日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

喉頭蓋炎,声門炎  (2025/05/27 更新)


臨床状況

  • 喉頭蓋および周辺組織の炎症.
  • 主として感染が原因だが,腐食性物質の注入や異物により咽頭蓋炎が起こることがある.
  • 急激に進行して気道閉塞に至ることがある
  • 気道閉塞のリスクがあるため,気管切開セットを“ベッドサイドに"用意.
  • 年少の小児では流涎,不安,匂いを嗅ぐ姿勢(sniffing posture:頭を前方に突き出し首を前屈させる)を呈する.
  • 年長の小児および成人では,激しい喉の痛み,嚥下困難,流涎,嗄声を訴える.
  • 喘鳴は,あれば本症の可能性があるが,無い場合もある.

病原体

  • 免疫正常の小児および成人
  • H. influenzae b型(かつては主要な原因菌だったが,現在ワクチン接種を受けた人の間ではまれ)
  • β溶血性Streptococcus(A,B,C,F,G群)
  • S. aureus(MRSAを含む)
  • S. pneumoniae
  • 他の H. influenzae 莢膜型および分類不能型菌株
  • Neisseria meningitidis
  • Pasteurella multocida
  • Moraxella catarrhalis
  • Coliformsはまれ:たとえば,Enterobacter 属,E. coliKlebsiella
  • さまざまなウイルス:呼吸器ウイルス(インフルエンザウイルス, パラインフルエンザウイルス),単純ヘルペスウイルス,水痘-帯状疱疹ウイルス,EBV,SARS-CoV-2
  • 免疫不全状態の小児および成人
  • P. aeruginosa
  • Candida

第一選択

  • 血液および気道分泌物の培養
  • 第一の目標は気道の確保.可能なら耳鼻科,麻酔科とただちに連携する.挿管を試みるならビデオ喉頭鏡の使用が必要.挿管が失敗した場合には,気管切開またはクリコチロイドトミー(緊急気道)が必要となることがある
  • 小児:(CTRX 75mg/kg静注24時間ごとまたはCTX)+VCM 60~80mg/kg/日静注3~4回に分割(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす.コメント参照)
  • 成人:CTRX 2g静注24時間ごと,またはCTX 2g静注4~8時間(使用できれば)+VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLをめざす)
  • 治療期間はさまざま.気道浮腫が十分に解消し,気管内チューブを抜去しても安全となるまで治療を継続する.

第二選択

  • IgE関連の重症ペニシリンアレルギーの場合
  • 小児:LVFX(コメント参照)16~20mg/kg/日(12時間ごとに分割,最大750mg/日)+CLDM 7.5mg/kg静注6時間ごと(コメント参照)
  • 成人:LVFX 750mg静注24時間ごと+CLDM 600~900mg静注6~8時間ごと

コメント

  • 注:腎機能が正常な乳児および年長児では,従来のVCM 45~60mg/kg/日ではしばしば目標AUCに到達できないことがある.AUC24を用いて400μg/mL近くになれば,ほとんどの非CNS感染に対しては十分(Clin Infect Dis 71: 1361, 2020).
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2025/05/26