日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

髄膜炎-L. monocytogenes  (2026/08/04 更新)
L. monocytogenesによる髄膜炎の特異的治療


臨床状況

  • 先行する抗菌薬治療がない場合には,約3/4の症例で髄液培養L. monocytogenes陽性,先行する抗菌薬治療がある場合には陽性率は低い.
  • グラム染色(約30%が陽性)で小さく,ときとして多型のグラム陽性桿菌.
  • リスク因子:年齢>65歳または生後<30日,妊娠,アルコール依存,肝硬変,免疫不全患者.
  • 他の細菌によるものよりも症状は急性でないことが多い.

病原体

第一選択

  • 成人:ABPC 2g静注4時間ごと(またはAMPC,米国以外)(GM使用についてはコメント参照)
  • 小児:ABPC 300~400mg/kg/日6時間ごとに分割,または ST 20mg/kg/日(トリメトプリムの成分に基づく)6~12時間ごとに分割(GM使用についてはコメント参照)

第二選択

  • 重症ペニシリンアレルギー
  • ST 20mg/kg/日(トリメトプリムの成分に基づく)6~12時間ごとに分割

治療期間

  • 髄膜炎では3週
  • 脳炎または脳膿瘍では4~6週.

コメント

単剤治療 vs. 併用治療
  • リステリア菌血症および神経リステリア症の治療において、β-ラクタム系抗菌薬単剤療法(ABPCまたはAMPC)とβ-ラクタム系抗菌薬GM併用療法を比較したランダム化対照比較試験はない.ABPC-GM併用療法の推奨は,in vitro,動物モデル試験,観察データのみに基づいた従来の推奨である.観察研究の結果は矛盾している(矛盾する結果の例については,Lancet Infect Dis 17: 510, 2017およびEur J Clin Microbiol Infect Dis 38: 2243, 2019を参照).
  • 最大規模の観察研究であるMONALISA試験(Lancet Infect Dis 17: 510, 2017)では,リステリア症患者のうち菌血症を伴う神経リステリア症において,AMPC-GM併用療法は単剤療法と比較して90日死亡率が低いことが示された.しかし,菌血症を伴わない神経リステリア症では,併用療法は死亡率の低下とは関連しなかった.
  • 菌血症を伴う神経リステリア症では併用療法により死亡率が低下したものの、生存患者と死亡患者ではリスク因子に重要な違いがみられた
  • 死亡患者の38%に多臓器不全がみられたのに対し,生存患者では6%であった.死亡患者の58%に既存の臓器機能不全の悪化がみられたのに対し,生存患者では20%であった.死亡患者の平均GCS(Glasgow Coma Score)は生存患者よりも低かった.死亡患者の72%に菌血症がみられたのに対し,生存患者では52%であった.死亡患者の34%に悪性腫瘍がみられたのに対し,生存患者では21%であった.死亡患者の平均年齢は74歳で,生存患者の平均年齢68歳よりも有意に高かった.
  • これらの多くの理由から,本研究は死亡率を高めることがよく知られている多数の因子によって交絡されており,これらの因子はGM投与の可否にも影響を与えた可能性が高い.さらに,多重比較に対する調整が行われていないため,偽発見率が高くなっている.また,不死時間バイアス(GMを1日以上投与されるには生存していなければならない)に対する調整も行われていない.したがって,GM併用療法が死亡率や神経学的後遺症を真に改善するという確信度は低い(持続的な神経学的欠損のない患者102人中83人[81%]がアミノグリコシド系抗菌薬を投与されたのに対し,持続的な神経学的欠損のある患者では,79人中68人[86%]が投与された).
  • GMの毒性は,特に高齢者や併存疾患のある患者において顕著であることが知られているため,リステリア症(中枢神経系疾患その他)の治療において,GM併用療法をルーチンで使用することは推奨されない.
補助的ステロイド
  • デキサメタゾンの補助療法の役割は不明.2006年1月1日~2022年7月1日の162名の患者を対象としたオランダの単一前向き研究では,デキサメタゾンの補助療法がL. monocytogenes髄膜炎の患者162名における転帰の改善と関連していることが示された(EClinicalMedicine 58: 101922, 2023).
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2026/08/03