日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎-Mycoplasma  (2023/03/14 更新)


臨床状況

  • Mycoplasma pneumoniaeは「非定型」肺炎の原因菌の1つ.
  • 発熱,頭痛,筋肉痛,乾性咳嗽,胸部X線上で両側浸潤影を伴い,ときに咽頭炎,鼻閉,中耳炎を合併することもある.
  • 肺外病変
  • 中枢神経合併症:髄膜脳炎,横断脊髄炎,Guillain-Barre症候群
  • 皮膚:じんま疹,結節性紅斑,多形紅斑,Steven-Johnson症候群
  • その他:関節炎,糸球体腎炎
  • 診断:喀痰または咽頭/鼻咽頭スワブPCRがゴールドスタンダード.以前は特異抗体価の4倍上昇がゴールドスタンダードだった.

病原体

第一選択

  • DOXY 100mg静注†または経口1日2回・7~10日
  • DOXYが入手できない場合は,MINO 200mg経口または静注・1回,その後100mg経口または静注1日2回.

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • AZM 初日500mg経口,その後250mg経口1日1回・4日(コメント参照)
  • LVFX 750mg経口または静注・5日

コメント

  • 小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では,薬剤とその着色分解物質がエナメル質に沈着することにより,歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.
  • DOXYは短期間(≦21日)ならば,患者の年齢にかかわらず安全に投与できる(AAP Red Book 2018;J Pediatr 166: 1246, 2015).DOXYは,他のテトラサイクリン系薬にくらべカルシウムへの結合力が弱く,最近の比較データからは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている.
  • マクロライド耐性:
  • in vitroにおけるマクロライド抗菌薬耐性の報告が,特にアジアで増加している.全米のサーベイランスでは,分離株の7.5%がマクロライド耐性であることが示されている.テトラサイクリン系やフルオロキノロン系への感受性は保たれている.
  • 少なくとも中国では,耐性株による臨床症状は本質的により重症となる可能性がある.感染が主に小児で起こるため,テトラサイクリン系またはフルオロキノロン系は選択できず,そのため臨床症状がより重度になる.Red Bookは21日までならDOXYは小児でも安全としている(Antimicrob Agents Chemother 58: 1034, 2014).
  • DOXYがAZMよりも好まれるのは,マクロライド耐性株の報告が増加しており,テトラサイクリンのほうがアウトカムが良いという理由だけである(Infect Dis Clin No Amer 33: 1087, 2019).
  • ときとして重症肺炎や急性呼吸促迫症候群(ARDS)の原因となる.
  • CLDMとβラクタム系薬は有効でない.
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2023/03/13