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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
移植レシピエントのサイトメガロウイルス(CMV)感染
(
2023/09/12 更新
)
移植レシピエントでのCMV治療
概説/診断
概説
サイトメガロウイルス(CMV)感染は,固形臓器移植(SOT)・造血幹細胞移植(HCT)のどちらのレシピエントにおいても,最も重要なウイルス感染症の1つである.従来,SOTレシピエントでは移植直後(100日以内)に発症していたが,効果的な予防処方の導入により,現在では通常“後期"に,予防の中断により発症する(概説:
Transplantation 102: 900, 2018
).HCTレシピエントでは,生着に続いて移植後100日までに発症することが多いが,免疫抑制の程度によってはより遅く発症することもある.
リスク因子
SOT:血清抗体陽性ドナー(D+)と血清抗体陰性レシピエント(R-);抗体療法(サイモグロブリン,ATG,OKT-3,アレムツズマブ)によるリンパ細胞の枯渇.
HCT:血清抗体陰性ドナー(D-)と血清抗体陽性レシピエント(R+);T細胞枯渇または臍帯血移植;移植片対宿主病(GVHD)
疾病
"CMV症候群"(発熱,白血球減少症,血小板減少症±他の臓器障害)
消化管疾患(結腸・大腸炎,食道炎,腸炎)
肝炎
肺(臓)炎
中枢神経疾患(髄膜脳炎,脊髄炎)
その他(膀胱炎,網膜炎,腎炎その他)
診断
診断方法
PCR(最も一般的な検査法,血清,髄液,組織を用いる)
pp65抗原(あまり用いられない.好中球減少症患者では推奨されない)
培養(組織から,特異度が低い)
組織病理学(臓器障害の確認のためのゴールドスタンダード)
病原体
サイトメガロウイルス(CMV)
第一選択
ガンシクロビル
5mg/kg静注12時間ごと,または
バルガンシクロビル
900mg経口12時間ごと(
Am J Transplant 7: 2106, 2007
)
第二選択
Maribavir
400mg経口12時間ごと
ホスカルネット
90mg/kg静注12時間ごと
Cidofovir
5mg/kg静注・週1回
抗微生物薬適正使用
推奨される治療期間は?
治療期間は個々の患者に応じて決定する.次の条件が満たされるまで治療を続けること:(1)CMV PCRまたは抗原血が検出されなくなる,(2)臨床症状が解消する,(3)最低2~3週治療(
Clin Transplant 33: e13512, 2019
;
がん関連感染症の予防と治療に関するNCCNガイドライン
).
コメント
第一選択薬としてガンシクロビル静注がバルガンシクロビル経口より好ましいのはどのような場合か?
患者に生命の危険がある場合,非常にウイルス量が多い場合,消化管吸収が不十分なおそれがある場合は,ガンシクロビル静注が好ましい.
二次予防(維持療法)を行うのはどのような場合か?
SOTレシピエントではルーチンの二次予防(バルガンシクロビル900mg1日1回)は推奨されないが,最近高用量の免疫抑制治療(抗体によるリンパ球除去など)を受けた患者,重症CMV疾患患者,1回以上CMV疾患発症の既往がある患者(
移植患者-CMV感染の予防,固形臓器移植
参照)では二次予防が考慮されうる.HCTレシピエントでは,同様の場合に薬物毒性と感染再発リスクのバランスを考慮して検討する(
移植患者-CMV感染の予防,造血幹細胞移植
参照).再発リスクが高い患者では,二次予防中止後再び検討してもよい(
Clin Infect Dis 65: 2000, 2017
).
ガンシクロビル耐性の恐れがあるのはどのような場合か?
患者が長期の抗ウイルス治療を受けており,2週間の適切な治療後もウイルス量が低下しない場合にのみ耐性を考える.その他のリスク因子として,高度の免疫抑制や肺移植がある.UL97およびUL54遺伝子に対するCMV遺伝子型検査が利用可能で,耐性を確認できる.CMV UL97変異株はホスカルネットおよびCidofovirに感受性(および一部の変異株は高用量ガンシクロビルに感受性).CMV UL54変異株はガンシクロビル,ホスカルネット,Cidofovirに耐性となるため,他の治療法が必要と考えられる(
Clin Infect Dis 68: 1420, 2019
)
Maribavirをいつ使用するか?
Maribavirは,ガンシクロビル,バルガンシクロビル,ホスカルネットまたはCidofovirに耐性または難治性のCMV疾患の治療薬として承認されている. 第III相ランダム化臨床試験において,Maribavir群ではウイルスクリアランスが56%の症例で得られたのに対し,他の治療薬群では24%の症例に留まった(
Clin Infect Dis 2021年12月2日
).MaribavirはHSVやVZVには無効のため,これらのウイルスに対する予防や治療が必要な場合には,別の薬剤が必要となる.
IVIGまたはCMV高力価免疫グロブリンの役割は?
これらの薬剤は,生命の危険のある場合の補助治療として検討できる.HCTレシピエントを対象とした研究において,過去の対照群と比べた場合に,IVIG(
Ann Intern Med 109: 777, 1988
)およびCMV高力価免疫グロブリン(
Ann Intern Med 109: 783, 1988
)のガンシクロビルへの追加はどちらも有用性が高いことが示された.より最近の研究でこの治療の有用性を支持するものはない(
Clin Infect Dis 61: 31, 2015
).
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2023/09/11