日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

遊走性紅斑, ライム病-早期  (2024/06/04 更新)
ダニによって伝染するスピロヘータ疾患,早期ライム病,遊走性紅斑の治療


臨床状況

  • 遊走性紅斑は患者の70~80%に出現する皮膚病変である.ライム病の初期症状で,ダニによって伝播されるスピロヘータ疾患である.他の病期と症状についてはライム病-概説を参照.
  • 米国では,北東部,中大西洋岸および中北部で4~9月に多くみられる.北カリフォルニアとオレゴンではまれ.

病原体/診断

病原体
  • B. mayoniiはミネソタ,ウィスコンシン,ノースダコタで同定された.重度のスピロヘータ血症,播種性発疹(Lancet Infect Dis 16: 556, 2016).
  • ヨーロッパではヒトに疾患を起こす種が5種類以上いる.臨床症状は多様.
  • マダニが媒介.写真は幼虫段階のダニ


マダニ(Ixodes tick),幼虫段階
診断
  • 診断法についての詳細は,ライム病-診断およびEmerg Infect Dis 22: 1169, 2016を参照.
  • ライム病初期では抗体検査は陰性のことが多い:抗体産生まで4~6週かかる.
  • 遊走性紅斑に典型的な皮膚病変が1箇所または数箇所にある場合は,診断検査は推奨されない
  • 抗体検査が適応となるのは,以下の場合:
  • 流行地に滞在した.
  • ダニへの曝露のリスク因子があった.
  • 髄膜炎,神経麻痺,心臓炎,関節炎などの後期所見.
  • 特異的抗体に対する2段階の血液検査
  • 酵素免疫法(EIA)検査または免疫蛍光法(IFA)検査を行い,続いてウエスタンブロット(WB)を行う:EIAまたはIFAが陰性ならば,それ以上の検査は推奨されない.
  • ウエスタンブロット診断基準(EIAまたはIFAが陽性ならば検査を行う)
  • B. garinii またはB afzelli による欧州のライム病の検出に優れている.
  • IgG抗体―18,21,28,30,39,41,45,58,66,93KDのうち少なくとも5つが陽性となる必要がある
  • IgMまたはIgG抗体検査の感度は疾患初期の2週間では不十分.
  • 第二世代の抗体検査:C6に対する抗体.発生率が高い地域ではBabesia microtiAnaplasma phagocytophilum との重複感染を確認する必要がある
  • 上述した2段階テストよりも特異度は低いが,感染のより早い段階で陽性が得られる
  • ウエスタンブロット法によるIgM抗体の真の陽性と偽陽性の鑑別に役立つ.
  • B. garinii またはB afzelli による欧州のライム病の検出に優れている.
  • 髄液や関節液のPCRでも病原体の検出が可能なことがある.
  • Babesiaの診断:血液塗抹で目に見える,血清学的検査またはPCR.
  • Anaplasmaの診断:塗抹の感度は低い,血清学的検査またはPCR.

第一選択

  • 重複感染(たとえば,ライム病,アナプラスマ症,バベシア症)がある場合に考慮する治療については,コメントを参照.
  • 成人:
  • DOXY 100mg経口1日2回・10日
  • AMPC 500mg経口1日3回・14日
  • CXM-AX 500mg経口1日2回・14日
  • 注:CXM懸濁液は米国では入手できないが,他の市場では入手可能なこともある.
  • CEXは無効
  • 小児:
  • DOXY 4.4mg/kg/日12時間ごとに分割(最大200mg/日)
  • AMPC 50mg/kg/日経口3回に分割,またはCXM-AX 30mg/kg/日経口2回に分割)・14~21日
  • AZM 10mg/kg/日経口・7~10日

第二選択

  • AZM 500mg経口1日1回・7日
  • 妊婦:AMPC 500mg経口1日3回・14日(妊婦ではDOXYを避ける).

コメント

  • 重複感染:
  • 重複感染がある場合,DOXYはアナプラスマ症にも有効(バベシア症には無効)
  • AMPCおよびCXM-AXは,バベシア症や顆粒球性アナプラスマ症には無効と考えられる
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2024/06/04