日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

COVID-19ワクチン ノババックス  (2024/09/03 更新)
ヌバキソビッド, Covovax, NVX-CoV2373


ワクチン

はじめに
  • CDCは公式に,生後6ヶ月以上の人は,過去のCOVID-19ワクチン接種の有無にかかわらず,全員が2024-2025最新ワクチン接種を今秋に受けることを推奨した.
  • 新ワクチンが今秋使用可能になれば,ただちにCDCは詳細なガイドラインを発表する予定.
  • 抗原構成
  • モデルナおよびファイザーmRNAワクチンはKP.2
  • ノババックス組み替えタンパクワクチンはJN.1
  • 現行の2023-24ワクチンおよび下記のガイドラインを遵守しなければならない.
  • 生後>6ヵ月の全員で,ワクチンが入手され次第,改訂2023-24ワクチンを1回接種することが適応となるが,ノババックスが承認されているのは12歳以上に限る.
  • 「ワクチン状態最新化(up-to-date)」のCDCによる新しい定義を参照のこと.
  • ほとんどの米国市民は既に,過去の感染あるいはワクチン接種によりSARS-CoV-2に対する抗体を持っているため,12歳以上の健常者では初回接種コース完遂は現在では適応とはならない.
  • ワクチン未接種者は,2023-24ワクチンの1回接種のみ受ければよい.下記ワクチン接種の適応を参照.
  • 中等症~重症の免疫不全者に対する接種方法は,一般的なワクチン接種を簡潔なものにしようとする努力にもかかわらず,依然として複雑である(下記の表を参照).
  • 注:Janssen/J&Jワクチンは現在では生産中止で,使用も承認されておらず,ACIPガイドラインにも含まれていない.Janssen/J&Jの以前の用量は現在のガイドラインには適切でない
ワクチン
  • タイプ:組み替えタンパクサブユニット,アジュバント含有
  • CDC略語:1vCOV-aPS
  • ノババックスCOVID-19ワクチン,アジュバント,一価(Nuvaxovid:インドでの商品としてCovovaxがある)
  • mRNAワクチンがコードしたものと同じXBB1.5スパイクタンパクを含む
ワクチン接種の適応米国
  • 生後>6ヵ月のすべての米国市民は,以下の条件の有無に関わりなく,ワクチン状態を最新化しなければならない
  • 有症性または無症性SARS-CoV-2感染の既往
  • 長期化したCOVID,または
  • SARS-CoV-2ブレイクスルー感染(ワクチン接種後の感染)の既往
  • すなわち,健常者については:
     年齢5歳以上の健常者は全員,
  • 最新COVID-19ワクチン接種後にワクチン状態が最新となる
  • mRNAまたはヤンセン/J&Jワクチンの未接種,接種回数には関わりない
  • 例外:ワクチン未接種者は,ワクチン状態最新化のためには最新ノババックスワクチンを2回接種する必要がある
  • 免疫不全患者ワクチン接種のCDCスケジュール(下記免疫不全,HIVを参照)
  • 急性症状からの回復,かつ隔離終了までワクチン接種は延期すること.
  • SARS-CoV-2感染後は,次のワクチン接種を症状出現または検査陽性から3ヵ月後まで延期することを考慮する.
用量とスケジュール
  • ≧12歳のみ
COVID-19ワクチン接種歴
2023-24ワクチン
適応となる2023-24ノババックス接種の回数
用量(mL/μg)
接種間隔
未接種
ノババックス
2
0.5mL/5μg rS蛋白および50μgマトリックスMアジュバント
第1回-第2回:3~8週(8週で副作用が最小化されるかもしれない)
いずれかのmRNAワクチンを1回以上接種:いずれかの祖先株一価または二価COVIDワクチン接種を含む,ノババックスまたはヤンセンの1回以上接種
ノババックス
1
0.5mL/5μg rS蛋白および50μgマトリックスMアジュバント
最終ワクチン接種後少なくとも>8週
  • COVID-19ワクチン接種歴は,祖先株一価mRNAまたは二価mRNAワクチンまたは2つの組み合わせである:年齢12歳以上ならば,祖先株一価ノババックス接種,単独あるいはいずれかのmRNAワクチンとの組み合わせ,18歳以上ならば,Janssen接種,単独あるいは,いずれかのmRNAワクチンまたは祖先株一価ノババックスワクチンとの組み合わせ接種である.
  • 最初にノババックスCOVID-19ワクチン接種を受けた場合は,2回の初回ワクチン接種シリーズをノババックスワクチンで完了しなければならない.

有効性,予防効果持続期間/選択,互換性

有効性,予防効果持続期間
  • 直近のCOVID-19ワクチン接種からの時間は,おそらく接種の累積回数よりも重要である.
  • ウイルス変異が続いているため,初回コースおよび重大な第1回追加投与後は,それぞれの追加接種は,各接種時点から3~6ヵ月は入院に対する高いワクチン効果(VE)をもたらすという意義がある.
  • 2023-24ワクチンについて,ヒトでの効果データとしては,現在の株に対する中和抗体上昇ということだけしかない.
  • 最近の二価ワクチンに関する観察研究データによれば,ワクチン接種から近日中の入院に対する全般的有効性は約50%である
選択,互換性
  • CDCガイドラインは「2023-24 COVIDワクチン」の記載において,過去のワクチン接種歴と無関係に,いずれかの製品(モデルナ,ファイザー,ノババックス)が好ましいとはしていない.
  • モデルナワクチンは,ファイザーワクチン(一価ワクチンではmRNA量はより多い)と比較して,中等度VEおよび有効性持続期間において優位性があるという再現性のあるデータがある.
  • プレフィルド・シリンジがあるのはmRNAワクチンのみである.

毒性

禁忌
  • ノババックスCOVID-19ワクチンの接種後の,または含有成分に対する重症アレルギー反応(アナフィラキシーなど)
  • 添付文書に記載のワクチン成分に対するアレルギーと診断された記録がある
警告
  • ノババックスCOVID-19ワクチン成分に対する非重症アレルギー(注射部位以外のじんま疹など)と診断された場合,過去にノババックスCOVID-19ワクチン接種直後(4時間以内に発症)に非重症アレルギー反応が示された場合
  • いずれかのCOVID-19ワクチン1回接種後3週以内の心筋炎または心膜炎
  • 発熱の有無にかかわらず,中等症または重症急性疾患が解消するまではワクチン接種を延期する.
  • あるタイプのCOVID-19ワクチンに対するアレルギー関連の警告に該当する場合でも,重症アレルギー反応治療に経験のある医療従事者の監視の下での接種体制で別タイプのCOVID-19ワクチンの接種を受けることができる.
  • ワクチン接種後30分の観察期間を置くことを考慮しなければならない
  • 小児での多臓器炎症症候群(MIS-C),または成人での多臓器炎症症候群(MIS-A)
  • 禁忌でない場合
  • 食物(卵,ゼラチンを含む),ペット,昆虫,毒物,環境,ゴム製品,経口薬服用:ワクチンや注射に関係のないアナフィラキシーの他の既往.
  • 他のワクチンに近接したギラン・バレー症候群
副反応
  • 注射部位の痛み(時として重度な)は多く起こる.
  • 疲労,頭痛,筋肉痛は多くみられるが,軽度~中等度であり,ワクチン接種後1~3日以内で起こり,発症後1~3日以内で解消する.
  • モデルナ,ノババックス,ファイザー/BionTech COVIDワクチンでは,初回接種1回目と2回目の間隔を8週とするのが,一部の被接種者での心筋炎発症率を下げるためには最適であろう.
  • 症状のほとんどは軽症か中等症で,ワクチン接種後1~3日で発症し,1~3日以内に解消する.
  • ノババックス追加接種を受けた18歳以上の人たちでは,初回接種コースの第2回の後よりも追加接種後の方が,より多くの副作用が報告されている.
薬物相互作用
  • インフルエンザワクチン(高用量またはアジュバントを含む)とCOVID-19ワクチンは,適切ならば,同一日に接種すべきである.
  • COVID-19ワクチンは,他のワクチン接種の日程と関係なく接種してもよい.
  • 最小接種間隔(21または28日)の4日前以内に行われた第2回接種は有効である.しかし,先に不注意に接種してしまった場合に,それを繰り返してはならない.
  • COVID-19ワクチンとエムポックスワクチンの間に最小接種間隔はない.
  • 心筋炎発症を最小にするために,エムポックスワクチン接種から4週までCOVID-19ワクチン接種の延期を考慮すること.
  • COVIDワクチンとNirsevimab(長時間作用型モノクローナル抗体で,一部の乳児および年少児童のRSV予防に使用される)の同時投与が推奨されている.

特に注意が必要な対象集団

妊婦
  • 妊婦,授乳注の女性,妊娠活動中の女性,近日中に妊娠する可能性のある女性に対しては標準的な推奨に従ってワクチン接種を行う.
  • 妊婦,妊娠初期の妊婦は重症化のリスクが高く,胎児もリスクが高くなる.
  • ワクチンの有用性は,リスクを上回る.
  • 抗体は,新生児に移行する.
  • 授乳については禁忌はない.
免疫不全/HIV
  •   >12歳
2023-4mRNAワクチン以前のCOVID-19ワクチン接種歴
2023-24ワクチン
適応となる2023-24ワクチン接種回数
用量(mL/μg)
接種間隔
ワクチン未接種
ノババックス
2
0.5mL/5μg rS蛋白および50μgマトリックスMアジュバント
第1回-第2回:3週
いずれかのmRNAワクチンを3回以上接種
ノババックス
1
0.5mL/5μg rS蛋白および50μgマトリックスMアジュバント
最終接種から>8週
ノババックスまたはJanssenを1回以上,いずれかの祖先株一価または二価COVID-19ワクチン接種を含む
ノババックス
1
0.5mL/5μg rS蛋白および50μgマトリックスMアジュバント
最終接種から>8週
  • COVID-19ワクチン接種歴は,祖先株一価mRNAまたは二価mRNAワクチンまたは2つの組み合わせである:年齢12歳以上ならば,祖先株一価ノババックス接種,単独あるいはいずれかのmRNAワクチンとの組み合わせ,>18歳ならば,Janssen接種,単独あるいは,いずれかのmRNAワクチンまたは祖先株一価ノババックスワクチン接種である.
  • 12歳以上の免疫不全者には,推奨された2023-24ワクチン最終接種の≧2ヵ月後に最新のモデルナ,ノババックス,またはファイザーワクチン(2023-24型)の追加接種を受けるという選択肢がある.
  • 医療従事者の判断または本人の希望,周囲の状況により,さらなる追加接種を,2023-24mRNAワクチン最終接種≧2ヵ月後に受けてもよい.
  • 初回接種でノババックスCOVID-19ワクチンを受けた場合には,初回ワクチン接種コース2回をノババックスワクチンで完結させなければならない.
  • 最小接種間隔の4日前までに接種した場合は有効とみなされる.
  • 最小接種間隔前の4日の猶予期間より前に接種した場合には,繰り返す必要があるかもしれない.
  • 推奨される投与間隔の後に接種した場合はすべて有効である.

  
その他の検討事項
  • ワクチン接種完了後のHIV感染者では,重症化リスクは高くない.
  • CD4<350の場合は,ワクチン接種していても重症化リスクは高い;ワクチン状態を確実に最新化すること.
  • 中等度~重度免疫不全状態に関する自己申告は認められる.
  • HCTまたはCAR-T細胞治療レシピエントは,HCTまたはCAR-T細胞治療後≧3ヵ月にいずれかのCOVID-19ワクチンを再接種する.
  • B細胞除去療法(たとえば,リツキシマブ,Ocrelizumab)の短期コース中に1回またはそれ以上のワクチン接種(初回接種コースまたは二価追加接種)を受けたレシピエントには,治療完了6ヵ月後からの再接種を考慮する.
  • 免疫抑制治療中の患者でワクチン接種を遅らせてはならない.
  • COVID-19ワクチンは,免疫抑制治療開始または再開の少なくとも2週前に接種しなければならない.
  • B細胞除去治療中の患者では,次に予定されている治療の約4週前にワクチン接種を行う.

血清学検査

  • COVID-19ワクチン接種後の免疫反応の評価,またはワクチン未接種者のワクチン接種の必要性を評価するために抗体検査を行うことは推奨されない.
  • 予防との関連性はなく,それぞれの検査は大きく異なる.
  • IgG陽性による確認は,ごくわずか,B細胞産生能が不確実な移植患者や抗B細胞療法を受けている患者ではIgG陰性は指標として役に立たない.
  • 抗体検査を行った場合,その結果にかかわらず,ワクチン接種は推奨どおりに行わなければならない.
  • 前もってCOVID-19ワクチン接種を受けた場合でも,SARS-CoV-2ウイルス検査(核酸増幅法または抗原検査)の結果には影響がない.

コメント

  • 特に青少年では,ワクチン接種後に15分間の観察期間を置くことを考慮すべし.
  • 以下の場合には,ワクチン接種後に30分の観察期間を置くことを考慮すべし:
  • 他のCOVIDワクチンの禁忌に関連するアレルギー
  • 過去にいずれかのCOVIDワクチンに対して,非重症のアレルギー反応が(接種4時間以内に)あった.
  • COVID-19以外のワクチン接種や注射治療の後にアナフィラキシーを起こしたことがある.
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2024/09/02