日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

COVID-19ワクチン モデルナ  (2023/07/25 更新)
Spikevax, mRNA-1273


ワクチン

はじめに
  • CDC最新推奨(2023年5月1日)では,一価(祖先株)mRNAワクチンは米国ではもはや推奨されない.
  • 米国市民のほとんどは,既にSARS-CoV-2に対する抗体をもっている(感染またはワクチン接種によって)
  • ワクチン未接種者は,二価ワクチン一回接種だけを行えばよく,祖先株一価mRNAワクチン複数回接種を受ける必要はない.
  • 65歳以上に対する二価ワクチン1回追加接種および免疫不全者に対する1回以上の追加接種は現在では推奨されている
  • 改定されたFDA緊急時使用(EUA)では,二価COVID-19ワクチン接種を受けた免疫不全者のほとんどは,二価ワクチン接種後≧2ヵ月で二価ワクチン1回追加を受けてもよく,追加接種は任意であり,接種間隔を主治医が決定してもよい.
  • >6歳では,以前に一価初回接種シリーズを完了したかどうかにかかわらず,全員二価mRNAワクチン接種を受けなければならない.
  • >6歳で既に二価mRNAワクチンを接種している場合は,65歳以上または免疫不全でないかぎり,それ以上の接種は必要ない,
  • 一般的なワクチン接種適応,効果,予防期間,選択と互換性についてはCOVID-19,ワクチンを参照.
ワクチン
  • タイプ:脂質ナノ粒子(LNP)カプセル化mRNA
  • モデルナCOVID-19ワクチン,一価(祖先株)(Spikevax:mRNA-1273)
  • モデルナCOVID-19ワクチン,二価(祖先株およびオミクロンBA.4/BA.5).現時点では市販されていない
接種およびスケジュール
  • 米国で使用可能なモデルナワクチン.製品の選択(個々に色分けされたバイアル)は薬剤師の管理下で行われなければならない.
  • 一般に,年齢に適応のあるワクチン製剤を受けなければならず,用量は,年齢別に推奨される接種間隔に従った接種日の年齢に基づく;4歳,5歳の一部は例外となる.
  • 健常者=中等度または重度の免疫不全なし
  • 簡略化されたもので包括的ではないが,CDC infographic参照
年齢>12歳
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種の回数
用量(mL/μg)
投与間隔
未接種
モデルナ
1
0.5mL/50μg

一価mRNAワクチン1回以上(二価mRNAワクチン接種なし)
モデルナ
1
0.5mL/50μg
最終一価ワクチン接種から≧8週後
二価mRNAワクチン1回接種は接種(一価ワクチン接種歴にかかわらず)
適応なし:すでに二価ワクチン1回接種あり



追加二価ワクチン接種:年齢65歳以上の人は,二価mRNAワクチン第1回接種の>4ヵ月後に二価mRNAワクチン1回追加接種をしてもよい.モデルナ使用なら,0.5mL/50μg


生後6ヵ月~4歳
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種の回数
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ
2
0.25mL/25μg
1回と2回の間隔:4~8週
一価モデルナ1回接種
モデルナ
1
0.25mL/25μg
一価ワクチン接種後4~8週
一価モデルナ2回接種
モデルナ
1
0.2mL/10μg
最後の一価ワクチン接種後≧8週
一価モデルナ2回,二価モデルナ1回接種
適応なし:既に二価ワクチン1回接種あり



 
5歳
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種の回数
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ
2
0.25mL/25μg
1回と2回の間隔:4~8週
一価モデルナ1回接種
モデルナ
1
0.25mL/25μg
一価ワクチン接種後4~8週
一価モデルナ2回接種
モデルナ
1
0.2mL/10μg
最後の一価ワクチン接種後≧8週
一価モデルナ2回,二価mRNAワクチン1回接種
適応なし:既に二価ワクチン1回接種あり




年齢6~11歳
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応二価ワクチン接種の回数
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ
1
0.25mL/25μg

一価mRNAワクチン1回以上接種(二価mRNAワクチン接種なし)
モデルナ
1
0.25mL/25μg
最終一価ワクチン接種後≧8週
一価mRNAワクチン2回以上,二価mRNAワクチン1回接種
適応なし:既に二価ワクチン1回接種あり



二価mRNAワクチン1回は接種(一価ワクチン接種歴にかかわらず)
適応なし:既に二価ワクチン1回接種あり




毒性

禁忌
  • 過去のmRNAワクチン接種,または別個にワクチンに添加のポリエチレングリコール(PEG)またはポリソルベート投与でアナフィラキシーや即時型アレルギー反応(4時間以内)が起こったことがある
  • どのmRNAワクチンとも併用接種してはならない
  • ワクチン成分に対する明らかなアレルギーと診断された記録がある
警戒
  • 他のワクチンのどれか,またはmRNA COVID-19ワクチン成分やポリソルベートを含まない注射治療によって即時型アレルギー反応が起こったことがある
  • PEGを含むワクチンまたは注射治療に反応があった人
  • MIS-CまたはMIS-Aの既往
  • mRNAまたはノババックスCOVID-19ワクチン接種後の心筋炎または心外膜炎の既往,以後のCOVID-19ワクチン接種に対する警告となるが,症状が完全に消失するのを待つ.
  • mRNAまたはノババックスCOVID-19ワクチン接種後の心筋炎または心外膜炎:症状が完全に消失して後は,年齢に応じた適応のあるどのワクチンも接種してよい.
  • COVID-19ワクチンのあるタイプに関連したアレルギーは,他のCOVID-19ワクチンタイプへの警告となる.
  • 発熱の有無にかかわらず,中等症または重症急性疾患が解消するまではワクチン接種を延期する
禁忌でない場合
  • 食物(卵,ゼラチンを含む),ペット,昆虫,生物毒,環境,ゴム製品,経口薬服用:ワクチンや注射に関係のないアナフィラキシーの他の既往.
  • 他のワクチンに近接したギラン・バレー症候群
副作用
  • 軽微な副作用については,個々のワクチンページを参照
  • 一価ワクチンも二価ワクチンも第4回接種(第2回追加接種)としての使用については全般的な安全性は同等.
  • 心筋炎:123,000,000例のmRNAワクチン追加接種後にVAERSには131例の心筋炎が報告されている.
  • リスクは主に青少年および若い成人男性
  • 年齢5~11歳の小児では,第1回ワクチン追加接種後の増加はない
  • 第1回追加接種後の心筋炎発症率は初回連続接種の2回目の後よりも低い(初回接種の1回目の後の方が2回目の後より低い)
  • モデルナ,ノババックス,ファイザー/BionTech COVIDワクチンでは,初回接種1回目と2回目の間隔を8週とするのが,一部の被接種者での心筋炎発症率を下げるためには最適であろう
  • 米国でも他の国々でも,mRNAワクチン初回接種あるいは一価ワクチン追加接種で,虚血発作についての安全信号は出ていない.
  • 米国CDCおよびファイザーのいくつかあるサーベイランスネットワークの1箇所から,年齢>65歳に対する二価ワクチン追加接種後に虚血発作が複数例みられたという報告があるが,さらなる検証を要する.
  • アジュバントインフルエンザワクチンとの併用が関連するかどうかは,2023~2024年のインフルエンザ流行期の前に研究の必要がある.

特に注意が必要な対象集団

妊婦
  • 妊婦,授乳注の女性,妊娠活動中の女性,近日中に妊娠する可能性のある女性に対しては標準的な推奨に従ってワクチン接種を行う.
  • COVID-19に感染した妊婦,妊娠初期の妊婦は重症化と死亡のリスクが高く,胎児も早産や死産のリスクが高くなる.
  • ワクチンの有用性は,COVID-19ワクチンの既知あるいは可能性のあるリスクを上回る.
  • 妊娠中にCOVID-19ワクチン接種後産生された抗体は,新生児に移行する.
  • 授乳については禁忌はない.
中等度~重度の免疫不全/HIV
  • 米国で入手可能なファイザーワクチンバイアル.バイアルの選択(色で区別)は薬剤師の管理下で行わなければならない.
  • 免疫不全者については,簡略化されたもので,包括的ではないが,CDC infographic参照

 年齢12歳以上
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種の回数*
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ†
3
0.5mL/50μg
第1回-第2回:4週
第2回-第3回:≧4週
一価モデルナ1回接種
モデルナ†
2
0.5mL/50μg
第1回:一価接種後4週
第1回-第2回:≧4週
一価モデルナ2回接種
モデルナ†
1
0.5mL/50μg
一価最終接種後≧4週
一価モデルナ3回接種
モデルナ
1
0.5mL/50μg
一価最終接種後≧8週
一価モデルナ3回接種
ファイザー/BionTech
1
0.3mL/30μg
一価最終接種後≧8週
一価モデルナ3回接種,
二価mRNAワクチン1回接種

脚註参照


  • 脚註
  • *:年齢12歳以上の免疫不全者は推奨された二価ワクチン接種の最終接種後≧2ヵ月でモデルナ(0.5mL/50μg)またはファイザー(0.3mL/30μg:灰色キャップ)1回の追加接種を受けてもよい.さらなる追加接種については,臨床的判断,個人の希望,最終ワクチン接種から≧2ヵ月後の状況などに従って,接種を行う
  • ‡:このワクチン接種歴のある年齢対象はモデルナCOVID-19ワクチン接種も認められている(0.5mL/50μg).
  • †:このワクチン接種歴のある年齢対象はファイザーCOVID-19ワクチン接種も認められている(0.3mL/30μg).

 生後6ヵ月~4歳
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種の回数*
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ
3
0.25mL/25μg
第1回-第2回:4週
第2回-第3回:≧4週
一価モデルナ1回接種
モデルナ
2
0.25mL/25μg
第1回:一価接種後4週
第1回-第2回:≧4週
一価モデルナ2回接種
モデルナ
1
0.25mL/25μg
一価最終接種後≧4週
一価モデルナ3回接種
モデルナ
1
0.2mL/20μg
一価最終接種後≧8週
一価モデルナ3回接種,二価モデルナ1回接種

脚註参照


  • 脚註
  • *:生後6ヵ月~4歳の免疫不全者は推奨された二価mRNAワクチン接種の最終接種後≧2ヵ月で同一の二価mRNAワクチン1回の追加接種を受けてもよい.さらなる追加接種については,臨床的判断,個人の希望や状況などに従って,二価接種を行う.さらに追加接種を行う場合は,最終接種から≧2ヵ月後としなければならない.ファイザーワクチン使用なら,0.2mL/30μg.

 年齢5歳
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種の回数*
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ†
3
0.25mL/25μg
第1回-第2回:4週
第2回-第3回:≧4週
一価モデルナ1回接種
モデルナ†
2
0.25mL/25μg
第1回:一価接種後4週
第1回-第2回:≧4週
一価モデルナ2回接種
モデルナ†
1
0.25mL/25μg
一価最終接種後≧4週
一価モデルナ3回接種
モデルナ†
1
0.25mL/25μg
一価最終接種後≧8週
一価モデルナ3回接種,二価mRNAワクチン1回接種

脚註参照


  • 脚註
  • *:5歳の免疫不全者は推奨された二価mRNAワクチン接種の最終接種後2ヵ月で二価mRNAワクチン1回の追加接種を受けてもよい.さらなる追加接種については,臨床的判断,個人の希望や状況などに従って,接種を行う.さらに追加接種を行う場合は,最終接種から≧2ヵ月後としなければならない.モデルナワクチンを既に接種している場合,どちらかのmRNAワクチンを接種することも認められている.この年齢集団でファイザーワクチン接種歴のある場合,ファイザーワクチンのみ接種が認められている.
  • モデルナ使用なら,0.2mL/10μgが推奨されている;0.25mL/25μgも認められている.
  • ファイザー使用なら,0.2mL/10μg.
  • †:ファイザー/BionTech COVID-19ワクチン(0.2mL/10μg)も,この接種歴のこの年齢集団で認められている,

 年齢6~11歳
COVID-19ワクチン接種歴
二価ワクチン
適応となる二価ワクチン接種の回数*
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
モデルナ†
3
0.25mL/25μg
第1回-第2回:4週
第2回-第3回:≧4週
一価モデルナ1回接種
モデルナ†
2
0.25mL/25μg
第1回:一価接種後≧4週
一価モデルナ2回接種
モデルナ†
1
0.25mL/25μg
一価最終接種後≧4週
一価モデルナ3回接種
モデルナ†
1
0.25mL/25μg
一価最終接種後≧8週
一価モデルナ3回接種,二価mRNAワクチン1回接種

脚註参照


  • 脚註
  • *:6~11歳の免疫不全者は推奨された二価mRNAワクチン接種の最終接種後>2ヵ月でモデルナ(0.25mL/25μg)またはファイザーワクチン(0.2mL/10μg)1回の追加接種を受けてもよい.さらなる追加接種については,臨床的判断,個人の希望や状況などに従って,接種を行う.さらに追加接種を行う場合は,最終接種から>2ヵ月後としなければならない.
  • †:ファイザー/BionTech COVID-19ワクチン(0.2mL/10μg)も,この年齢集団でこの接種歴の場合には認められている.

  • 可能なら,COVID-19ワクチンは,免疫抑制治療の開始または再開の,>2週間前に接種すべきである.
  • HIV感染者では,ワクチン接種コース完了後の重症化リスクは高くない.
  • ワクチン接種がされていても,CD4<350の場合は重症化リスクが高い:二価ワクチン追加接種によるワクチン状態の最新化を確認すること.
  • NCCNは,活動性がん患者でほかに選択肢がある場合は,ノババックスを使わないように推奨している.
  • 中等症または重症の免疫不全状態であるとの自己申告は認められる
  • mRNAワクチン初回連続2回接種後に免疫不全となった場合は,初回追加接種の必要はない:免疫不全者の追加接種スケジュール
  • 造血幹細胞移植(HCT)またはCAR-T細胞療法を受けた人は,HCTまたはCAR-T細胞療法後少なくとも3ヵ月にmRNAまたはノババックスによるワクチン再接種を受けなければならない.
  • 短期B細胞枯渇療法(たとえば,リツキシマブ,Ocrelizumab)は,(悪性疾患の)治療終了後約6ヵ月に開始されるが,その間にCOVID-19ワクチン接種を1回以上(初回連続接種および二価ワクチン追加接種)受けた患者では,ワクチン再接種を考慮してもよい.
  • 現時点で免疫抑制治療を受けている患者で,COVID-19ワクチン接種を遅らせてはならない.
  • B細胞枯渇療法を持続的に受けている患者は,次回治療予定の約4週前にCOVID-19ワクチンを接種しなくてはならない.
  • Tixagevimab/Cilgavimabは現在では予防として推奨されていない.
  • 個々の事情に応じて,接種者は,リスク/便益の考慮,臨床経験および自身の判断にもとづいて,モデルナ,ノババックス,ファイザーワクチンをFDAおよびCDCの定めた投与間隔に従わずに使用することができる.

血清学検査

  • COVID-19ワクチン接種後の免疫反応の評価,またはワクチン未接種者のワクチン接種の必要性を評価するために抗体検査を行うことは推奨されない.
  • 予防との関連性はなく,それぞれの検査は大きく異なる
  • IgG陽性による確認は,ごくわずか,B細胞産生能が不確実な患者ではIgG陰性は指標として役に立たない.

コメント

  • 特に青少年では,ワクチン接種後15分の観察期間を設けることを考慮する.
  • 以下の場合には,ワクチン接種後30分の観察期間を設けることを考慮する:
  • 他のCOVID-19ワクチンに対してアレルギー関連の禁忌がある.
  • 以前にCOVID-19ワクチン(どの製剤でも)に対して,重症でないアレルギー反応(4時間以内)があった
  • COVID-19以外のワクチンあるいは注射治療後のアナフィラキシー反応があった
  • 年齢に応じたワクチン製品および用量の推奨は,ワクチン接種時点の年齢に基づく
  • 初回連続接種の最中に,被接種者が若年集団から高齢集団に移ったとしたら,以後のワクチン接種のワクチン製品および用量は高齢集団の推奨に従う.
  • 現在使用可能なワクチンは,流行時の対応や曝露後予防には推奨されない.
  • mRNAは,宿主DNAがある細胞核内に入り込むことはないので,mRNAワクチンがワクチン被接種者の遺伝子構造を変えるような危険性はない.
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2023/07/24