日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

B型肝炎-再活性化  (2025/11/11 更新)
B型肝炎ウイルス再活性化,免疫抑制治療後


臨床状況

  • コルチコステロイド,がん化学療法,生物学的製剤,その他の免疫抑制薬による免疫抑制治療後,あるいは幹細胞移植や固形臓器移植中などに,HBV再活性化による重症肝炎の報告が多くあり,その中には死亡例も含まれる.
  • 生物学的製剤のなかで,HBV再活性化と最も相関しているのはリツキシマブおよびオファツムマブである(FDAが警告を発表:Hepatology 61: 703, 2015),TNF阻害薬との関連性も示唆されている(Clin Rheumatol 31: 931, 2012).
  • 血清学的に感染が治癒した(HBsAg陰性/HBsAb陽性/HBcAb陽性)ことが示されている場合でも,HBVゲノムは感染肝細胞の核内に小型の閉鎖環状DNAとして静かに残存している可能性がある.
  • B型肝炎ウイルス(HBV)は,免疫抑制療法を受けている患者,たとえ以前にHBsAgが消失し,HBsAbを保有していた患者であっても,再活性化する可能性がある.
  • HBV再活性化のリスク評価に関する推奨(AGA診療ガイドライン:リスクのある個人におけるHBV再活性化の予防と治療;Gastroenterology 168: 267, 2025
  • HBV感染スクリーニング:HBs抗原,HBs抗体,HBc抗体をチェック
  • HBV再活性化リスク評価:高リスク:>10%;中等度リスク:1~10%;低リスク:<1%
  • HBs抗原陽性
  • 高リスク:アンスラサイクリン誘導体(ドキソルビシン,エピルビシン);TNF阻害薬;抗IL-6療法(トシリズマブ);B細胞除去薬(リツキシマブ,オファツムマブ);CAR-T細胞療法;サイトカイン/インテグリン阻害薬(ウステキヌマブ,セクキヌマブ);DAA療法中のHCV重複感染;JAK阻害薬;動脈塞栓化学療法(TACE);チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)療法(イマチニブ,スニチニブ);中等量/高用量のコルチコステロイド投与(4週間以上)
  • 中等度リスク:抗T細胞治療(アバタセプト);免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,イピリムマブ);低用量コルチコステロイド≧4週投与
  • 低リスク:メトトレキサート,6-メルカプトプリン,アザチオプリン
  • HBs抗原陰性/HBc抗体陽性
  • 高リスク:B細胞除去薬(リツキシマブ,オファツムマブ)
  • 中等度リスク:アンスラサイクリン誘導体(ドキソルビシン,エピルビシン);抗IL-6療法(トシリズマブ);抗T細胞治療(アバタセプト);CAR-T細胞療法;サイトカイン/インテグリン阻害薬(ウステキヌマブ,セクキヌマブ);JAK阻害薬;動脈塞栓化学療法(TACE);チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)療法(イマチニブ,スニチニブ);中等量/高用量コルチコステロイド≧4週投与
  • 低リスク:TNF阻害薬;DAA療法中のHCV重複感染;免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,イピリムマブ);低用量コルチコステロイド≧4週投与;メトトレキサート,6-メルカプトプリン,アザチオプリン
  • HBV再活性化予防のための推奨
  • 高リスク:下記予防処方
  • 中等度リスク:下記予防処方
  • 低リスク:定期的にHBV DNA, HBs抗原,肝機能検査をモニター

第一選択

第二選択

  • ラミブジン100mg経口1日1回(耐性障壁が低いため,重度の免疫抑制状態にある患者,HBV DNA陽性患者,長期の免疫抑制状態にある患者では使用を避ける)

治療期間

  • 予防は免疫抑制治療後6~12カ月.リツキシマブ,アレムツズマブ,その他の抗体除去薬投与中,および幹細胞移植患者では最低でも12カ月行うことが望ましい

コメント

  • 再活性化低リスクの患者がモニタリング戦略を受けている場合,月1回の肝機能検査(LFT)を実施しているとするなら,3ヵ月ごとにHBV DNAを検査することが妥当なアプローチである.再活性化中等度リスクの患者が予防ではなくモニタリングを受けている場合は,より頻繁なHBV DNAのモニタリングが妥当となる場合がある.
  • 患者が予防ではなくモニタリングを受ける場合,HBV DNAが新たに検出された場合は,ただちに抗ウイルス療法(エンテカビル)を開始する必要がある.
  • 過去にラミブジンを投与された患者の場合,ラミブジンとエンテカビルとの交差耐性の可能性があることから,テノホビル製剤のいずれか(TDFまたはTAF)が推奨される.
  • R-CHOP療法を受けているHBs抗原陽性の患者では,ラミブジンと比較してエンテカビルの使用はB型肝炎再活性化の発現が少ないことが示された(JAMA 312: 2521, 2014).
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2025/11/10