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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
B型肝炎-再活性化
(
2020/7/21 更新
)
B型肝炎ウイルス再活性化,免疫抑制治療後
臨床状況
すでにHBs抗原が消失しHBs抗体がある患者でも,免疫抑制治療後にB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化が起こることがある.
コルチコステロイド,がん化学療法,生物学的製剤,その他の免疫抑制薬による免疫抑制治療後,あるいは幹細胞移植や固形臓器移植中などに,HBV再活性化による重症肝炎の報告が多くあり,その中には死亡例も含まれる.
生物学的製剤のなかで,HBV再活性化と最も相関しているのはリツキシマブおよびオファツムマブである(FDAが警告を発表:
Hepatology 61: 703, 2015
),TNF阻害薬との関連性も示唆されている(
Clin Rheumatol 31: 931, 2012
).
つまり,血清検査で感染消失のエビデンスが得られた場合でも,HBV遺伝子が感染肝細胞の核内で,小型閉環状DNAとして存在し続けている場合がある.
HBs抗原陰性,HBc抗体(IgG)陽性,HBs抗体陰性およびHBV DNA核酸増幅検査(NAAT)が陽性または陰性の患者ではHBV潜伏が疑われる.これらの検査はがん化学療法,移植,または重症リウマチ性疾患での免疫抑制薬使用前の患者スクリーニングに用いられる.
文献:
Ann Intern Med 164: 30, 2016
;
Infect Dis Clin N Am 34: 341, 2020
.
HBV感染スクリーニング:
推奨される検査項目:HBs抗原,HBs抗体,HBc抗体
HBs抗原またはHBs抗体またはHBV DNA(3つのうちいずれか,または組み合わせ)が陽性の場合は,予防的なHBV治療を開始する.
第一選択
HBs抗原陽性
HBV DNA<2000 IU/mLかつ<12カ月(免疫抑制):
ラミブジン
100mg経口1日1回
HBV DNA>2000 IU/mLまたは>12カ月(免疫抑制):
エンテカビル
0.5mg経口1日1回
HBs抗原陰性,HBc抗体陽性,HBs抗体陽性または陰性
高リスク患者(下記参照):
ラミブジン
100mg経口1日1回
低リスク患者:早期モニタリング vs
ラミブジン
100mg経口1日1回
第二選択
HBs抗原陽性:
テノホビル
300mg経口1日1回
HBs抗原陰性,HBc抗体陽性,HBs抗体陽性または陰性:
エンテカビル
0.5mg経口1日1回
上記以外のアプローチとして,HBV DNAが検出可能となった直後から早期の抗ウイルス治療を開始する方法がある(
Clin Infect Dis 61: 719, 2015
):
(リツキシマブまたはオファツムマブ)+コルチコステロイドの投与中は,1カ月ごとにHBV DNAを測定する.
HBV再活性化は,血中HBV DNA>11 IU/mLと定義される.
再活性化が認められたら,ただちに
エンテカビル
0.5mg/日を開始する.
抗微生物薬適正使用
予防期間:免疫抑制治療後6~12カ月.リツキシマブ,アレムツズマブ,その他の抗体除去薬投与中,および幹細胞移植患者では最低でも12カ月行うことが望ましい
コメント
高リスク患者:血液悪性腫瘍に対する化学療法,幹細胞移植,臓器移植,リツキシマブ,オファツムマブ,重度の免疫抑制をもたらすその他の処方,HBV DNA陽性
低リスク患者:上記のような高リスクとは考えられない免疫抑制が軽度な処方
予防は,免疫抑制治療より前(1カ月)または少なくとも治療時には開始していること.
予防を行うすべての患者に対し,初年度は3カ月おきにHBV DNA,肝機能,HBs抗原(開始時にHBs抗体陰性の場合)をモニタリングすること.予防よりも早期モニタリングが望ましい場合には1~3カ月おきのモニタリングを検討する.HBV DNA陰性であれば,モニタリングの回数は少なくてよい.
米国消化器学会ガイドライン:
Gastroenterology 148: 215, 2015
.
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2020/07/16