,症状発症または検査陽性から3ヵ月まで次回接種の延期を考慮することがある.
  • 健常者については以下のとおり
  • 年齢≧6歳では,>1回の二価mRNAワクチン接種を受けなければならない.
  • 年齢>6歳でワクチン未接種,または一価ワクチンだけ接種した人は,二価mRNAワクチン1回接種することが推奨される.
  • しかし,年齢65歳以上の場合は,二価mRNAワクチン1回追加接種を受けてもよい.
  • 免疫不全者のためのCDCスケジュール(下記の「COVID-19ワクチン接種スケジュール-免疫不全の場合」を参照).

米国CDC COVID-19ワクチン接種スケジュール
  • 一般に,年齢に適したワクチン製剤および用量を,年齢別に推奨される接種間隔に従った接種日に受けなければならない.4歳,5歳の一部は例外となる.
  • 健常者(中等度または重度の免疫不全なし)
  • CDC infographic参照(ただし,簡略化されたもので,包括的ではない)
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチンの接種回数
用量(mL/μg)
接種間隔*
ワクチン未接種
モデルナ
1
0.5mL/50μg

ワクチン未接種
ファイザー/BionTech
1
0.3mL/50μg

一価mRNAワクチンを1回以上接種(二価mRNAワクチンは接種していない)
モデルナ
または
1
0.5mL/50μg
一価ワクチン最終接種から≧8週後
一価mRNAワクチンを1回以上接種(二価mRNAワクチンは接種していない
ファイザー/BionTech
1
0.3mL/50μg
一価ワクチン最終接種から≧8週後
二価mRNAワクチン1回接種(一価ワクチン接種歴にかかわらず)
適応なし:既に1回二価ワクチンを接種している
適応なし
適応なし
適応なし

年齢65歳以上の人は,二価mRNAワクチン第1回接種の少なくとも4ヵ月後に二価mRNAワクチン1回追加接種をしてもよい.モデルナ使用なら0.5mL/50μg,ファイザーなら0.3mL/30μg接種


   
EMA承認のCOVID-19ワクチン
  • EMA承認ワクチン(FDA未承認)
  • VidPrevatyn(サノフィ,グラクソ・スミスクライン),β変異株に基づく1価アジュバントタンパクワクチンで,mRNAまたはアデノウイルスワクチン接種後の1回追加接種として年齢>18歳に対してEMAは承認している.
  • 前回のワクチン接種から≧4ヵ月は待期すること.
WHO承認のCOVID-19ワクチン
  • WHO EULワクチンの添付文書へのリンク
  • FDA承認取り消し

効果・予防効果持続期間/選択,互換性

効果,予防効果持続期間
  • 接種の累積回数よりも,直近のCOVID-19ワクチンからの経過時間(間隔)のほうが重要だろう.
  • ウイルスが進化し続けるなか,初回連続接種および重要な第1回追加接種後の各追加接種は,入院に対して高いワクチン効果(VE)を3~6ヵ月維持する.
  • 二価ワクチン追加接種は(以前の一価ワクチン追加接種のみと比較して),約3ヵ月の現在びまん株による入院に対するVEを中等度追加的に上昇させる
  • 入院に対して
  • オミクロンびまん後:一価mRNAワクチンの入院に対するVE(最直近の接種からの日数・中央値)は,>18歳・免疫機能正常の人では,2回接種後25%(445日),3回接種後34%(229日),年齢>50歳では,4回接種後60%(84日).
  • 一価ワクチン2回以上接種の入院に対する絶対VEは,年齢18~64歳で19%,65歳以上で28%.
  • 二価ワクチンの相対VE(一価ワクチン追加接種のみとの比較)は,年齢>18歳の成人での追加接種後≧7日で52%,2~4ヵ月後で31%.
  • オミクロンBA.4,6,BA.5,BQ.1およびBQ.1.1に対するVE
  • ■一価ワクチン1回追加接種後15~99日の重症感染に対するVEは25.2%(2022年第2四半期),対応する二価ワクチン1回追加接種のVEは58.7%(2022年第4四半期)(N Engl J Med 2023年2月23日).
  • ●>65歳と12~64歳でVEは同等.
  • 有症性感染に対して
  • 一価mRNAワクチン4回接種のVE(3回接種し,4回目は接種しなかった場合との比較)は,4回接種後2週で約50%から3ヵ月で約35%に低下した.
  • 5歳未満の小児での初回接種の,症候性感染に対するVEは約40%で,4ヵ月後の減弱はモデルナ>ファイザー.
  • 二価ワクチン追加接種4~5ヵ月後の症候性感染に対する相対VE(一価ワクチン追加接種との比較)は,年齢18~49歳で41%,50~64歳で28%,>65歳で21%.
選択,互換性
  • 年齢6歳以上で,一価mRNAワクチンを1回以上接種したことのある場合には,二価モデルナまたは二価ファイザーワクチンのどちらかを接種してもよい.
  • より年少の小児については,各ワクチンの項目を参照.
  • ヤンセン(J&J)は最後の手段のワクチン(毒性が比較的強い)であり,簡単には入手できない.
  • オミクロン以前のデータでは,モデルナワクチンは,ファイザーワクチンよりもVEおよび効果持続期間の両方について優れていることが示されている(一価ワクチンでのmRNA用量が大きかったことによる).

毒性

禁忌
  • それぞれのワクチンの頁を参照.
  • SARS-CoV-2の最近の曝露は,COVID-19ワクチンの禁忌でも警告でもない.
警告
  • それぞれのワクチンの頁を参照.
  • 最近のSARS-CoV-2感染があるが,切迫した再感染リスクは高くない場合は,初回連続接種または追加接種を症状発症または検査陽性(無症候感染の場合)から3ヵ月遅らせることを考慮してもよい.
  • 感染とワクチン接種との間隔を長くすると,ワクチンに対する免疫反応が改善されることがある.
  • ワクチン接種前あるいは接種後の合間の時期での抗ウイルス薬投与が防御抗体反応を妨げる可能性は少ない.
副作用
  • 軽微な副作用については,個々のワクチンの頁を参照.
  • 一価ワクチンも二価ワクチンも第4回接種(第2回追加接種)としての使用についての安全性は同等.
  • 心筋炎:123,000,000例のmRNAワクチン追加接種後のVAERSには131例の心筋炎が報告されている.
  • リスクは主に青少年および若い成人男性
  • 年齢5~11歳の小児では,第1回ワクチン追加接種後に増加しない
  • 第1回追加接種後の心筋炎の報告率は初回連続接種の2回目の後よりも低い(初回接種の1回目の後のほうが2回目の後より低い)
  • モデルナ,ノババックス,ファイザー/BionTech COVID-19ワクチンでは,初回接種1回目と2回目の間隔を8週とするのが,心筋炎発症率を下げるためには最適であろう
  • 米国でも他の国々でも,mRNAワクチン初回接種あるいは一価ワクチン追加接種で,虚血発作についての安全信号は出ていない.
  • 米国CDCおよびファイザーのいくつかあるサーベイランスネットワークの1箇所から,年齢>65歳に対する二価ワクチン追加接種後に虚血発作が少数集団にみられたという報告があるが,さらなる検証を要する.
  • アジュバントインフルエンザワクチンとの併用が関連するかどうかは,2023~2024年のインフルエンザ流行期の前に研究の必要がある.
薬物相互作用
  • インフルエンザワクチン(高用量またはアジュバントを含む)とCOVID-19ワクチンは,接種が適切とされるならば,同じ受診時に接種すべき.
  • COVID-19ワクチンは,他のワクチン接種時期とは関わりなく接種することができる.
  • 最短間隔(21または28日)前4日以内に第2回接種が行われた場合は,適正とみなされる.ただし,誤った投与を繰り返してはならない.
  • COVID-19ワクチンとエムポックスワクチンの最短接種間隔はない.
  • 心筋炎のリスクを小さくするために,エムポックスワクチン接種後4週経ってからCOVID-19ワクチン接種することを考慮した方がよい.

特に注意が必要な対象集団

妊娠,授乳
  • 妊婦,授乳中,妊娠活動中,あるいは妊娠を考えている女性に対しては標準的な推奨に従ってワクチン接種を行う
  • 妊婦,妊娠初期の妊婦は重症化のリスクが高く,胎児もリスクが高くなる.
  • ワクチンの有用性は,リスクを上回る.
  • ワクチンによる抗体は,新生児に移行し,おそらくは6ヵ月まで効果がある.
  • 授乳については禁忌はない.
中等度~重度免疫不全,HIV
  • 免疫不全者については,CDC infographic参照(簡略化されたもので,包括的でないが).
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種回数
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ
3
0.5mL/50μg
第1回-第2回:4週
第2回-第3回:≧4週
未接種
ファイザー/BionTech
3
0.3mL/30μg
第1回-第2回:4週
第2回-第3回:≧4週
一価モデルナを1回接種
モデルナ†
2
0.5mL/50μg
第1回:一価接種後4週
第1回-第2回:≧4週
一価モデルナを2回接種
モデルナ†
1
0.5mL/50μg
一価最終接種後≧4週
一価モデルナを3回接種
モデルナ
1
0.5mL/50μg
一価最終接種後≧8週
一価モデルナを3回接種
ファイザー/BionTech
1
0.3mL/30μg
一価最終接種後≧8週
一価モデルナを3回,二価mRNAワクチンを1回

脚註参照


一価ファイザーを1回
ファイザー/BionTech‡
2
0.3mL/30μg
第1回:一価接種後3週
第1回-第2回:≧4週
一価ファイザーを2回
ファイザー/BionTech‡
1
0.3mL/30μg
一価最終接種後≧4週
一価ファイザーを3回
モデルナ
1
0.5mL/50μg
一価最終接種後≧8週
一価ファイザーを3回
ファイザー/BionTech‡
1
0.3mL/30μg
一価最終接種後≧8週
一価ファイザーを3回,二価mRNAワクチンを1回

脚註参照


  • 脚註
  • 年齢12歳以上の免疫不全者は推奨された二価ワクチン接種の最終接種後≧2ヵ月でモデルナ(0.5mL/50μg)またはファイザー(0.3mL/30μg)1回の追加接種を受けてもよい.
  • †このワクチン接種歴のある年齢対象はファイザーCOVID-19ワクチン接種も認められている(0.3mL/30μg).
  • ‡このワクチン接種歴のある年齢対象はモデルナCOVID-19ワクチン接種も認められている(0.5mL/50μg).

  • 可能なら,COVID-19ワクチンは,免疫抑制治療の開始または再開の,少なくとも2週間前に接種すべきである.
  • HIV感染者では,ワクチン接種コース完了後の重症化リスクは高くない.
  • ワクチン接種がされていても,CD4<350の場合は重症化リスクが高い:二価ワクチン追加接種によるワクチン状態の最新化を確認すること.
  • NCCNは,活動性がん患者でほかに選択肢がある場合は,ノババックスを使わないように推奨している.
  • 中等度または重度の免疫不全であることを自己申告できる.
  • 初回接種の2回接種後にあらたに免疫不全になった場合は,初回接種の追加接種は必要ない.免疫不全者のための追加接種スケジュールに準ずる.
  • 造血幹細胞移植(HCT)またはCAR-T細胞療法を受けた人は,その>3ヵ月後にmRNAまたはノババックスによるワクチン再接種を受けること.
  • B細胞枯渇療法(たとえば,リツキシマブ,Ocrelizumab)による短期治療中に1回以上のワクチン接種(初回連続接種および二価追加接種)を受けた患者では,ワクチン再接種(治療終了後約6カ月で開始)を考慮してもよい.
  • 現時点で免疫抑制治療を受けている患者は,COVID-19ワクチン接種を遅らせてはならない.
  • B細胞枯渇療法を持続的に受けている患者は,次回治療予定の約4週前にCOVID-19ワクチンを接種しなくてはならない.
  • Tixagevimab/Cilgavimabは現在では予防として推奨されていない.
  • 個々の事情に応じて,接種者は,リスク/便益の考慮,臨床経験および自身の判断にもとづいて,モデルナ,ノババックス,ファイザーワクチンをFDAおよびCDCの定めた投与間隔に従わずに使用することができる.
  • COVID-19ワクチン接種後の免疫反応の評価,またはワクチン未接種者のワクチン接種の必要性を評価するために抗体検査を行うことは推奨されない.
  • 予防との関連性はなく,検査は多様である.
  • B細胞反応性が不確実な患者では,IgG陽性なら最小限安心であるが,IgG陰性では助けにならない.
  • 抗体検査が行われたなら,抗体検査の結果にかかわらず,ワクチン接種は推奨どおりに完了させなければならない.
  • COVID-19ワクチンを前もって接種している場合も,SARS-CoV-2ウイルス検査(核酸増幅または抗体検査)には影響しないだろう.

コメント

  • mRNAは,宿主DNAがある細胞核内に入り込むことはないので,mRNAワクチンがワクチン被接種者の遺伝子構造を変えるような危険性はない.
  • 下記も参照
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2023/11/06