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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
フィラリア症-リンパ管フィラリア症:象皮病
(
2024/12/10 更新
)
象皮病,リンパ管フィラリア症
臨床状況
ほとんどの感染者は無症候性のミクロフィラリア保有者である.
一過性のリンパ管炎,リンパ浮腫,象皮病が四肢や乳房に起こることがあり,男性では水瘤を引き起こすことがある.
Brugia malayi
は,通常膝下のみだが,感染を起こしたリンパ節で冷膿瘍を引き起こす.
夜間の喘息と両側性の間質湿潤を伴う熱帯性の肺好酸球増加症.
Podoconiosis(風土病の非フィラリア症性象皮病)と混同されることがある(コメント参照).
各薬剤は1つの生活環でのみ作用し,それ以外では作用しないことを理解すべき.
ロア糸状虫症またはオンコセルカ症(河川盲目症)
との二重感染の有無を確認する必要がある.
世界のあらゆる地域で異なった節足動物に媒介される.
診断/病原体
染色した血液フィルムからミクロフィラリアを検出(採血は夜行う)
血中抗原検査(広く利用可能ではない)
多くの血清学検査では抗
Filaria
抗体を検出するだけで,ヒトの8つの
Filaria
属を鑑別することはできない.
血清学検査では,現在の感染か過去の感染かを区別することはできない.
病原体
Wuchereria bancrofti
(バンクロフト糸状虫)
Brugia malayi
(マレー糸状虫)
B. timori
診断
第一選択
無症候性ミクロフィラリア血症を含む単独感染:オンコセルカ症やロア糸状虫症の徴候はない.
ジエチルカルバマジン
6mg/kg1回+
DOXY
200mg/日経口・6週.
成人および月齢>18カ月の小児で,熱帯性肺好酸球増加症がある場合は,
ジエチルカルバマジン
6mg/kg/日で21日間治療する.
オンコセルカ症(河川盲目症)との二重感染
ジエチルカルバマジン
はオンコセルカ症患者の皮膚や目のミクロフィラリアを殺虫する可能性もあるが,深刻な炎症を引き起こす.
まずオンコセルカ症の治療を行う:
イベルメクチン
150μg/kg経口または
Moxidectin
8mg経口を1回投与し,1カ月待ってからリンパ管フィラリア症に対する
ジエチルカルバマジン
を開始する.
この場合にイベルメクチンまたはMoxidectinの代替薬として考えられる選択肢:
DOXY
200mg経口1日1回・4~6週,その後
ジエチルカルバマジン
を開始.
ロア糸状虫症との二重感染
ジエチルカルバマジン
は,リンパ管フィラリア症とロア糸状虫症双方の選択薬であるが,
Loa Loa
の血中ミクロフィラリア濃度>2500/mLでは,深刻な脳症が起こることがある.
ロア糸状虫症の血中ミクロフィラリア濃度<2500/mLの場合は,
ジエチルカルバマジン
9mg/kg/日経口を3回に分割・21日.
ロア糸状虫症のミクロフィラリアがありさえすれば,最初の3日間は50,150,その後300mgを3回に分轄投与から開始してもよい.
ロア糸状虫症の血中ミクロフィラリア濃度>2500/mLの場合:治療前にアフェレーシスを行う可能性があるため,専門施設に紹介すること.
またはイベルメクチン150μg/kgを1回投与し,その後ジエチルカルバマジン6mg/kgを1回投与する.
第二選択として,Prednisone 60mg/日で開始し,その後ごく少量の
ジエチルカルバマジン
から忍容性に応じて増量する専門家もいる.
ロア糸状虫症の血中ミクロフィラリア濃度>20,000/mLの場合は,リンパ管フィラリア感染の治療にDOXYを単独で使用する.
第二選択
DECが入手不可/禁忌の場合は,DOXY(200mg/日・4~6週)を使用できる.
ジエチルカルバマジン
6mg/kg1回+
アルベンダゾール
400mg1回+
DOXY
200mg/日経口・6週
流行地での集団感染に対して(オンコセルカ症やロア糸状虫症がない地域)は,
イベルメクチン
+
ジエチルカルバマジン
+
アルベンダゾール
(1回)の3剤併用処方,または
ジエチルカルバマジン
+
アルベンダゾール
または
アルベンダゾール
+
イベルメクチン
(年1回投与で3年)による大量の薬剤投与を行う(
N Engl J Med 379: 1801, 2018
).
体重<15kgの小児でのイベルメクチンの安全性を,ほとんどの国の専門機関は認めていない.
WHOは,身長90cm以上の小児(体重約15kgまたは年齢約2歳と同等)のイベルメクチンによる治療を認めている.
システマティックレビュー(対象1,000例)は<15kgでの安全性を強く示唆している(
PLoS Negl Trop Dis 15: e0009144, 2021
).
コメント
抗寄生虫薬治療に加えて,臨床的にリンパ浮腫治療の適応がある場合には,資格のある専門家に紹介する.
DOXYの6週間投与は,活動性の寄生虫感染症状の有無にかかわらず軽度/中等度のリンパ浮腫も改善させる.
Clin Infect Dis 55: 621, 2012
イベルメクチンはミクロフィラリアを殺す作用はあるが成虫には無効.成虫はリンパ浮腫および睾丸瘤の原因となる.
DOXYは成虫の胎形成に対して効果があり,最終的に成虫を死滅させる.
オンコセルカ症が同時流行しているアフリカの地域では,ジエチルカルバマジンはオンコセルカ症合併例で不可逆的な視覚障害を起こすことがあるため禁忌である.
ジエチルカルバマジンはCDCの薬剤サービスから入手可能.CDCが提供するのは1患者につき6mg/kg1回投与分のみ.
生殖器症状に対する手術の有効性については議論がある(
World J Surg 39: 2885, 2015
).
Moxidectinは半減期が長く,進行したオンコセルカ症について,DEC,アルベンダゾールおよび/またはイベルメクチンとの併用治療が承認されている:
PLoS Negl Trop Dis 17: e0011633, 2023
.
Podoconiosisという風土病はフィラリア症とは別の象皮病である:火山性赤色粘土の中の無機物が引き起こす線維症によりリンパ管が閉塞する.地理的分布はフィラリア症による象皮病と同一.
N Engl J Med 366: 1169, 2012
;
N Engl J Med 366: 1200, 2012
.
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2024/12/09