日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ニューモシスチス肺炎(PJP),予防  (2025/07/22 更新)


臨床状況

  • Pneumocystis jirovecii肺炎(PJP)は,免疫不全患者,特にHIV/AIDS患者に発症し,致命的となる危険性のある真菌性肺炎である.
  • 以下のような患者にリスクがある
  • HIV/AIDS患者で,CD4数<200/μL
  • 固形組織または造血幹細胞移植レシピエント.対照比較研究では,移植後PJPは,活動性CMV,同種移植の拒絶反応,予防の終了と関連していた:Clin Infect Dis 68: 1320, 2019
  • がん化学療法を受けている患者,特に高用量ステロイド治療を受けている患者(1日Prednisone≧20mgまたは等価用量を1ヵ月以上).
  • 1日Prednisone≧20mg(または等価用量)を必要とする一部のリウマチ患者
  • 一次予防/慢性抑制の適応
  • CD4数100~200/mm3,血清HIV RNAレベルが検出可能域を超えている場合
  • CD4数<100/mm3,血清HIV RNAレベルにかかわりなく
  • その他の対象
  • Prednisone≧20mg/日の等価用量を>1ヵ月服用している患者すべて
  • アレムツズマブ(慢性リンパ性白血病治療のためのモノクローナル抗体),テモゾロミド(星状細胞腫治療のためのアルキル化剤)での治療を受けている患者
  • 免疫抑制中の造血細胞/固形臓器移植レシピエント
  • フルダラビン(プリン類似体で血液癌治療に用いられる)治療を受けている患者
  • Prednisone+シクロホスファミド治療を受けているWegener肉芽腫症患者
  • HIV/AIDS患者でPJP一次予防中止が適応となる場合
  • ARTに反応してCD4数が<200/mm3から≧200/mm3に増加し,ARTの十分な効果が3ヵ月以上続いた
  • CD4数が100~200/mm3でHIV RNAが使用した検査機器の検出限界以下の状態が≧3~6ヵ月続いた場合には中止を考慮してもよい
  • HIV/AIDS患者でPJP二次予防中止が適応となる場合
  • ARTの結果,CD4数が<200/mm3から≧200/mm3に増加して≧3ヵ月続いた場合,またはCD4数が100~200/mm3でHIV RNAが使用した検査機器の検出限界以下の状態が≧3~6ヵ月続いた場合には中止を考慮してもよい.
  • HIV感染者で,ARTをうけておらず,CD4数>200/mm3の状態でPJPを発症した場合には,いったんHIV RNAが使用した検査機器の検出限界以下となり,その状態が≧3~6ヵ月続いた場合には中止を考慮してもよい.ただし,こうした状況での推奨を支持するデータはない.
  • ART治療中に,CD4数>200/mm3の状態でPJPを発症した場合には,特に血清HIV RNAが検出限界以下であれば,ARTの結果としてCD4数がどれだけ上昇しようとも,PJP予防を生涯にわたって継続するのが賢明である.
  • HIV/AIDS患者でPJP予防再開が適応となる場合
  • HIV RNAレベルにかかわらずCD4数<100/mm3
  • CD4数100~200/mm3で,HIV RNAがつねに使用した検査機器の検出限界をうわまわる

病原体

  • Pneumocystis jirovecii

第一選択

  • ST 2錠経口24時間ごと
  • ST 1錠経口24時間ごと

第二選択

  • 以下の処方は,Toxoplasma gondii血清反応陽性または陰性の患者で使用可能
  • ST 2錠経口週3回
  • 以下の処方は,Toxoplasma gondii血清反応陰性の患者でのみ使用される:
  • ペンタミジン吸入†300mg・Repigard IIネブライザーを通じて吸入1月ごと

(†:日本にない剤形)

コメント

  • STに反応する患者:ジアフェニルスルホンは,STに対する軽度の反応がある患者でも忍容性が高いことが多い.重症のST反応の既往がある患者については,多くの専門家はジアフェニルスルホンを避けることを推奨している.
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2025/07/22