Atripla（エムトリシタビン/テノホビル/エファビレンツ） (2024/09/24 更新)

Contents

1.　用法および用量
　 1.　使用
　 2.　成人用量
　 3.　小児用量
　 4.　腎障害時の用量調整
　 5.　肝障害時の用量調整
2.　副作用/妊娠時のリスク
3.　抗微生物スペクトラム
4.　薬理学
5.　主要な薬物相互作用

1.　用法および用量

　1.　使用

HIV感染患者に対する併用処方で，単錠固定用量合剤として使用される．
エムトリシタビンを中止した患者でB型肝炎増悪が報告されている．抗HBV治療が必要となることもある（B型肝炎治療を優先する）．
Atriplaは現在でも妊娠危険区分D．Efavirenzによる胎児毒性（神経管欠損）リスクの可能性があることから，FDAは妊婦および妊娠の可能性がある女性での使用に対して警告を発している．しかし複数の専門家グループが，妊婦でのEfavirenz使用は安全であり（WHOガイドライン），Efavirenzを使用している患者が妊娠した場合でも治療を続けてよいとしている（HHS周産期ガイドライン，clinicalinfoHIVガイドライン）．
それぞれの薬剤参照：

NRTIの副作用は，抗レトロウイルス薬－概説を参照．
ジェネリック製品が使用可能（米国の状況）

　2.　成人用量

通常用量	1錠経口24時間ごと，空腹時，就寝時が望ましい．

成分：EFV 600mg＋FTC 200mg＋TDF 300mg

　3.　小児用量

用量（生後＞28日）	年齢＞12歳，体重≧40kg：1錠24時間ごと
最大/日	－

　4.　腎障害時の用量調整

体重およびクレアチニンクリアランス（CrCl）推定値の計算法
CAPD: 持続的携行型腹膜透析， CRRT: 持続的腎代替療法，SLED: 長時間低効率血液透析

半減期（時間）（腎機能正常）	EFV：40～55 FTC：10 TDF：17
半減期（時間）（ESRD）	EFV：データなし FTC：＞10 TDF：延長
用量（腎機能正常）	1錠経口24時間ごと
CrClまたはeGFR	CrCl≧50：1錠24時間ごと CrCl＜50：使用しない
血液透析	使用しない
CAPD	使用しない
CRRT	使用しない
SLED	使用しない

　5.　肝障害時の用量調整

軽度肝障害患者での用量調整は不要（注意深く使用する）．
中等度～重度肝障害患者には推奨されない．

2.　副作用/妊娠時のリスク

副作用

それぞれの薬剤参照（エムトリシタビン，テノホビル，Efavirenz）．

妊娠時のリスク

FDAリスク区分（旧）：D
授乳中の使用：ARTがなされていて，妊娠期間を通じてウイルス量が抑制されていれば，リスクと有用性についてのカウンセリングを行った上での乳児哺乳は合理的な選択肢となる．

3.　抗微生物スペクトラム

4.　薬理学

分類	非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬（NNRTI）
Atripla1錠中の含有量	錠：EFV 600mg＋FTC 200mg＋TDF 300mg
食事に関する推奨（経口薬）1	錠：食事なし
経口吸収率（％)	EFV：42 FTC：93 TDF：25
Tmax9（時間）	EFV：3～5 FTC：1～2 TDF：1
最高血清濃度2 （μg/mL）	EFV：12.9μM（600mg24時間ごと，SS） FTC：1.8（200mg24時間ごと，SS） TDF：0.3（300mg24時間ごと，SD）
蛋白結合（％）	EFV：＞99.5 FTC：＜4 TDF：＜0.7
分布容積3（Vd）	EFV：252L（V/F） FTC：データなし TDF：1.2～1.3L/kg（Vss）
平均血清半減期4 （T1/2, 時間）	EFV：40～55 FTC：10 TDF：17
排泄	EFV：代謝 FTC：腎 TDF：腎
細胞内半減期4（T1/2, 時間）	EFV：データなし FTC：39 TDF：＞60
脳脊髄液/血液5（％）	EFV：データなし FTC：データなし TDF：データなし
中枢神経系移行効果（CPE）6	EFV：3 FTC：3 TDF：1
AUC7（μg・時間/mL）	EFV：184μM・時間（600mg24時間ごと，0～24時間） FTC10（200mg24時間ごと，0～24時間）： TDF：2.3（300mg24時間ごと，0～24時間）

注記のない場合は成人用経口製剤
SD：単回投与後，SS：複数回投与後の定常状態
V/F：（Vd）÷（経口生物学的利用能），Vss：定常状態におけるVd，Vss/F：（定常状態におけるVd）÷（経口生物学的利用能）
CrCl＞80 mL/分と想定
炎症時における脳脊髄液濃度
CPE（中枢神経系移行効果）値　1：低度，2～3：中等度，4：高度（Letendre, et al., CROI 2010, abs #430）
AUC：血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve．0～inf＝AUC0-inf，0～ｘ時間＝AUC0-x

5.　主要な薬物相互作用

薬剤	濃度への影響（その他）	推奨される対応
アルテメテル/ルメファントリン	アルテメテル↓，DHA↓，ルメファントリン↓	併用を避ける
アタザナビル/リトナビル	アタザナビル↓ TDFの濃度↑	併用を避ける
アトルバスタチン	アトルバスタチン↓	モニター，用量調整
アトバコン/プログアニル	アトバコン↓，プログアニル↓	併用を避ける
ブプロピオン	ブプロピオン↓	モニター，用量調整
カルバマゼピン	カルバマゼピン↓，EFV↓	他の抗けいれん薬を使う
クラリスロマイシン	クラリスロマイシン↓ 14-OH代謝物↑	併用を避ける
シクロスポリン	シクロスポリン↓	モニター，用量調整
Didanosine	Didanosine↑	モニター，用量調整
ジルチアゼム	ジルチアゼム↓，代謝物↓	モニター，用量調整
ホルモン性避妊薬	プロゲステロン↓ エチニルエストラジオール↓？	バリア法を使う
イトラコナゾール	イトラコナゾール↓，ヒドロキシイトラコナゾール↓	併用を避ける
ケトコナゾール	ケトコナゾール↓	モニター，用量調整
レジパスビル/ソホスブビル	TDF↑	モニター
ロピナビル/リトナビル	ロピナビル↓ TDF↑	モニター，用量調整
マラビロク	マラビロク↓	指針としてマラビロク，概説参照
Methadone	Methadone↓	モニター，用量調整
フェノバルビタール	フェノバルビタール↓，EFV↓	モニター，用量調整
フェニトイン	フェニトイン↓，EFV↓	モニター，用量調整
ポサコナゾール	ポサコナゾール↓	併用を避ける
プラバスタチン	プラバスタチン↓	モニター，用量調整
ラルテグラビル	ラルテグラビル↓	モニター
リファブチン	リファブチン↓	リファブチンを少なくとも50％増量
リファンピシン	EFV↓	EFV追加を考慮
セルトラリン	セルトラリン↓	モニター，用量調整
シメプレビル	シメプレビル↓	併用を避ける
シンバスタチン	シンバスタチン↓	モニター，用量調整
シロリムス	シロリムス↓	モニター，用量調整
タクロリムス	タクロリムス↓	モニター，用量調整
ベルパタスビル/ソホスブビル	TDF↑ ベルパタスビル↓	併用を避ける
ボリコナゾール	EFV↑ ボリコナゾール↓	併用禁忌
ワルファリン	影響は不明	INRをモニター，用量調整